2002.06 Macworld Tokyo 2002

わーくすてーしょんのあるくらし (54)

2002-06 大橋克洋

< 2002.05 ネットワーク奮戦記ようやく終結 | 2002.07 MacOS X の旧MacOS からの進化を実感 >

電子カルテ NOA のデモのため、昨日は数年ぶりで Macworldの開 催されているビッグサイトへ足を運びました。初日は Steve Jobs のプレゼンテーションのある日です。今から10年ほど前、サンフラ ンシスコのモスコーンセンターで開催された NeXT Expo では Jobs のプレゼンを聞くため頑張って並び前から3番目で会場に入りまし たが、今ではもうそれほどの元気もありません。

駅を降りビッグサイトへ向かいながらコンピュータ仲間へ携帯で 電話すると、比較的前の方に並んでいるのですぐ来てください、と のこと。近づいてみると物すごい長蛇の列ですが、行列の脇にそっ て前へ行くことができます。携帯で連絡をとりながら歩いて行くと 「あ、大橋先生見えました」という電話の声とともに手を振ってい ます。彼が出展者用カードを余分に持っており、思いがけず一緒に 中へ入ることができました(延々と並んでいた方々、横入りしてし まってご免なさい)。

○ Macworld Tokyo 2002

Jobs のプレゼンは日本で1度、サンフランシスコで2度聞く機会が ありました。いつもと同様、凄い人数を収めたマンモス会場で照明 はぐっと落とされ、スクリーンのアップル・マークだけが浮き上が っていました。

待つこと暫し、やがてあの Steve の「ハイ!」というやや甲高い 特徴的な声とともに、長そでのハイネックにジーンズ姿がスポット ライトに浮かび上がりました。さすがの彼も年齢の変化は覆いよう もありません。そろそろ頭も薄めになりつつあり、腹もやや出てき たことでもあり、ジーンズはよいとしてシャツはもう少し格好良い ものにすればなあ、と余計なことを思ったものでした〔そういう私 も、決して他人のことを言えるわけではありませんが)。

○ Mac の Bluetooth への対応

Jobs からの発表で、会場から大きな拍手が起こりました。これは 無線を使ってコンピュータと周辺機器とを結ぶ規格です。周辺機器 は AirMac などの無線 LAN では重すぎるので、Bluetooth はもっと 軽く使えるのが特徴という説明でした。

今回は Bluetooth 対応の imode 携帯電話と SONY の CLIE と M ac とを接続するデモでした。これには前から期待していたところで すが、Apple 社がこんなに早く対応するとは思っていませんでした 。Bluetooth アダプターはチューンガムの箱より小さいもので、US B ポートに差せば使えるということです。小さいのでうっかりする と紛失しそうで心配です。

実際にコネクトされるまでちょっと待たされるようですが、我慢 できないほどはなさそうです。今後これに対応した機器がでてくる と、とても便利な世界になりそうです。医療現場には Bluetooth を使う場面がいろいろありそうですね。

○ シネマデイスプレイHD

二つ目は最上位液晶デイスプレイ、シネマデイスプレイHD(High Definition)です。23インチのデイスプレイで、解像度は 1920 x 1 200 pixelsということです。「どうだスゲーだろ、Bluetooth とと もに今日発売だぜー」と、Jobs は得意満面でした。 お値段の方もさぞ良さそうなと思っていると、案の定449,800円と グレートなものでした。誕生当時のシネマデイスプレイが同様な価 格だったと思いますから、やむを得ないのでしょう。

ちなみに Bluetooth のアダプターの方は3000円程度のもので、手 軽にお試し戴けそうです。早速 imode をBluetooth 対応のものに 機種交換しなくちゃと思ったものでした。

○ そのほか印象に残ったものとしては

好調に売れている iMac だが2万円ほど価格を上げなければならな い、理由は液晶などの値上がりで Apple 社だけの話ではない。これ まで注文したものについては従来通り据え置きで、本日分からの値 上がりということです。これがいつまで続くかはわからないが、と Jobs は続けていました。

2万円の値上がりであっても、価格が下がるまでじっと待つ人も少 なくないでしょうから、しばらくは iMac の爆発的な人気に水をさ すことになるかも知れません(その後新聞を読むと、富士通その他の メーカーもパソコンの値上げを発表していました)。 Jobs のプレゼンを終えて、Macworld 会場にはかなり人が入って いましたが、予想ほどすごい混雑ではありませんでした。むしろ最 終日の土曜あたりの方が混むのかも。

会場には PowerMac や PowerBook のほかに、あのユニークな姿の new iMac がふんだんに投入され、自由に操作してみたり、セミナ ーに使われたりしていました。私も初めて iMac の首を動かしてみ るチャンスにありつけました。指一本で軽く動くのですが、意外と しっかりとした信頼感のあるものでした。 いろいろなソフトウエアーなどが展示デモされていましたが、特 に目新しいものは目につきませんでした。むしろ懐かしいメンバー 達と「やあ、やあ」と会えたことの方が楽しかった一日でした。

○ TVの画像キャプチャー

私は「ながら族」です。書斎で電子カルテ開発中も、よく TV を つけっ放しにしています。コンパイルを仕掛けてちょっと待つ間な ど、つい TV をつけたい衝動にかられ結局そのままつけ放しになっ てしまいます(もちろん作業効率は落ちます)。私は煙草を吸いま せんが、煙草のみもこんな具合でやめられないんだろうなあ、など と思いながら。

もう大分前になりますが、書斎でTVを見るのにチューナー内蔵の NEC 製 CRTを使っていました。これが大変優れもので、通常のTV受 像機の画像より綺麗だったりしました。しかし長い間愛用している うちに駄目になってしまい、その後チューナー内蔵のCRTは作らなく なったようで、やむなくビデオキャプチャーボックスを買ってきて 、通常の CRT に表示させています〔最近またチューナー内蔵の液晶 デイスプレイが出てきたようです)。

しかし、これは通常のTV受像機より大分画像が悪いのです。液晶 TV も大分安くはなってきましたが、まだ画像の質がちょっとねと いうところです。そのキャプチャーボックスもそろそろ寿命が近づ いたのか、時々シャックリのように画面が途切れるようになってき ました。

○ CaptyTV

そんなところへ、Apple 社の Web で CaptyTV というキャプチャ ーボックスを iMac に接続している例が紹介されていました。早速 Web で探し注文してみました。以前求めたボックスは結構な値段し た覚えがありますが、CaptyTV は3万円程度です。

画質は今まで使っていたキャプチャーボックスと比較し格段に良 いということはなさそうですし、現在試している PowerBookG4 のパ フォーマンスをしてもちょっと荷が重いことがあるようで、画面の 動きなどイマイチのことがあります。

しかし、いろいろ便利なところもあります。これは USB 接続です のでノートブックへ出力できるのです。次に HD へ QuickTime デー タとして録画できます。当然のことですが、やたらと録画すると H D があっという間に溢れてしまうので用心は必要ですね。

次にはTVチューナー内蔵のノートブックがあると嬉しいなという のがつきることのない欲望ですが、すでに Windows マシーンではそ のようなものがありますね。いずれノートブック上で通常の TV番 組が DVD 程度の画質で見られるようになると本当に嬉しいです。

○ Carbon は文字が汚いのでイヤだ

今まで e-mail は MacOS X 標準の Mail というアプリケーション で読み書きしていたのですが、ここ一ヶ月ほど ARENA に替えてみま した。ARENA は MacOS X で動くようになりましたが、Classic 環境 のアプリケーションを MacOS X へ移植したいわゆるCarbon と言わ れるものです。 今まで Carbon のアプリケーションはちょっと使ってみるという 程度だったので気にならなかったのですが、メールのように普段使 うようになってみると MacOS X ネイテイブのアプリケーションすな わち Cocoa アプリに比べ、フォントがとても汚く読みづらいことが 歴然としてきました。

とにかく沢山のメールを読みこなすうちに、目がしょぼしょぼし てきてとても疲れるのです。普段使っているそれ以外のアプリは電 子カルテNOAを含め、すべて Cocoa アプリですので、そっちに移る と美しく読みやすいフォントでほっとします。

ARENA ではフォントを選べますので、選択したフォント自体は同 じなのですが、表示の段階でスムージングがかかるかかからないか という表示上の技術的な差と思います。 まだ Classic にしがみついているベンダーやユーザは多いと思い ますが、今年から MacOS X が標準搭載 OS になるにしたがって MacOS X の進んだ技術がようやく一般にも理解され MacOS X ネイテ イブのアプリが増えることを期待しています。

○ Cocoa 開発環境人口増加への期待と不安

一年ほど前でしたか、必要があって Cocoa で開発できる会社をア ップル社に問い合わせたことがあります。アップル社から教えても らった開発者達のほとんどが NeXT 時代から私のよく知っている顔 見知りだったりして、この世界の狭さを実感したものです。しかし今 年を境にどんどん新しい開発者が Cocoa の世界に参入してくるでし ょう。Carbon と Cocoa のアプリケーションを比較してみれば、 明らかに後者の方が美しくパフォーマンスも良いものが多いはず ですから。

しかし、もっと大きな差のあるところは、先に述べたように開発 環境です。後者でソフトウエアを作った方がずっと効率が良く楽だ からです。これに気がついた開発者が増え、それが水面に投じた波 紋のように広がってゆくことになるのでしょう。

私の電子カルテは MacOS X が生まれる前から、その祖先となる NEXTSTEP, OPENSTEP で育ってきました。この素晴らしい世界に新し い人々がどんどん参入してくるのを喜ぶと同時に、インターネット の世界が一般化するにしたがって汚れてきたように、Cocoa の世界 も俗にまみれてくるであろうことに、一方では期待と不安の混ざっ た複雑な心境ではあります、、、

< 2002.05 ネットワーク奮戦記ようやく終結 | 2002.07 MacOS X の旧MacOS からの進化を実感 >