2003.08 IT 化に伴って必要なモラル

わーくすてーしょんのあるくらし (71)

2003-08 大橋克洋

< 2003.07 携帯電話をメガピクセルへ機種交換 | 2003.09 長良BOF >

最近多発する中学生による小学生殺人事件や、携帯電話による出 会系サイトを介した集団自殺や援助交際、ちょっとしたことでキレ て殺傷事件に至るなど、本当にイヤな世の中になりつつあると大き な危惧を感じます。

IT社会全般に言えることですが、このような従来存在しなかった インフラに対応する中で、それなりのモラルの育成を同時並行的に 進めることが非常に大切だとこの頃思うようになりました。

○ IT 化に伴って必要なモラルの向上

インターネットが一般社会に普及する前のインターネット黎明期 の頃、当時東京工大に在職された村井純助教授らの努力のもとに、 大学の情報工学科や情報関連企業の研究部門などが主体となって J UNET と呼ばれる日本全域ならびに海外とも接続されたネットワーク の実験運用がはじめられました。

私たち個人は JUNET に正式に参加することはできませんでした。 そこで UNIX を使いネットワークに興味を持った人間でJUICE とい うネットワークの組織を作り、村井先生にお願いして非公式に東工 大から JUNET に接続させてもらいました。まだインターネットが世 の中に解禁になる数年前のことです。

そこでは、研究開発へ向けた情報交換、開発されたソフトウエア の共同利用、利便性の追及などと同時に、必ずネットワークを利用 するための「お作法」の伝承が行われていました。「長いメールは 読まれないし、他人の資源(ハードデイスクや通信料など)を無駄 に消費するので、なるべく簡潔に」とか「他人を誹謗しそうなメー ルは、翌朝もう一度読み直してから投函しましょう」など。

すなわち当時は、それぞれの自立心、相互扶助の精神とともに「 性善説のコミュニテイー維持への努力」の認識が全員にあったので す。ところがインターネットの一般社会への普及とともに、利用者 は利便性のみを追及し、企業は利益の向上のみをめざしという自分 の利益だけに走った結果、このような良き風習は消し飛んでしまい 、「性悪説」を前提とせざるを得なくなったのは、とても不幸なこ とです。

私も今になって気付いたことですが、IT普及にあたってはインタ ーネット黎明期を築いた先人の知恵も合わせて普及をはかるよう努 力すべきだろうと思うようになりました。

今月はネタがなくて、すっごく短くて済みません _O_

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