2000.02 はたらくマシーン・みるだけのマシーン

わーくすてーしょんのあるくらし (26)

2000-02 大橋克洋

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21年のコンピュータ遍歴の中で、数多くのマシーンを使ってき ました。ふり返ってみると、その中には

    1. 先進的なのにしばらくは使えなかったマシーン

    2. 最初から現場投入し十分元をとったマシーン

    3. デビューを飾っただけの、はかないマシーン

など色々ありました。

Sun-3 workstation や初代 Mac、初代 NeXTCube などが典型的な (1)のタイプです。いずれも現場で使えなかったのは、発表されて しばらくの間、日本語が使えなかったからです。Sun-3 や NeXTCube はそれでも10年も長生きし、前者は最初の電子カルテ稼働マシ ーンとして、後者は晩年まで受付の端末やプリントサーバ、ファッ クスサーバとして活躍しましたが、初代 Mac はとうとうお絵描きの お遊びマシーンとして一生を終えました。

PET2001、Apple II、PC-9801、UX-300(はじめての日本語を表示で きる UNIX マシーン)、NeXTstation、SparcStation、DOS/V互換機( OPENSTEPで稼働)やPowerMacG3 などは、(2)のタイプで購入してす ぐに現場でバリバリ働いてきました。 (3)のタイプに関しては余りにも数多いので、ちょっと御紹介でき ません :-)

このように多くの機種を振り返ってみると、「購入時点ですでに 世の中で稼働実績のあるものが買い」ということが言えます。これ は最初からわかっているのですが、初代 Mac や NeXT などの場合、 今までになかった画期的な数々の機能、キュートなデザインを見る と買わずにはおられませんでした。結果がわかっていても必ず買っ たでしょう。

初代 Mac や NeXTCube 位先進的な機能満載のものであれば、自己 満足マシーンの価値は十分あったと思っています。しかし、これだ けの魅力を持つマシーンはなかなかあるものではありません。Steve Jobs の魔力というものでしょう。

○ またまた「型落ち機種」に手をだす

先月号で「 新型がでたあとの型落ち機種は"買い"」という ことを書きました。その後、またまたやむを得ない事情から 中古 Mac を手に入れるハメになってしまいました。 今年の医療情報連合大会には、デモセッションのエントリーを していたのですが、デモで WINE を動かすには先月号で書いた ポリタンク・タイプの PowerMac G3 とデイスプレイを持って いかねばなりません。

学会会場の隣のホテルがとれたので、宅急便でホテルへ送り つけておいて、帰りもホテルから宅急便で送ればよいと軽く 考えていたのですが、よく手順を考えて見るとホテルのチェック・ アウトの時間その他の兼ね合いから、自分で本体とデイスプレイを 担いで会場内を移動せざるを得ないようです。

デイスプレイは以前書いた「衝動買いの液晶デイスプレイ」が比 較的小さいのでそれを持って行くにしても、実際に持ってみると電 源が入っているせいか結構重いしかさばるのです。液晶面をぶつけ ると一発でパアになる可能性もありますし、ある程度梱包をして 慎重に移動せねばなりません。台車も持っているのですが、それも となるとさらにカサが増えます。単に自分のセッションだけしゃべ って帰るのなら良いのですが、座長をやらねばならなかったり、3 日の間会場内を移動しなければなりません。

サポートなしの一匹狼でこれらを一人で移動させたり管理する のは、余りにも辛いものがあることに気づきました。

○ 中古 PowerBook G3 は意外に品薄

今年の春手にいれた new PowerBook G3 は、いまだにMacOS X Server が走りません。かなり何日も悩んだのですが、次第に会期が 迫ってきます。ついに、中古の PowerBook G3 を探すことに決断し ました。「きっと、これを買ったとたんに X Serverがバージョンア ップして new PB G3 でも動くようになるんだろうなあ」ということ を覚悟の上で。

WINE も MacOS X Server に移行しましたので、今後何台あっても 無駄にはなりませんし、「移動する開発環境」があるのはとても嬉 しいことです(半分は言い訳けとしても :-) 考えて見ると、私と同時期に new PB を手に入れ X Server が動 かないと見るや、すぐに他の人の old PB と物々交換してしまった 高橋先生は正解だったのかも知れません。

ということで、早速新宿や秋葉原で中古 PB G3 を探し回ることに なりました。ところが old PB G3 は意外に出ていないのです。もと もと出荷された数が少ないのだろうと思いますが、中古ショップで 聞いてみると、「時々は出るが出るとすぐに売れてしまう」とのこ とでした。PowerBook 2400 はよく見かけましたが中古でも20万 以上の値段がついていました。Apple がコンパクトなノートを出さな いので、やはり人気なんですね。市場に出た数も少なくなかったの だろうと思います。VAIO 級の PowerBook が強く望まれます。こ れが出たら、日本では飛ぶように売れることは絶対間違いないのに。

2日間かけて探し回りましたが、駄目でした。しかし次女が Web で色々と調べてくれ、遂に在庫のある店を見つけてくれました。何 と先日も店まで行って店員に在庫がないと言われた秋葉原の Sofmap でしたが、どうも Web の通版と店頭とは別口なんでしょうかね。

○ Oracle のデータを OpenBase へ移動

注文して3日後に宅急便で到着。早速 MacOS X Server を インストール、これは問題ありません。つぎに WINE 用のデータベース OpenBase の一ヵ月試用版を Web で落してきました。 OpenBase はなかなかな優れものの DB で、現在使っている Oracle より値段が安いだけでなく、とてもメンテナンスしやすいの です(私は今だに Oracle をちゃんとメンテできず、ダウンしたらど うしようと思ってきました)。正式版をお金を出して買うつ もりです。

WINE のデータを Oracle から移すためにちょっとプログラムを書 きました。一患者のカルテを開き、そのデータを OpenBase へ吸い上 げるツールです。 やっているうちに、デモでは多量のカルテの中から、必要なもの を一瞬で検索できる電子カルテのおいしいところを是非見せたいと いう欲が出てきました。それには、一度にパサっと沢山のカルテを まとめて変換できるツールを作らねばなりません。何とかこれから 作るつもりですが、作業できる日は明日一日だけしかないので、ち ょっと自信はありませんが(ということで、この原稿書いているどこ ろではないのですが、今月は入稿が遅れているので、きっと編集部 ではやきもきされているだろうということで)。

○ 中古 PowerBook G3 の使い心地

new PB と並べてみても、よく見ると確かに厚みがあるなあという 位で余り大きな違いはわかりません。new PB で X Serverを動かし ていないので、本当の比較はわからないのですが、使った感じでは old PB でも快適で、今のところほとんど不満はありません。 厚みと重さは最初から覚悟の上ですし、new PB の厚みと重さも今 時の Windows マシーンと比べたら十分重厚ですので、余り優位差を 感じません。強いて言えば DVD ドライブが乗っていないこと位でし ょうか。手に入れた old PB のハードデイスクは 2GB ですが、「動 く開発環境」としてもこれだけあれば十分でしょう。

まあ、これで明後日からの学会も一安心というところですが、 Apple 社から e-mail が来て、X Server の実用例ということで、 会場に連日デモできるスペースを急拠とったので WINE のデモを して欲しいとのこと。外付 HD に WINE 一式を入れて持って行こう と思っていますので、これでも結構な荷物を背負っていくことに なりそうです。

○ コンピュータでのデモは出たとこ勝負?

コンピュータでのプレゼンテーションはとても楽です。ソフトウ エアというのは、実際の画面で動いているところを見ないとなかな か理解できません。演者としては、ギリギリまで講演内容を手直し できるというメリットもあります。

しかしここで恐いのは、会場での思わぬトラブルです。特に液晶 プロジェクターとの相性の問題が結構あります。先日も高橋先生と 一緒に山形県の医師会から呼ばれて、電子カルテのデモをしたので すが、彼が持参した old PB G3 と会場の液晶プロジェクターとの相 性が悪く、どうしても XGA の解像度で出力できません。WINE は結 構画面の中の広い面積に色々なパネルを展開したりしますので、解像 度の低い(つまり狭い画面)では、かなり情けないものがあるのです。

とにかく、教訓として言えることは「マシーンを買う場合は、買 う時点ですでに現場で動く実績を持つものを買う」ことが間違いあ りません。新製品であろうと中古であろうと。今回の old PB G3 は今後かなりの戦力になりそうです。

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