2005.09 ネットワーク上の「医療関連サービス」

わーくすてーしょんのあるくらし (96) 

 

2005-09 大橋克洋

7月でしたか新幹線を待っている東京駅ホームで、 20代後半から30才前後と思われる女性の後ろ姿が目にとまりました。 真っ白なTシャツに黒っぽいぴったりしたジーンズ、 ルーズな肩掛けベルトのリュックを背負って立っていました。 ほどよいプロポーションということもあるのですが、 私の目が釘付けになったのはそのためだけではありません。

ご本人としては、何も意識せずただスっと立っているだけだと思うのですが、 その立ち方というか姿勢が「これはタダものではないぞ」 ということを感じさせたのです。 想像では陸上競技あたりかな、それも走るのが専門ではなく、 例えば槍投げとかハンマー投げなど、 体躯で大きな力を支えるようなスポーツをやっており、 それも超一流のスポーツウーマンではないかと思いました。

鍛え抜かれた中から、 自然に身に付いた姿勢というものなのでしょう。 本当に惚れ惚れと眺めた後ろ姿でした。 昔の真っ白な軍服姿の海軍士官の姿勢にも、 日々の激しい訓練の結果が滲み出ていたものです。 後日、「しまったなあ、ちょっと声をかけて後ろ姿の写真を 一枚撮らせてもらっても良かったかなあ」などと思ったものです。

そういえば過去にも一度、後ろ姿で強烈な印象を受けたことがあります。 TVの中に出てきた一枚の写真だったと思います。 明治時代の地味な着物姿のほっそりした女性の後ろ姿です。 これまた「おヌシ、できるな!」と思わせる立ち姿で、 現代ではまず見ることのできないものです。 厳しい生活のなかで鍛えられた女性と想像されました。

ここに現れたものは、 鍛えられた肉体だけのものではなく、 鍛えられた精神があってこその後ろ姿と思います。 「躾(しつけ)」という文字が、まさにそれを示していますね。 私も色々な意味で、後ろ姿で人を引きつけられる人間になれれば 最高だなあと思うのですが、 さて手持ち時間も多くなくなった人生で間に合うのでしょうか。

禅や武道を究めた達人は、 中年を過ぎても周囲に凄さを感じさせるが、 本当に老年に入ればまったく目立たず、 それでいてイザとなれば非凡な力を発揮すると言います。 そっちにも、なれそうもないですねえ、、、

○ Mac mini メモリー拡張で元気はつらつ

今年3月に購入した Mac mini は、 書斎のメインマシーンとして活躍してきました。 一番安い機種がどれくらい使えるものか というテストの意味もありましたが、かなり快適に使えてきました。 しかし、いかんせん現在の OS で 256MB のメモリーはちょっと荷が重いようです (最近の Mac mini はメモリーを標準で 512MB 積むようになりましたが、 私の買った頃は 256MB)。

グラフィックをガンガン使う 3D の建築設計アプリなどでは、 頻繁にメモリーのスワップアウトが起こります。 使えないことはないものの「やはりもう少し快適に使いたいな」 という気が起こってきました。 そろそろ開発用マシーン PowerMac dual のリプレースも考えていましたが、 (昨今の医療への強い圧迫もあって)財政状態も厳しいことであり、 とりあえず Mac mini のメモリー拡張をしてみようと考えました。

自分でやってできないことはなさそうですが、 PowerMac へのメモリー拡張のようにはいきません。 手数料はかかりますが、アップルの正規代理店であるクイックガレージへ メモリー拡張を依頼しました。 web で申し込むと宅配業者が取りに来てくれ、 日曜をはさんだ6日ほど後に宅配業者が代引きで届けてくれました。 これは便利ですね。 「メモリー拡張終了につき返送する」むね クイックガレージからの電話も、とても感じのよいものでした。

さて、結果やいかに、、、 おー、さすがメモリー奮発して 1GB にしただけあって、 3D アプリもグリグリとまではいきませんが、 ストレスなく動くようになりました。 ほとんどスワップアウトも起こっていないようです。 驚いたのは、丁度3年前に購入した PowerMac G4 dual (867MHz) と比べ遜色ないスピードです。恐らくMac mini は 1.25GHz へと CPU の能力が上がっているからなんでしょうね。Mac mini 恐るべしです。

ついでに、Mac mini から抜歯して戻ってきた 256 MB メモリー を PowerMac G4 dual へ追加し 768MB にしてやることもできました。

○ iTunes 対応携帯電話登場 アップルから

アップル社は米国時間7日、音楽再生機能を持ち iTunes Music Store にアクセス可能な携帯電話 Rokr(ロッカーと発音するようです)を発表しました。 これは1年ほど前から噂のあったものです。 大体想像していたデザインと内容ですね。

アップル社が関わる以上デザインにも多少期待があったのですが、 実際にはモトローラがアップルと協力の上で出したということで、 写真のように ごくありふれた形でちょっとがっかりではありますが、 液晶画面は iPod そのものです。

私のスマートフォン M1000 もモトローラですので、 質感は想像できます。 仮に日本で使えたとしても、まだこの段階では手を出す気にはなりません。 Jobs はもちろんアップル社の社員がこのデザインで満足するはずはありませんから、 次に出す時はアップル社のデザインが反映されることを、とても期待していたりします。

○ iPod nano も登場

同時に発表された iPod nano の方がちょっと魅力的です。 1000曲をポケットに入れて持ち歩ける4Gバージョンと2Gバージョンの 2種類だそうです。 従来の iPod に比べ 80% も小さいということです。 最初みた写真から想像するに私の気に入っている携帯電話 Talby にかなり似たサイズではないかと、、、思いました。

こいつに携帯電話を埋め込んでくれ日本で発売されたら、 速攻で買ってしまうんですが、、、などとも思いました (その時アップル社の web site には、まだ iPod nano は掲載されていませんでした)。

日本時間8日の8時過ぎにアクセスしてみると「ありました、ありました」。 そこの写真を見ると、下のように Talby よりずっと小さいですのでびっくり。こりゃあ iPod shuffle に近いですね。

それにしてもアップルは次から次へと「えっ」というような 意外なデザインのグッズを世に出してくれます。 本当に楽しみですね。 iPod で培われた精緻な技術やデザインが、 いずれ登場する PowerBook に影響を及ぼしてくれると とても嬉しいです。 この「シンプル」で「美しくて」「快適な操作性」を是非、、、

○ (NPO) 日本医療ネットワーク協会 発足

16日に虎ノ門パストラルで「日本医療ネットワーク協会」発足記念会が開催されました。 名称からは何を目的とした団体かわかりにくいのですが、 以下のようなことを目的として設立され、 私も発起人の一人として理事を努めることになりました。 東京都医師会の HOTプロジェクトを含め 全国には幾つかの地域医療連携システムがありますが、 共通の大きな悩みがあります。それは維持費です。

本来は受益者負担であるべきで、 患者さんや医療機関から利用料を徴収すべきですが、 患者さんから高額の利用料を頂くわけにもいきませんし、 医療もますます経済的に厳しくなっていますので、 医療機関からもそうは徴収できません。 一方でこのようなシステムはメンテナンス費用を含め、 かなりの経費が毎月出てゆくのです。

そのために消えて行ったり、事実上フリーズ状態になっているものが幾つもあります。 そこで全国の地域医療連携システムの協力関係をつくることにより、 以下のような事の実現を目的として発足しました。

東京都医師会のHOTプロジェクトで提供しているネットワーク 「ほっとライン」では、紹介状のやりとりをメインとして幾つかの機能を提供しています。 しかし、これだけでは本格的に使い込んでくれるユーザは増加しないと考えています。 何故なら、私自身これだけでは少しも魅力を感じないからです。 プロジェクト責任者からの発言として無責任と思われるかも知れませんが、 都医独自予算での立ち上げということで 最初はやむを得ない事情でもあるのです。

これを発端として、 少しずつ現場で便利に役に立つアプリケーションを増やしてゆくべきと考えています。 携帯電話の付加価値サービスのように。 今や「携帯電話の価値は付加価値サービスにある」と言って良いでしょう。 「ほっとライン」もそうあるべきと考えています。 これを東京都医師会だけでやるより、 全国の仲間達と共同でやった方がずっと効率が良く、 社会の役にも立つということも、 この NPO 発足にかかわった動機の一つでもあります。

○ これからはネット上の「医療関連サービス」接続性標準化と流通促進

このコラムで度々書いてきたことが、 現在では世の中の標準的な考えになったり、 国家プロジェクトとなってきたことが幾つもあります。 電子カルテそのものがそうですが、 私が長年叫んできた「電子カルテ(部品規格)の標準化」は、 厚労省の大きな事業として取り組まれるようになりました。

10年前に電子カルテ研究会を立ち上げた時、 まず皆に提案しコンセンサスを得たことが、 電子カルテの「データの標準化」でした。 これについては MedXMLコンソーシアムを立ち上げ メンバーと長年取り組んできましたが、 これも最近の厚労省のプロジェクト内容をみると公式にとりあげられるようです。

世の中のコンセンサスとなったり、国のプロジェクトになれば、 私の役目は終わったと思っていますが、 これから叫びたいのは「医療関連サービス」の(接続性の)標準化です。 これもいずれは広く認知され私の役目が終わることを待ち望んでいます。

「可能・不可能を考えてはいけません」「何としてもこれがやりたいぞー」と叫ぶことです。神はかならず授けてくださるでしょう 、、、

、、、と書いていたら、おー、やはり海の向こうでは同じ事を考えているんですね。 今ネット上のニュースで発見しました(知っている人は、 もっと前から知っていたことでしょうが)。

それは、こんな記事です「Google の狙いは いわゆる仮想アプリケーションを提供するネットワークコンピュータ・プラットフォーム になることだという。 この場合の仮想アプリケーションとは、 インターネットに接続できるあらゆるデバイス上で ユーザーがタスク処理に利用できるようなソフトウェアを指す」。

これこそ、まさに私がイメージしてきた 「ほっとライン」上に今後増やすべきと考えていた、 私が「医療関連サービス」と呼んでいるものです。 今後「ほっとライン」へ接続さえすれば、 紹介状発行、処方箋発行、診療予約、画像データベース、画像解析など 多種多様なサービスが利用できるべき、 それらは現在多くのベンダーが 「電子カルテ組み込み」での実現しか考えていないものです。

このような電子カルテの周辺機能の多くは今後ネットワーク上のサービスとして、 OS やハードウエアに依存せず、電子カルテの種類にも依存せず 使えるべき(有償・無償いろいろ)というのが私の最近の考えです。

○ 「棚ぼた」身につかず

東京都医師会のHOTプロジェクトの one of them として東京都の「情報開示・地域医療連携推進モデル事業」があります。 長年、東京都へ申し入れていた要求が受け入れられ、 今春から「対象地域はモデル地区だけでなく東京都全域」 「電子カルテは ASP型だけでなく、何でも」 などと大きく補助条件が緩和されました。 今まで誰も参加表明がなかったのですが、 補助金が受けられるということで急に100以上の施設が参加表明をすることになりました。

これは嬉しい悲鳴でもあるのですが、 一方で手放しでは喜べない面もあると考えています。 身銭を切ってこそ初めて「愛着」「工夫」「継続性」が生まれるのですが、 棚ぼた式に無料だからということで手を挙げた方が、 果たしてどこまで使い込んでくれ、 補助金がなくなっても継続してくれるのでしょうか。とても心配です。

私としては、これはこれとして初動時の起爆剤として利用させて頂き、 その間に「便利な付加価値サービス」を何とか増やしていきたいと考えています。

○ スマートフォンその後

7月でレポートした FOMA の M1000 というスマートフォンですが、 現在はほとんど机上で留守番状態です。 その理由は 「基本的に片手では操作できない」 「Web の動作が遅く美しくない」 「従来から使っている Talby の方がずっとコンパクト。 文字も大きく明るくはるかに見やすい」 などです。

特に一番目の理由が大きいでしょう。 やはり携帯電話として使うには、 駅のホームなどで荷物を持ちながら 片手で操作できる事が必須です。これが M1000 ではできません。 携帯特有の十時方向ボタンを使って、 ある程度の操作は可能ですが、 とても実用とは言いがたいものがあります。 特に文字入力に関してはテンキーがないので、 画面に表示した細かいキーボードをスタイラスで選択するという、 両手が空いていることが必須の仕様です。

私が一番よく使う「乗換案内」や「地図を見る」などの操作に関して、 レスポンスが極めて遅く両手必須の M1000 を使うより、 従来の携帯で同じサービスを使った方が絶対的に快適なのです。 ということで、 1ヶ月ほどで元の Talby 一本槍にもどっています。 こちらは極めて薄くてコンパクトなので、 ワイシャツの胸ポケットへ手帳と一緒にさしておけますし 操作も軽快です。 Talby で唯一不便なのは、メモがたったの5項目しか残せないことです。

しかし筐体がコンパクトでデザインが素晴らしいというのは、 私にとって大きいですね。 持っていて、とても満足感・安心感があります。 残念ながら Talby はもう店頭には並んでいないようですし、 これに変わる機種も出ていないようです。 この素晴らしいデザインも一発勝負ということですか。 これが壊れたら、それでおしまいということですね。 それでも Talby は他の携帯とは違って、 壊れても「永久保存」間違いなしの素晴らしいデザインです。

一方 CLIE (SONY の PDA)の方は現在も毎日愛用しています。 無線 LAN の使える自宅や東京都医師会・東京産婦人科医会の会館内でですが、 こちらの Web ブラウザーは画面も広くレスポンスも快適で、 PC にも余りひけをとりません。 現在はほとんどポータブルな Web ブラウザーとしての利用が主です。 SONY へ思いが届くまで、何度でもしつこく書きますが 「CLIE に電話機能さえあればなあ、、」ですね。

CLIE の場合も PDA ですので M1000 同様片手で全ての操作ができるわけではないのですが、 不思議と許せてしまいそうです。 これは何なんでしょうね。 やはり CLIE の品質の高さと M1000 の安っぽさの違いなんでしょうか 、、、とは言え 折角手に入れた M1000 です、 もうしばらくおつきあいしてみることにしましょう。