1989.09 携帯マシーン

○ 携帯ワープロかラップトップか

携帯ワープロとして、初期の携帯型OASYS、エプソンのワードバンクノー ト、SONYのプロデユース200などを使ってきたが、どれもイマイチであ る。軽量でカサばらないので携帯には良いのだが、タイプしてから変換までに タイムラグがあったりして、会議のメモをとるようなリアルタイム的使い方で はイライラさせられる。 また文字のカットアンドペーストなどもやりずらい。

そこで次のターゲットを物色していたところ、東芝からJ-3100SSが 「ダイナブック」という名称で発売され、最初の新聞広告でスペックと価格を 見たとたん、「これだっ」ということですぐ注文した。東芝に電話したところ 7月末ころには品物が出るという話だったが、我々のような個人のところは後 まわしになると見えて、8月末近くなってようやく入荷した。

手にしてみると、やー、なかなかのものである。作りは上品で大変質の良い 感じがする(私は大変なメンクイである)。後から注文したケーブル類もコネ クターまわりが大変しっかり出来ていて気に入った。

○ ワープロソフトかテキストエデイターか

他のJ-3100シリーズとソフトの互換性があるが、そろそろ「一太郎」 はやめにしてテキストエデイターを使うことにしようと思っていたので、AS P発売の「FINAL」を使ってみることにした。これは、SunやNEWS などのワークステーションからMS-DOSマシーンまで色々なシステムにイ ンプリメントされている優れたエデイターである。

これを選んだ理由は、この他にキーの設定をユーザーの好みに設定しなおす ことが簡単に出来ることである。 エデイター毎にキーのハンドリングが違うというのは、やはり効率が悪い。 普段使いなれたエデイターと同じものであれば、何も考えずに指が動いてくれ るというものである。

○ まず操作環境の設定から

ということで、FINALを使うにあたって、まず最初に行ったのは、キー をEmacsと同じにマッピングすることだった。これは簡単な作業で、FE. CNFというファイルをエデイットして自分の好みのキーに変更してやるだけ である。ただし、FINALの場合、キーに割りあてられる文字には制限があっ て、記号の類の全ては使えないので完全なEmacs互換とはならないのがちょっ と残念である。

次に行なったのは、MS-DOSマシーンを使うにあたって、必らず行なう 変更で、DIR、COPYなどのコマンドを、ls、cpなどのUNIXコマ ンドに変更することである。

簡単に行なうにはLS.BATなどというバッチファイルを作って、その中 にDIRと書いておけばよいのだが、今使っているPC-98では、これをや るとディスクを読みに行くので、タイムラグがあり、結局Cで同様の機能のも のを書いて使っている。しかし、J-3100SSは内蔵メモリーをラムデイ スクのような形で使えるので、バッチファイルでも全然問題ない。

○ 実際に使ってみて

一昨日、昨日とこれを会議に持ち込んで原稿を書いてみたが、やはり実際に 使ってみると、いくつか小さな問題点が浮かんできた。 マニュアルによるとFD装置10%使用時バッテリだけで使える時間は約2 時間半となっているが、会議は長時間にわたるので電源アダプターと延長用コー ド持参となる。ところがこのアダプターが結構大きいのである。折角本体は愛 用のアタッシュケースにおさまるのに、このでかいアダプターがあるばかりに もっと大きなカバンを持っていかざるを得ない。

初日の会議室には壁面にコンセントがあったので良かったのだが、二日目の 会議室にはこれが無い。仕方なく、バッテリーだけで使うことになったが、こ いつが何時「ハラヘッター」とピーピー騒ぎ出すか気が気ではなかった。 省電力のため一定時間キータッチが無いと液晶のバックライトを自動的に消 えるようにでき、その時間も設定できるようになっている。しかし、これが一 番短くても3分である。せめて1分の設定もあって欲いと思った。

一定時間キータッチがないと液晶は真っ暗になるが、液晶そのものが消える わけではなく、透かして見ると文字は読みとれる。そこで、そのまま入力しよ うとキーに触れるとパッとバックライトがともる。バッテリーが心細くなって くるとバックライトにもついて欲しくない。こういうのを「小さな親切余計な お世話」というのかなと思いつつ恐る恐る使ったが何とかピーピー騒ぎ出すこ となく会議は無事終了した。

○ 静かに

ビープ音も設定で消すことが出来ることになっているが、主にアプリケーショ ン上でのビープのようで、電源スイッチを切る時のピーーッピという音は静か な会議の中では、目立ちすぎる。うるさいオエライさんなどが居る所では、身 のすくむ思いでスイッチを切ることになろう。バッテリーさえ長時間もってく れれば、こんな必要は無いのだが、理想的には6時間以上バッテリー駆動だけ で行きたいところである。

ラムデイスク(東芝はこれをハードRAMと称する)が使えるので、原稿を フロッピィにセーブする以外全くフロッピィデイスクにアクセスすることはな いし、文章をRAM上にセーブすることも出来る。

長い会議では電源アダプターを接続したまま使えば良いということで、予備 のバッテリーは購入しなかったのだが、今回のように電源がそばに無い部屋で は困るのでどうしようか迷っている。以前使ったことのある初期のPC-98 LTではそのようなことを考え予備バッテリーを購入したのだが、結局使わず じまいだった経験がある。

○ テキストエデイターの方が快適

一方FINALの方は大変快調で、「一太郎」よりずっと実用的であること を実感した。何といっても使いなれたEmacs同様、カットアンドペースト が自由にスピーデイーに行なえるし、複数ファイルが扱える、またこれはハー ドの能力も関係することだが、キータッチへの追従性も申し分ない。

J-3100SSではリターンキーやバックスペースキーの位置が離れてい て小指を伸ばすのはちょっと辛いので、コントロールMやコントロールHで代 用することになるが、これは問題ではない。テキストエデイターを立ち上げた まま電源を切っても、レジューム機能で電源を入れればエデイター画面が現れ、 これは大変便利である。バックライト付きの液晶も大変読みやすい。

○ 欲をいえば

このようなことで、J-3100SSは大変気に入った機械だが、理想論を 言わせてもらえれば改良してもらいたい点はいくつかある。バッテリー駆動時 間の延長(とりあえずは、電源アダプターの小型化)、本体も広告のA4サイ ズより大きいので額面通りのA4サイズ、あ、そうそう、プリンターやRS- 232Cのコネクターが通常のものとは異なっていて専用ケーブルを必要とす るので、これを一般的なものにする(PC-98LTなどでは、この点は良かっ た)。

とりあえずは、そんな所で重大な問題点は無いような気がする。これを 買い換えることになるのは、もっとずっと軽量で低価格、ずっと記憶容量の大 きい、あるいはずっと高機能のOS搭載のマシーンが現れた時であろうか。

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