1999.04 プロバイダー申し込みからインターネット接続まで

わーくすてーしょんのあるくらし (16)

1999-04 大橋克洋

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私のところはダイアルアップではなく、最初からプロバイダーに 専用線をつないでインターネットを使ってきました。モデムを電話 線に繋ぎダイアルアップでの IP 接続をやったことがありません (WWW が普及する前、すなわちプロバイダーが日本で認可される前 までは、UUCP という方法でモデムと電話回線を使ってインター ネットの e-mail などを利用していましたが)。

先日、ある医師会理事の方から理事室に置くノートブック型パソ コンで Web や e-mail を使いたいので設定して欲しいとの依頼が ありました。私もダイアルアップでの IP 接続設定をやってみた かったところでしたので、二つ返事でお引き受けしました。 理事室に来てセットして欲しいとの依頼だったのですが、こうい うものは簡単に行く場合は良くても、一度ひっかかると結構時間を 食うものなので、宅急便でノート・パソコンを送ってもらいました。 手元で設定するのであれば時間を気にせず、落ち着いてできま す。結果から言うとこれは正解で、すべての設定には結構時間を食 うことになりました。

今回はその辺りのことについてレポートしてみたいと思います。 これから自分でインターネットにつなげたいという方には参考にな るでしょうが、興味のない方には退屈な内容かも知れません。そう だったら、ごめんなさい。

○ プロバイダーへオンライン・サインアップ

早速、宅急便でノートパソコンが送られてきました。昨夏に私が 買ったシャープのメビウスは、SONY の VAIO 同様薄型ですが、送 られてきたのはその前の世代のどっしりと重いメビウスです。 接続先のプロバイダーは IIJ を選びました。IIJ は日本でのイ ンターネットの草分け JUNET で活躍していたパワーユーザ逹が中 心になって設立した会社で、技術的にも信頼のおける会社だからで す。

Web で IIJ のページへ行ってみると、幾つかのサービス品目が あります。個人で IP 接続をして Web や e-mail を利用するには IIJ4U というサービスが良いようです(4U は for you にかけた ネーミングで、昔から UNIX ユーザ逹が使ってきた略し方です)、 これを選ぶことにしました。 申し込みは Web による online sign up だけのようです(サポー トに手間をかけないため、on lineで申し込める位の技術を持った ユーザに絞るということでしょうか)。

まずパソコン側に IIJ4U にゲストとして接続できるような設定 をします。Windows の「ダイアルアップネットワーク」というとこ ろから新規のダイアルアップ用モジュールを作り、ダイアル先の電 話番号などを設定します。設定が済むと、内蔵モデムから IIJ4U をダイアルアップできるようになります。電話のモジュラー・ ジャックをノートパソコンのモデムに接続し、作ったモジュールを 起動してみると、プツンという音に続いて、ピポピポパ、、、とダ イアルアップが始まります。よしよし。

次に Web browser の設定です。マシーンは Windows ですので、 ブラウザーは当然 InternetExproler(以後 IE と略)です。IE が接 続にダイアルアップを使用し IIJ4U のネームサーバを見に行くよ う設定をしておく必要があります。 これができたら、先ほど作ったダイアルアップ用モジュールでダ イアルアップ、sign up 専用の guest という名前 guest というパ スワードで IIJ4U に接続します。Web browser を立ち上げて、 URLの入力欄へ http://signup.iij4u.orjp と入力して、IIJ4U の 登録用ホームページを開きます(当然ながら、この guest のアカウ ントでは IIJ4U 以外のページへは行けません)。

サインアップのページが開いたら、指示された通り約款などに承 認すると、申し込み用フォームが開きます。ここに所定事項を入力 し、「次へ」のボタンを押すと記載洩れやクレジット・カード番号 などに問題がなければユーザとして登録され、正式な login名やパ スワードが表示されます。すべての情報をすぐにメモできるよう、 用意しておきましょう(表示内容が消えてしまうと、正式パスワー ドなどがわからなくなりますので、事前に必ずメモを用意しておく こと)。

登録されると直ちに、正式に IIJ4U を利用できるようになるの は嬉しいことです。正式 login 名などをセットした IIJ4U 用のダ イアルアップ・モジュールを作成して、以後はこれを使うようにな ります。 2日後には宅急便で IIJ4U 利用マニュアルと、登録情報を書いた 書類が届きます。さすが IIJ のサービスはなかなかスピーデイー です。

○ サインアップに際してのトラブル

いとも簡単によどみなく行ったように書きましたが、実はちょっ としたつまずきも幾つかありました。 まず、guest ユーザとして Web で登録用フォームにたどり着き、 所定事項を入力し「次へ」ボタンを押したのですが、その後戻って くるはずの正式パスワードなどを書いた画面が正しく出なかったの です。Web browser の「再表示」を押しても、もう駄目でした。

このあたりのコントロールはあちら側の CGI がやっているはずで、 「次へ」ボタンを押した後の画面の再表示は一度失敗すると二度と 再表示できないようになっているだろうと思われます。 IIJ4U の担当部署に e-mail を送って、ちゃんと登録されている かどうか確認してもらったところ、登録されていないということで した。で、再度やりなおし今度はうまくいきました。

フォームの画面でも、何度も再表示を繰り返さないと肝心の入力 欄が表示されなかったりすることもありました。初心者の場合、こ のようなことがあるとメゲてしまうところです。 一切の手続きが無事終了した後、何度か試してみましたが、時々 同様の「表示不良」の現象が起こるようです。私の新しいメビウス では起こらないので、おそらくメビウスに載っていた古い IE のバ グではないかと思います。

画面の申し込み用フォームには、料金引き落としのためのクレ ジット・カード番号を入れなければなりません(IIJ4U はクレジッ ト・カードでの決済しか受けつけません)。自分のものを申し込む 場合は良いのですが、今回は代理で申し込むのでちょっと困りまし た。依頼された先生へその旨を伝えると、クレジット・カード番号 が FAX で送られてきました。信頼され過ぎても、ちょっと当惑し てしまうところです。 とはいえ、オンラインで申し込みできるのはとても便利です。

○ E-mail の設定

メビウスには Mail ソフトが2種類載っていましたが、Internet mail の方を使うことにしました。私は Windows には詳しくない 方なのですが、このメールソフトは見たところ outLook の前身で しょうか、使い勝手が良く似ているようです。 設定ですが、まず「メール」メニューの「オプション」を選択し ます。次に「サーバ」ページで Mail server の設定ができます。

まず名前を Katsuhiro OHASHI のように設定します(これはMail のヘッダーにつけられる実名ですが漢字は化けるのでアルファベッ トで入れます)。電子メールアドレスを ohashi@pp.iij4u.or. jp、POP3 サーバ名を pp.iij4u.or.jp、SMTP サーバ名も pp. iij4u.or.jp、電子メールアカウントを ohashi、パスワードとして IIJ4U からもらった電子メール用パスワードを入れます(以上の e-mail address は例です。実際には使えません)。 以上で、e-mail を IIJ4U の POP server を介してやりとり できるようになります。

○ FAX の設定

その他 FAX 発信のセットもしておきました。お預かりした メビウスには「受信トレイ」というアイコンがあり、これを 起動すると、電子メールのソフトが立ち上がります。電子メール 用に使うには Internet Mail の方が使い勝手がよいようですが、 こちらには FAX 送信機能があるのが便利です。なぜ Internet Mail にはついていないんでしょう。

これで、Web, e-mail, FAX がセットされました。これだけセッ トしてあれば、まず通信端末としては便利に使えると思います。

○ セットアップを終えて

これらのセットアップに、結局日曜を丸一日つぶしてしまいまし た。時間がかかった原因は以下のような理由と思います。

    1. Windows での操作がとても煩雑で、余程のことがないかぎりマ ニュアルを読まない私としては、それを探険しながら設定を 行ったこと。

    2. 後日同じようなリクエストが来た時にそなえて、今回のセット アップ手順を書き残し簡単な設定マニュアルを作りながらやっ たこと。

この原稿を書くにも、その設定マニュアルを見ながら書いたので すが、まだ余り整理されているとは言えず、わかりやすいものでは ないことを再確認しました。

私の整理が不十分なこともありますが、Windows のアプリケー ション自体が大変脈略なく作られていることにも起因していると思 います。つまり、人間の自然な思考に添った部品展開ではないのです。 こちらと思えばまたあちら、と気まぐれなところに色々な機能 が散在しています。すべてのところを開け探険してみなければなら ない場面も何度かありました。

前にも書いたように、ソフトウエアというものは、ユーザの自然 な思考に添って展開してゆくものでなければならないと思います。 なぜもっと機能ごとに整理した洗練されたデザインにしないので しょうか、マイクロソフトは世界一人材も資金も豊富でしょうに。

○ さて現場で

セットアップを終えたマシーンを持参して医師会理事室へ行きま した。医師会の電話機はいわゆるブジネスホンというタイプの交換 機を通るものです。外線に発信するにはゼロを最初に送って、交換 機に「これから外線に発信するよ」という信号を送ってやらねばな りません。ゼロを送ると、交換機から「外線に繋いだよ」というこ とで、「ツー」という送信OKの音が返ってくるはずです。

私が自宅でテストした時は直結の電話回線でしたので、交換機を 介した設定ではありませんでした。 そこで「ゼロ発信」の設定をして、色々とやってみたのですが、 どうしても外線に繋がってくれません。手動でダイアルしてやる と、うまく繋がるのですが。色々とやってみましたが、とうとうこ の日はうまく行かず断念しました。

後日改めて理事室へ伺いました。今度は原因の切り分けをする ため、私のメビウス持参です。まず私のマシーンを繋いで見ると ゼロ発信で苦もなく接続できました。次に問題の旧メビウスで やって見ましたが、やはり駄目です。交換機を通さない直結の 回線でテストしてみましたが、それでも駄目です。私の自宅では このマシーンで問題なく接続できたのに、モデムと電話回線の 相性が悪いのか、それともその後モデムが不調になったのか。

○ コンピュータとのつき合いの分かれ目

このようなネットワークの接続に限らず、コンピュータというの はスムースに行く時は、何の苦労もないのですが、一旦こじれると 大変てこずることになります。これが初心者を阻む大きな原因のひ とつですね。

コンピュータに慣れた人間(というか途中でメゲずに生き残った 人間とも言えるかも知れません)は、根性でこれを追求して行き、 やがて成功の快感を味わうことになります。その快感をを味わいた いばかりに、ますますハマってゆくことになるのですが。

コンピュータを使いこなすには、第一に「何をやりたい」という 目的があること。第二に「いつも手元で電源が入っていて使える状 態にあること」、そして第三に「最初は靴下掻痒の感があっても、 一週間はじっと我慢して使うこと」。この三つがポイントではない かと思っています。

「これからはコンピュータを使えなければいけない」と思いつ つ、ためらっている方、是非トライしてみてください。うまく行っ た後の征服感はなかなかクセになるものですよ。 今回は、ハードウエアの不良という判断で修理を依頼してもらう ことになりました。また新しい展開などあればレポートすることに しましょう。

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