1991.12 UNIX と Macintosh OS の共通点

ドクター、ワークステーションと暮らす (6)

1991-12 大橋克洋

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UNIX に惚れ込んで使っている人種には、Mac 大好き人間も結構多い。最近 は NeXT など例外も増えつつあるが、端末からキャラクターベースでのやりと りを基本とする UNIX と、GUI(グラフィック・ユーザ・インタフェース) を フルに生かした Mac とは一見全く異質のシステムであるように見える。しか し、それらの精神には大きく共通するものがある。

共通点の一つを挙げるなら、それは「快適な操作性」だろう。これを UNIX は「simple is best」の精神で達成し、Mac は「優れたGUI」で達成した。

この両者を区別するなら、エンドユーザ向けには何といってもフットワーク のよい Mac だが、パワーを必要とする仕事にはマルチタスクで動く UNIX ワー クステーションということであろう。そして両者の特徴を生かした混在型ネッ トワークこそ、現状ではもっとも理想的のような気がする。

○ Mac と Sun でプリンターを共有したい

現在主に使っているプリンターはアップル社の NTX-J という日本語ポスト スクリプトの走るレーザープリンターで、これを Sun ワークステーションに RS-232C で接続している。NTX-J は LocalTalk ケーブルで Mac にもつながっ ていて、これを Mac から使おうとするとプリンター背面のデイップスイッチ を切替えねばならない。これは面倒でもあり、小さなスイッチをしょっちゅう 切替えていると、そのうちにデイップスイッチを折ってしまうのではないかと 心配にもなる。プリンターの方で、どちらのラインから命令がきているかお利 口に判断して反応してくれると嬉しいのだが。

EtherPrint という製品を使うと NTX-J は Ethernet に繋げるだけで Sun からも Mac からも使えるようになる(私のところの Mac は Ethernet で Sun とネットワークを構成している)ので、いずれこれを入れたい。ただし、UNIX 側から通常のように lpr コマンドで使うには、 更に K-SPOOL という15万 円もするソフトウエアを Sun にインストールしなければならないのがちょっ と辛いところではある。

○ コンピュータへの機器接続

13年間コンピュータを使って来て、ずっと思っていることがある。コンピュー タと周辺機器、コンピュータとコンピュータの接続は、オーデイオ・システム のように互換性があって、どこのメーカーのものでも簡単につながり、好きな システムを組み上げられるべきということである。

UNIX システムを使うようになって、ついにこれが可能になったと大変喜ん だものである。しかし、UNIX 以外のシステムと周辺機器を共有しようとする と、先のプリンターのように互換性の問題が浮き上がってくる。

コンピュータやその周辺機器を開発する場合、機器の内部ではそのメーカー 独自にどのような処理をしていても構わないが、外との切口だけは標準的なも のに統一するべきである。もし何らかの理由で標準が一つに絞れない場合でも、 コネクターに接続するだけで機器同士が相手を認識し、相互に共通な方式でコ ミュニケートするインテリジェントな接続形態というものも実現されると嬉し い。

事実上日本はハードウエアの面では米国を大きく凌ぐようになったが、ソフ トウエアでの独自性という面でまだまだ期待できない。その理由の一つが日本 メーカーの柔軟性の不足と閉鎖性にあるような気がする。このようなインテリ ジェント化による柔軟性とオープン・マインドの方向に、日本も是非進んで欲 しいと願う次第である。

○ こまめなバックアップは結構面倒

趣味で使っているうちはともかく、仕事に使うようになるとバックアップ対 策は重要である。と、わかってはいるのだが、ついサボッていると突如ハード デイスクがクラッシュして泣くことになる。最初は1週間に一度くらいの間隔 でテープカートリッジに保存していたが結構面倒で、最近はネットワーク上の 別のマシーンにハードデイスクを増設し、ここにバックアップをとるようにし た。いわゆるミラーリングというやつである。

いろいろの方法をやってみたのだが、根が面倒がりやなのでこのような手間 のかからない方法でないと結局だめのようである。ミラーリングを毎日深夜に 自動的にやるよう仕掛けておけば手間いらずなのだが、バックアップで恐いの は壊れたデイスクの内容を正しいデイスクにコピーしてしまうことである。フ ロッピーのバックアップで何度やったかわからない。

このような問題もあるので、定時の自動バックアップを仕掛けるのはやめに して、とりあえず手でやるようにしている。

○ UNIX ツール類のインストールマニュアル

UNIX を使っていると Nemacs, TeX を初めとして色々と便利なツール類を自 分でインストールすることが多い。DOS マシーンや Mac と違って UNIX のツー ル類はソースで提供され、自分のマシーン環境に合わせてインストールするも のが多いので、動くようになるまで何日か悪戦苦闘をするのが常である。

それでも何とか動いてしまうと「まあ動いたからいいや」で満足してしまう。 ところが、時を経てデイスクのクラッシュなどで再インストールしようとする と大変である。前に苦労したインストール手順をすっかり忘れてしまっていて、 再度イバラの道を歩むことになる。

これを何度かやるとさすがに懲りて、数年前からインストールの際はこと細 かに手順をメモして、自分用のインストールマニュアルを作るようにしている。 このドキュメントはオンラインマニュアルと同様に自分用マニュアルのデイレ クトリーを作って保存してある。ここには実際のインストール手順をそのまま 記述し、その通りにやればインストールできるようにしてある。不要なことは 書かない方がシンプルで使いやすい。

しかし、そのマシーン自体をインストールしなおそうとすると、自分自身が 動かないものだから、マニュアルが読めないという阿呆なことになる。これも 最近はデイスクのミラーリングで解消した。

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