2011.02 使わないと錆びる

わーくすてーしょんのあるくらし ( 216)

2011-2 大橋 克洋

全国で例年にない降雪が伝えられる今冬

近年の東京では なかなか雪が見られませんが

14日夜半ミゾレ混じりの雪が2時間ほどの間に降り積もりました

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◯ 歳をとっても老化しない方法

厳密にはそんな方法はありません。しかし実生活上その様なポイントがある事に気づきました。すでに書いてきたことではありますが、再度まとめておきたいと思います。 歳をとったので体力が低下した、記憶力が落ちた、などを経験する様になり「やれやれ、歳だから仕方ないか」と。 しかし、まだまだ諦めることはありません、劇的な?改善を体験しました。 自分の得た良いことは他人様にもお裾分けするのが、インターネットのお作法 (それが倍返しで返ってくることもありますしね)。

一言で云うと「老化は使わないから起こる」。つまり「使わないと錆びる」のです、身も心も。若い時は ちょっとやそっとサボっても錆びることはありません。しかし中年以後はすぐ錆びます。ビンテージの自動車でも道具でも常に手入れし使っていれば、驚くほど古いものでも歴史を感じさせる鈍い光を放ちながらしっかり機能します。 これは自己流の中国武術をやって気づいたこと。「もう歳だから無理」と思っていたのに、 身体が自由自在に動くようになりました。「やれば出来るじゃん」、これが喜びの始まりでした。記憶力などの低下も、トレーニングで回復してきます。

Steve Jobs のプレゼンが素晴らしいのは有名ですが、事前に徹底的な練習をするのだそうです。「天才は努力から」の見本。プレゼンだけ作っておいて、ぶっつけ本番をやることもある私ですが、今月は幾つかプレゼンの機会があり、事前練習をすることにしました。自分のプレゼンを iPhone で録画してみると、単調で爺臭いなあという印象。「なるほどね」これも使わないから。自分の録画をみながら少し練習をすることにしました。表情や身振り手振りを入れると大分違います。若返るということはこういうことなんだなと、また納得。

もうひとつの教訓。「最初から楽をしちゃ駄目だ」「嫌でも面倒でも自分に努力を強いることで素晴らしい達成感や幸福感を得られる」のだということ。歩術もそんな喜びで続いています。

◯ 今月の歩術

直接は歩術の話ではありませんが、前述の健康法に関連した話。 NHK 「プロフェッショナル仕事の流儀」で、デザイナーの石岡瑛子さんの仕事ぶりを見せてもらいました。 北京オリンピック開会式を彩った中国のダンサー達の衣装も手がけたそうですが、 現在ニューヨークで舞台や映画の衣装を手がけておられるそうです。

私好みのデザインではないのですが、その彩りや形態には確かに面白いものがあると思いました。 この方は71歳、私より2つほど上です。 私も医局に入る前インターンの頃、夜学でデザイン学校に通っていたことがあります。 「ああ、あの頃、この人も私よりちょっと上で同じことを目指していたんだなあ、」と、 そういう意味で感慨深いものがありました。

で、ここに書きたいのはそういうことではありません。 舞台の人たちと徹夜に近い形で精力的に舞台衣装を創り上げていくのですが、 余りのハードさに西欧人が音を上げているのに、石岡さんは動ずることもありません。 「凄いなあ、」という感じですが、最後のインタビューで種明かしをされました。 起床時に「仕事に行きたくないなあ」と思うことは、ままあるそうです。 しかし日課のストレッチを行うと「やったるぜー」という気持ちに溢れてきて、 ネガティブな気持ちは吹っ飛んでいるとか。

わかる、わかる。私の朝の日課、中国武術の錬功も、まったく同じ効果があります。 最近「うつ傾向」の人が増えていますが、いかに世の中、運動をしない生活になってしまっているか、 ということですね、、

◯ 冬の早朝

1月30日早朝の外気温は2度、1月中ばとともに今年最低でした。もうだいぶ前から夜間のプログラミングは能率が上がらなくなったので、早寝早起きに生活パターンを変え朝飯前のプログラムにしています。5時起床を目標に目覚ましをかけていますが、実際の起床時刻はその時の気分次第ではあります。夜9時には寝てしまうことにして居ますが、9時過ぎに電話がかかって来て、電話に出た家族が「えっ、大橋先生もう寝ちゃったの」と言われることもしばしば。

学生の頃は授業前に馬術部の朝練、5時起きして参宮橋の東京乗馬クラブへ行き、朝6時から8時まで練習して9時の授業に間に合うよう新橋へ駆けつけていました。この頃、部員と言い交わしていたのが「夏はいいけど、冬の5時起きは地獄だぜ」。ところが最近はと云えば、寝室に冷暖房はかけない主義、窓にレースのカーテンだけですが、冬の5時起きもさほど抵抗ありません。目覚ましで起こされ布団の中でちょっとウジウジ、iPhone で天候を確かめ、毛布や掛け布団を畳みながら起きだします。軽い体操をして身体を目覚めさせ、トイレ、朝風呂、そして私の役割分担である洗濯機を回しながら中国武術、朝の練功というコース。これで全身の錆が落ち気力も充実した1日が始まります。今の季節、風呂に入る頃は暗いのに、上がる頃には朝日がさして明るくなっているのも気持ち良い。

自宅から望遠レンズでとらえた富士山

冬の朝、冷たい空気の中で起床するのがあんなに辛かったのに、最近は苦でもなくなったのは、やはり歳のせいなんですかね。不思議。iPhone 効果も ちょっぴりあるかも、、

◯ 今月の iPhone iPad

iPhone や iPad の面白そうなアプリを見つけては download してみていますが、最近はアタリがありませんね。

まず 7notes これはあの「一太郎」開発者が iPad 向けに出したテジタルノート。手書きからキャラクターへの変換もしてくれますし、かな漢字変換も流石。ただ現状では 7note の中だけで完結しているようで、折角の FEP が他のアプリでは使えないようです。現状では「なるほどねー」で終わってしまうシロモノ。

次が AirPrintActivator これは Mac 側にインストールしておくと、その Mac に接続されたプリンターを iPad のプリンターとして使えるもの。早速インストールしたのですが、何度設定をやりなおしても iPad 側からプリンターが見えません。どうも私の使っている年代物の LBP が対応していないためかと思われます。最近 iPad に印刷機能がついたのに、対応したプリンターが極めて限られており使い物にならないところへ AirPrintActivator を見つけ喜んだのですが、、うーむ、残念。

そして Ruminate これはアイデアを書いた沢山のメモを次々と線で接続してゆくもの。マインド・マップが有名で、その類の MindNode というのを時々使ってきました。機能としては Ruminate も同じようなものですが、メモがメモらしいデザインで、これはこれでアイデアを練る時に有用かなと。

原稿の執筆を出先で続けるため、いろいろ試してみました。Evernote の象印のついた FastEver XL という iPad アプリを見つけました。エディターも使いやすそうで「これは便利かな」と思ったのですが、書いたテキストを Evernote へ送りつけるだけ。Evernote に置いたテキストの編集はできないようです。単なるメモ・アプリですね。 やはり現状では「原稿を Evernote の中へテキストとして置いておき Evernote アプリを開いて編集する」方法が一番簡便のようです。

今年から Mac 用 AppStore も開店しましたが、まだ登録アプリが少ないようです。 建築の平面図を描くのに今迄 OmniGraffe を使ってきましたが、EazyDraw といおうのを見つけ download してみました。グリッドなど使いやすくできていますが、平面図にドアや窓などを描くのがうまく行きません。 同様のもので Cenon というのを見つけました。EazyDraw と似ていますが、ドアなどは描きやすいようです。

◯ やはりセットかあ

NHKの連続テレビ小説「てっぱん」の舞台、下宿屋「田中荘」の間取りが気に入って EazyDraw で書き起こしてみていますが、どうも構造がおかしい。2階の部屋がある部分、どうやってみても1階では中庭になるはず。何日分かの映像のスナップショットを撮って検証してみました。外見からは本当の2階建ての家のように見えるのですが「やはり撮影用セットなんだな」と、、

中庭を中心として和室や玄関、食堂の巡らされた1階の間取りは私好みの設計。 「セットだからどうなの」ということですが、ここまで良く出来ていると「やはり本当の家であって欲しいなあ」などとつい思ってしまいます。

と思っていたら、鈴木君から田中荘の平面図が NHK の web site にあることを教えてもらいました。 私がドラマを見ながら描いていた平面図もほぼこれに近いですが、 細部がよくわかります。なーるほど、あそこはこうなっていたんだ。 やはり2階の一部は中庭に張り出していますね。ドラマの中での光の当たり具合では 張り出しはなさそうに見えているんですが。 外観の一部がドラマの映像とはちょっと異なる部分もあるように思えます。 他の方が読んでも何も意味のない文章でしたね、でも、私としてはとても気になる。

◯ プレゼン、新兵器に挑戦したつもりが、、

今月は、東京都医師会の医療とITシンポジウム、葛飾区医師会での依頼講演、日本医師会医療システム協議会のシンポジスト、ほか依頼原稿2本と結構やらねばならないこと山盛りで、 このコラムや電子カルテ NOA の開発も滞っていました。

先にも書いたように、 今回は自分のプレゼンを iPhone の動画に撮りながら何度も練習を重ねました。 小さなコントローラを手にプレゼンする Jobs のスタイルをやってみようと、 ITシンポジウムでは Mac 付属の小さな赤外線コントローラを使ってみました。これ、ちょっと駄目ですね。 赤外線なので途中に遮蔽物があるとコントロールできないのです。 講演台の縁をぐるりと取り囲む衝立状の立ち上がりが邪魔してしまいます。

次に iPhone アプリ Remote を試してみました。こいつだと講演者用メモを見ながらプレゼンをコントロールできますが、コンピュータと iPhone が同じ WiFi に接続されている必要があり使える場所が限定されます(メモを見ながらのプレゼンって最低ですしね)。

そこで、日本医師会の講演には Magic mouse を使うことにしました。 こいつは bluetooth なので、途中に遮蔽物があっても大丈夫。 何度も予行演習を重ね勇気凛々、日医会館での講演に望みました。 あちゃー、まず爪突いたのは事前に液晶プロジェクターとの接続状態を確かめてあったのに、 画面がプロジェクターにうまく出ません。講演時間が限られており、ちょっと焦りました。 ようやくプレゼンがスクリーンに現れたところで講演開始。あれ? Magic mouse でのページめくりが変? Jobs 流に舞台を歩き回りながら喋ろうと思っていたのですが、 平凡に講演台のそばでノートブック矢印キーでページめくり、情けなし、、

翌日ぼんやり考えていて原因に気が付きました 「そうか Magic mouse を逆さに握っていたんだ」。普通は Magic mouse 表面のリンゴマークや、 裏の光源位置ですぐわかるのですが、触覚だけでは上下対象でわからないのです。 そうだよね、スライドのページが逆方向にめくられていた。 何でそこで気が付かなかったんだ、バカめ。やはり、ボケかなあ。 折角、誰もやらないクールなプレゼンに挑戦したのに、クッソー、、 この歳で場慣れし日医の舞台でも上がることはないと思っていたんですが、 そういう意味ではやはり上がってたんですね。

◯ 電子カルテ NOA これからやりたいこと

そろそろ、依頼されたプレゼンや原稿も片付きつつあり、NOA の進化について考えを巡らしています。 このコラムを繰ってみると、以前実験的にやっていた WebObjects による電子カルテは別として、PHP と javascript を得て本格的に Web 版電子カルテの開発を始めてから丁度4年目になります。そして、その電子カルテNOAを思い切ってオープン・ソースで公開し無償でダウンロードできるようにしてから、1年半ほどが経過しました。 まだ数は少ないものの熱烈ユーザの声・リクエストに支えられ、お陰さまで進化の巾も広がってきたように思います。今までは自分の診療スタイル枠内に留まらざるを得なかったのですが、 もっと巾広い世界を見ることができるようになりました。

これからやりたいこととして「限りない NOA の進化」は勿論なのですが、 「やりたいこと」と云うより「やらねばなぬこと」のあるのに気がつきました。 「インストールをもっと簡単に」です。オープン・ソース化の当初は比較的シンプルだったと思うのですが、 バージョンアップを重ね、そして web site を自前のものから Google site に替えることに伴い、 初めての人にとって「で、どうやってインストールすれば良いの?」という状態になってしまいました。 NOA に手をつける前に躊躇してしまう方も多いのでは、、

「(今では禁句の)バカチョンでインストールできるようにすべき」と思い当たりました。 これは結構エネルギーと時間を要する作業になるかも知れません。 構想を温め5月のゴールデンウイーク・マターかなと思います。 MAMP を含め一式をバサっとダウンロードして解凍すれば とりあえず動くのですが、 日々改良を重ねていきますので 日常作業として「どのように手間なくパッケージにまとめられるか」ということがひとつ。

もうひとつ「いやいや、いちいち全部入れ替えるのではなく 差分だけインストールしたい」 という声もあるはず。「一切合切パッケージ版」と「差分版」の両方を、 判りやすい形で提供する必要があるのだろうと。少し時間をかけて考えてみたいと思います。

◯ 何をもって社会に貢献できるか

子育ても終わった世代として、これからは幾ばくかでも社会の役に立ちたいと思うのですが、 さて自分としては何をもって貢献できるかと考えてみると、胸を張って「これなら多大な貢献ができるはず」と思えるものはありません。現在の都医理事なども自分としてはボランティアの意味が大きいと思っているのですが、よそからはそうは見えないでしょうし、、

他の人にできない私ならではのことと考えると、ライフワークとして世に先駆けて開発を続けてきた 「電子カルテのノウハウを少しでも世の中の医療の発展のために役立てて頂く」という 「電子カルテ NOA プロジェクト」あたりが現状では一番貢献できるのかもね、と考えます。

子供達とともに工作など面白いことをするとか、中高年の人達と健康のためのエクササイズを行うなども面白そうかな、と思います。そのようなチャンスがあればね、、

◯ 区立平塚小学校解体工事

今月上旬は全国的な大雪で東京も今冬一番の寒さを記録しましたが、 24,25日には早くも春一番が吹き4月中旬以後の陽気、オーバーなしの外出となりました。 兎に角、最近の天候は不順です。

左上にあった区立幼稚園の建物が完全に取り壊され、幼稚園は手前の大きなプレハブ仮園舎に移りました。 以前より広々として気持よさそう。園舎左上に斜めに基礎が打たれています。 何ができるのでしょうか。これも恒久的な建物とは思えません。 しかし、行政のやる工事とあって、その進行はとてものんびりに見えます。

何度でも書きますが、これだけまとまった土地があるなら、これからは絶対に木を植えるべきと思うんですがねえ、 これだけの面積でも東京砂漠にとっては貴重なオアシス「必要な無駄」と思います。

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夜の明けつつある浜名湖

もうじき右の方角に朝日が昇ってきます

これは日々の生活で感じたことを書きとどめる私の備忘録です