2010.05 どんどん広がる仮想現実

わーくすてーしょんのあるくらし ( 207 )

2010-5 大橋克洋

30 年近く前 Apple II が世に出て、 初めてパーソナルコンピュータを使い始め、 感激の中でしばらくして思ったこと 「コンピュータの中に居れば、宇宙旅行でも何でもやりたいことが 仮想現実としてできてしまう」 「これからは色々なメディアがこの中に入ってしまうに違いない」と言うことでした。それが現実となり、さらに幅が広がりつつあります。 大好きだったが十分乗り回すことができなかった オフロードバイク。 現在は iPhone ゲームとして乗り回せています。 まだちょっとイマイチではありますが、、 今月末 手にするかも知れない iPad もさらにそれを助長することでしょう。

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5月ゴールデンウイークに入るとともに ようやく気温は上がりはじめ、閉め切った部屋の中は ちょっと暑さを感じるほど。 たった2週間前は気温2度で雹の降った天候だったのに。 今年の気候は意表をつくことが多いようです。

○ 今月の脳トレ

私の GW といえば 昔から(?)プログラミング三昧ということに決まっています。 何せこれだけまとまった時間がとれることは、GW と正月しかありませんからね。 初めての電子カルテを仕上げたのも 1989 年の GW のことでした。

GW 前半は懸案の「電子カルテ NOA」大改装にともなう いくつかの不具合の解消です。かなりの大改装だったので 根性入れた落ち穂拾いをするには GW は絶好。 お陰で3日ほどかけて気になっていた不具合部分を奇麗にすることができました。 勇んで新バージョンをリリース。 早速ユーザの方から細かい部分のレポートを受け細部の調整など。

そんなことで、ひとまず NOA の整備が済んでしまうと 何か手持ち無沙汰。そこで以前から考えていた自分専用スケジュール管理 (いわゆるカレンダーや住所録)の Web アプリ大改装に取り組みました。 そうそうこのアプリの Web 化も、ちょうど7年前の GW に実現したものでした。 今までパソコン用設計だったものを、 携帯用には多少手直しして使っていました。 しかし、画面サイズが大きく違うので、やはり使いにくい。

iCal を手本に iPhone 用設計で作り直しです。 2日ほどかけ、ほぼ満足な仕上がり。当然ながら 以前より使い勝手があがりました。いずれまた暇を見て パソコン用画面もこちらを元にしたレイアウトへ変えたいと思いますが、 まずは iPad が来てから。iPad に最適化した GUI にしたいですからね。

ここ数年で javascript と Ajax 畑に土地勘が備わり「何でも来い」の気合い。 「古稀を越えたプログラマー」まで、あと2年。今のところ プログラミングのパワーはバリバリ。さあて、古稀まで このまま突っ走れるでしょうか、、

○ 今月の iPhone

床屋で整髪をしてもらいながら流れてくるラジオ番組が結構面白かったので、 10年ほど前 久々にラジオを買ったものの 最近また聞かなくなっていました。 しかし radiko などのシステムが出現し ネット経由でラジオが聞けるようになりました。

iPhone を電源アダプターで充電しながら、 radiko で FM 放送などを流したりしています。 radiko にも機能する「お休みタイマー」や「目覚ましタイマー」があると、 枕元で流すのに絶好なのですが。 radiko は Mac でも聞けるので、 電子カルテ開発をしながら開発マシーンで流すこともあります。 「ラジオは地上波・ネット経由の区別がなくなり、 どちらかと言うとネット経由で復活と大きな広がりを見せるだろう」 ということですが、私もそう思います。

ところで どういうわけか iPhone でも Mac でも、大阪地区の放送しか入りません。 現在の規制では他地区の放送は聞けないようにしないといけないようなのですが、、 私はむしろ東京地区の放送を聞きたいのに 今のところどうやっても入りません。 いずれにせよ、もう「地区を限定した放送」ではなく 「遠隔地の放送を聞けることに意味のある」時代。 法改正が速やかに行われることを望みます。

、、ということを書いていたら、 早速S君からメール。 彼のところ千葉では東京の放送局が入るとか 「もしかして PocketWiFi なら東京の放送が聞けるかも」 とのアドバイス。 「ん?」ということで iPhone を PocketWiFi につないでみます。 ほおー、ずらずらっと JWAVE や FM 東京など東京の放送局がならび、 もちろんちゃんと聴けます。デスクトップの方も PocketWiFi に繋いでみると、 これも当然ながら OK 。

iPhone の回線を提供している softbank が大阪のサーバ、 というのは想像できても、まさか LAN を繋いでいるネット回線までが 大阪サーバとは思っても見ませんでした。へえー、、

ということは、それぞれ両方のサーバの回線を利用している人は 大阪・東京の放送局を聴けるわけ。 「放送の地区限定」がますます無意味になる時代というわけですね。

○ iPad 日本でもオーバーヒート?

待ちに待った5月10日、日本における iPad 予約の開始日です。 いつものように早起きしてメールを見ると、 4時5分づけで Apple から予約販売開始のメールが届いています。 時刻を見ると現在は5時半。今日は少々起きるのがいつもより遅くなりました。 しかし「一番乗りとはいかなくても、楽勝で予約先行の方だろう、」 と余裕で AppleStore の Web site から予約。

必要な付属品などいくつか添えてカートへ放り込み 「ご注文手続きへ」のボタンをクリック。しかし、ここからが いけません。長いことクルクルとカーソルが廻ったあげく接続がフェイル。 回線混雑によるもののようです。「おいおい、まだ朝の5時半だぞ、もうそんなに加熱アクセスかよ」 とリトライ。全然だめです。現在は午前9時前ですが、もう何度これを繰り返したことでしょう。 時々、送付先確認画面までたどりつけるので「今度は OK か?」と思うまもなく、 むなしくカーソルのクルクルで接続フェイル。

もうこうなったら意地。さあて、いつごろ予約に成功するんでしょうか。 きっと私のように「意地でも注文してやるぞ~」という人たちが 回線に群がっているのだろうと思います。 こんなことは AppleStore 開店以来、初めてのこと。 発売開始をうずうずして待っていた人たちが一斉に解き放たれ、 万まではいかなくとも数千人がアクセスしてるんですかね。 スッゲー!! とただ驚嘆するばかり。

外来診療がはじまり、患者さんが途切れたので 外来の端末から再挑戦「あれ、あれ?」今度は 極めてあっさりとオーダーの最後まで行って、無事 AppleStore から「ご注文成立のお知らせ」メールが届きました。 めでたし、めでたし。時は午前9時半。 皆さんも仕事に入る時間帯、流石にアクセス頻度が落ちたのかなと。 それにしても9時直前まで駄目でしたがねえ、、

○ 携帯各社も iPad 商戦

「爆発的普及が予想される iPad へ向け NTT docomo をはじめ携帯各社が自社回線の加入増につなげる取り組み に乗り出した」とのニュースです。 うーむ、これはなかなか良い作戦になるでしょう。 実際、私を含め私の周りでは iPad の日本上陸を前に iPad の利用目的で e-mobile の Pocket-WiFi を購入した人を沢山目にしました。

そのようなことで iPad の販売権を得た softbank には iPad G3 による利益は当初の予想ほど挙らないだろうと思います (私が iPad G3 を購入しないもう一つの理由。それは iPhone 発売の頃 ここにも書きましたが、手痛く何度も経験した softbank の顧客に対する態度です。 「意地でも softbank ショップでは買わないぞ」と思わせるような)。

iPad が手元に届くまで、あと2日。楽しみですね。 Apple 社のサイトで iPad のビデオガイドをご覧ください。 とても美しく楽しい動画で iPad の色々な機能を紹介しています。 みるだけでとても楽しいですよ。

○ 今月の歩術

恒例の医歯薬の馬場競技が馬事公苑でありました。 出遅れて往路はタクシーでしたが 復路は歩き。 今回は「足底を平に抜いて平に着地」の歩きを さらにトレーニングしようと意識して歩いたことと、 数日前のオフライン・ミィーテイングで泡盛を痛飲した 後遺症で身体がまだ重かったことから、 いつもの1時間20分を10分ほどオーバーしましたが、 まあまあかなと。

昨年秋入院することとなった目眩ですが、 今年の初め頃から ふらふら感は むしろ強く感じます。 脱力とバランスを重んずる中国武術トレーニングのお陰で 歩いてふらつくことは全くないのですが、 今回の歩きでも GW の運動不足もあってか 「ふらふら感」をとても強く感じました。

試合の方ですが、 この競技いつも8月のクソ暑い時期が多かったのに、 今年は馬事公苑の都合で5月初旬の日曜となりました。 馬場の周囲はもう葉桜ですが、 からっと晴れた清々しい最高の天気。お陰で顔と腕が半日で真っ赤に 日焼けしてしまいました。今年は信州大学も加わり8校でしたが、 残念ながら慈恵医大チームは4位。せめて3位入賞を期待したのですが。

○ YouTube にデビュー

先月末インターネットで「30倍望遠つき」というフレーズと 破格の値段に衝動買いしたオリンパス SP-800UZ というカメラを持参しました。 Amazon で 35,030 円という値段の1眼レフですが、 どうしてどうしてなかなか快適なカメラです。 今まで使っていたパナソニックの Lumix FZ7 と 大きく機能は変わらないはずなのですが、 操作の GUI が極めて優れているのには感激。 ただ、オートフォーカスや手ぶれ防止機能などの関係でしょうか、 フォーカスは FZ7 に比べやや甘いような印象。

たまにしか使わないカメラとて、 いつも操作に迷ったりすることも多かったのですが、 今度はそういうことは余りなさそうです。 何とオンライン・マニュアルまでカメラ組み込みです。 そうですよねえ、一昔前に考えられなかったような巨大なメモリーや 高速 CPU が載っているんですから、あとは GUI をデザインする人のセンス次第。 このオリンパスをデザインした人には「座布団3枚」。

今回は操作が快適になったので、 ムービー機能を主体に撮りました。 今までカメラについている動画機能は「おまけ」と考えていましたが、 このカメラになってから「メイン」になる場面もでてきました。 後輩4選手の出場場面をすべてムービーに収めることができましたので、 初めて YouTube に挙げてみることにしました。 解像度を変更せずアップロードしたので5分足らずのものの アップロードに2時間前後かかってしまいましたが、 「ほおー、アップロード簡単なのね」「結構奇麗に見えるじゃん」 というのが、YouTube デビューの感想です。 これからも色々 YouTube にアップすることになりそう。

○ Seagaia meeting 2010 in OKINAWA

恒例の Seagaia meeting が今年も沖縄ムーンビーチ・ホテルで開催されました。 昨年の打ち上げの席で誰かの「来年も沖縄でやろうよ」の一言で、 連続して沖縄となった次第。昨年は快晴でしたが、 今年は梅雨に降りこめられました。この季節、昨年が例外だったのだそうです。

プログラム

今回のテーマも ArcheType や openEHR 関連が主でした。 昨年に続き、早稲田大学の加納先生のところから、 カンボジアからの留学生諸君による ArcheType を使った発表がありました。 彼らはいずれ母国で先端を引っ張る人間になるそうですが、 若いパワーによる一生懸命さ、とても素晴らしいと思いました。 馬術部の後輩たちと接していて ある程度 目にするものの、 最近 日本ではあまり目にすることがなくなったものです。 日本の若いパワーも何とかしなければ、非常にヤバイ、、

皆川さん、高橋先生から iPhone アプリの発表。 私はまだ個人的な必要性を認めないため iPhone アプリの開発には手を染めていません。 iPad になると違うかも知れません。「なーるほどね iPhone で実現すると、 こんな感じになるよね」と思わせるものでした。 私の電子カルテ NOA は何も手を加えていませんが、 そのまま iPhone でも動きます(狭い画面の中、右往左往するのを厭わなければ)。 サーバが外部へ接続されていないので LAN 内限定です。 まあ実用的には、ちらっと閲覧する程度というところですかね、、

期待していた都立広尾病院の山本康仁先生の「データキューブの活用」、 期待以上の面白さでした。山本先生とは NeXus (日本 NeXT ユーザ会) の仲間ですが、お会いするのはかなりお久しぶりです。 「データキューブとは何だろう?」と思っていたのですが、 話は病院内のスタッフが持つ PHS 位置情報を駆使して コンピュータが「この件については、誰に連絡をつけるべきか」など、 お利口に判断して運用するシステム。まさに「2001 年宇宙の旅」の コンピュータ HAL を彷彿とさせるもの。

かなり特殊なスーパーコンピュータを使っていそうな話ですが、 サーバ・マシーンは Apple 社の Xserve を主体としたもの、 「データベースは Oracle ですか?」というフロアーからの質問に 「FileMaker です」と苦笑いしながら答えておられました。 「スッげー、さすが康仁先生」、通常なら 某 F 社あたりが かなりのスタッフを貼付け、 億単位の膨大な予算をかけ、それでもまともなものは期待できそうもないシステム。 大学の研究室レベルで実現できるようなものを、 彼ひとりで開発・運用しているようです。 都立広尾病院病院はどれだけ膨大なコストをセーブできたかわかりません。 逆に言うと、この素晴らしいシステムも康仁先生が居なくなれば、 直ちに消えてしまうということでもあります。ここが何とかならないですかね。

私の Cloud の話は、今年の Seagaia meeting の企画について 呑みながら話した中で「いま旬なクラウドの話も面白いのでは?」と言ったところ 「言い出しっぺの法則」で「じゃ、やってね」と振られたものです。 「何を話そう、困ったな」と悩みながら沖縄まできてしまいました。 羽田で飛行機を待つ間に構想を練り、ホテルについてから一挙に作ったプレゼン。 まあ、言いたいことは盛り込んだつもりですが、 昨年の動画による NOA のプレゼンに比べ、かなりインパクトに欠けるものでした。

○ 思いがけず「またも入院かよ」

Seagaia meeting から帰りの飛行機も本州半ばまで来たかと思う頃、 ふと右側の窓へ首を回したところ、額右のあたりが突然「キッ」と痛くなりました。 よくある神経痛のようなやつです。よくあるように ほんの数秒で消えていったのですが、思わず「痛てっ」と頭を抑えるほど、 軽い悪心もほんの数秒あったのが 何となくイヤな感じではありました。

そのうち、唾液を飲み込もうとすると舌の動きが悪く、 飲み込みにくいことに気がつきました。あれ? 右手を握ったり開いたりしても問題ありません。 下肢も大丈夫。私の父方3人はすべて脳溢血で亡くなっています。 覚悟はしてきましたが「ついに来たかな」と。 無事羽田で飛行機を降り同行の小塚先生とお会いしたので、 お願いして昭和大学病院へ行こうかなとも思ったのですが、 唾液の飲み込み難さだけで他の麻痺はまったくありません。 告げることなく、そのまま帰宅することにしました。

空港の中で夕食をとって帰る予定だったのですが、 今後どう変化するかがちょっと心配。 自宅近くの商店街で鮨を買い帰宅。 ひとつ口に放り込むと米粒を舌の上でハンドリングできません。 舌の右奧の麻痺のためです。心配した家内が元脳外科だった私の弟へ電話を入れました。 やはり現役脳外科の甥が電話に出て「電話を入れておくので、明日まで待たず すぐ慈恵医大の救急へ行ってください」。

家内とタクシーで救急へ。すぐ MRI を撮ってもらい 「画像に脳梗塞の影は見当たらないのですが、症状から見て延髄梗塞ということで、 見切り発車ですぐ治療を始めましょう」とのこと。即、入院と相成りました。 「やれやれ、昨秋 初入院を経験したばかりなのに、 またもや入院かよ」。Seagaia のため先週の金土と休診にしたのに。クッソー、、 ま、開き直るよりほかないですね。

○ そして8日間の入院生活

病態は「舌右側の麻痺(初期には咽頭右側も 軽い麻痺がありましたが1日ほどで消失)」だけで、 言ってみれば1週間の息抜き生活。 MRI を3度 撮り直しましたが、結局梗塞の影は発見できませんでした。 主治医の先生から「一過性虚血の可能性も」という話もありましたが、 舌奧の軽い麻痺は1週間以上も残っており、 やはり極めて微細な梗塞があったのだろうと思っています。

今から16年前52歳の頃、NeXT Expo を見に 米国西海岸へ行った時、ひどい目眩を経験しました。 この時はまさに「長距離飛行に伴うエコノミー症候群により、 小さな血栓が椎骨動脈にひっかかって起こったものかな」 と思っていましたが、今回と同様のことだったのかも知れません。

梗塞発生後しばらくが危険ということで、 最初の2日間ほどは再度の塞栓防止のため24時間持続点滴。 トイレへの歩行も禁止です。おっとー、尿瓶を使うのは初めて。 思わず看護師さんへ「私は婦人科の医者で女性の尿瓶の使い方は知っているけど、 男性用は初めて、、」と言って笑われました。 身体を横にして尿瓶を使うのは、まさにオネショの気分。 うーむ、恐る恐るというか、それなりに気持ちよいというか、、

病室は結構人の出入りが頻繁です。検温、点滴交換、お茶のサービス、 食事、枕元の掃除、主治医の訪問、部屋の掃除、車椅子に乗って検査室へ、 これらの繰り返し。白衣を着た恰幅のよい先生が「大橋先生、」と入って来られました。 すっかり忘れていましたが、そう言えば今回私がお世話になることになった神経内科の教授は、 馬術部時代に4学年ほど下だった持尾教授でした。毎日のように顔をだして頂きましたが、 すっかり貫録がついて恐れ多いことです。主治医チームの中には 長男の同級生や長男の部下だった先生も居られ、心強いことでした。やはり母校は良いなと、、

持続点滴の間はうっかり腕を曲げると 輸液ポンプがピーピー、アラートを発するし、 胸には心モニターの端子を貼り付け、指先にパルスオキシメータを挟む状態。 このように24時間ヒモ付き状態なのは、やや鬱陶しいですね。 深夜寝静まった頃、見回りの看護師さんがそっとドアを開けて入ってくる気配で目が覚めますが、 すぐにまた眠りに入るという動物のような状態。密やかな音でも目を覚ますのは、 年齢のせいでしょうか。「まな板の上の鯉」、 ゆったり入院しているつもりでも、多少の緊張があったのかも知れません。

○ で、肝心の症状について

延髄の梗塞、ワレンベルグ症候群が疑われました。 早速 iPhone で調べてみると、詳細な闘病日誌を公開している方がありました。 IT 技術者のようですが、職場の椅子の枕で うなじをゴリゴリやった途端、非常に嫌な気分になり、病院へ行ったところ ワレンベルグ症候群の診断。その後、激しい眩暈、吐気、複視、などなど 一時は廃人同様の悲惨な状況だったようです。数年にわたるリハビリの努力により、 かなり回復されたようですが、私は極めて軽いアタックで幸運だったと思います。

最初は咽頭右側にも軽い麻痺があり、ものを呑込む時に 違和感がありましたが、これは1,2日で消えました。舌の麻痺が主体ですので 最初の頃は「ロレツが廻らない」が外見的に明らかな症状。 ベーッと舌を出すと、舌が右のほうへ曲がっているのが自分でもわかります。 自分なりにリハビリをしようと舌を動かす練習をしてみました。 ラ行が最も喋りにくく、あとはタ行、ナ行ということでしょうか。 なるほど「ロレツが廻らない」とはよく言ったものです。 3,4日もすると、これもほぼ解消され、会話も 以前から馴染みのなかった人にはわからない程度になりました。

しかし、後まで尾を引いたのは食事。 最初の1,2日は目に見える改善でしたが、以後は極めて緩徐。 特に舌の右奥の回復速度が微々たるもの。 上あごに張り付いた海苔をはがす操作、 食物を前のほうへ押し出す操作などに困難を感じました。 朝食のバナナを頬張ってしまったりすると、 口のなかでもごもごするだけ、扱いに非常に苦労しました。 このようなことから「舌は喋ることより、モノを食べる作業で はるかに高度なテクニックを駆使」していることを実感した次第。

入院中3度の MRI、頚のエコー、血液検査、心電図室での動脈硬化の検査、 など実施しましたが、これと言って引っかかるものはなかったようです。 動脈硬化の測定では、色気をだし年齢よりちょっと若い結果を期待したりしましたが、 年齢相応。まあそんなもんですかね。 コレステロール値も高くないようです。症状もほぼ改善したところで、 8日目に無罪放免と相成りました。

○ 入院生活に何はなくとも iPhone

救急外来を訪れた時も胸ポケットには iPhone 。 これさえあれば、万事オッケー。メールから、インターネット情報から、 何でも手元で読み書きできます。しかし、来月以降は iPad でしょうね。 即入院ということが頭になかったもので、iPhone の充電用ケーブルを持ってこなかったのは失敗。 早速翌日、家内に持ってきてもらいました。これさえあれば鬼に金棒。

3日目に入り、ようやく24時間持続点滴から開放され点滴も朝夕の1回ずつ、 そこで今度は MacBook を持ってきてもらいました。昨年秋確かめたように 個室には LAN のハブがあるので AireMac Express(無線 LAN 基地局)を刺すだけで、 ベッドの上でワイアレスのまま快適にインターネットができます。 Seagaia meeting で知った TED を鑑賞。 これは色々な道のエキスパートが舞台の上でプレゼンしながら、 素晴らしいトークをする動画番組です。色々なジャンルの人たちが話しますが 「オープンデータとマッシュアップの話」など、大変面白く見ました。 iPhone の YouTube では止まってしまう動画が、やはり MacBook では快適に流れます。CPU の早さ? メモリーの違い?

4日目からは病床の上で、本格的に電子カルテ NOA の開発作業。 ユーザさんから寄せられた様々なリクエストへ対応するための改良。 時間はゆったりとあるので、懸案事項を気持ちよく処理できました。 8日間の入院生活もまったく退屈なし、あっと言う間に過ぎてゆきました (まあ、私はどこに居ようと、退屈というものを味わうことのない人ですが)。

○ そんな方法で簡単に流産するかあ?

折しも TV では宮崎県の口蹄疫とともに 血液内科医師による不同意堕胎の事件が繰り返し報道されていました。 私が入院している本院玄関が大きく映し出されています。数年前の事件から 信用を取り戻しつつある慈恵医大にとって大きな打撃。ちなみにこの方は 慈恵医大の卒業生ではないのですが、マスコミには慈恵、慈恵という名前が連呼されます。 まあ、慈恵医大は それだけ報道バリューがあると思えば良いんですかね。

ちなみに流産をさせたという方法は、産婦人科医にとっては「え?」というような方法。 「そんな薬剤で簡単に流産しないよ」「たまたま流産しかかっていて、 丁度うまい具合に流産したんじゃないの?」という意見が、産婦人科の ML で飛び交っていました。私もそう思います。

慈恵医大の名誉のために述べるなら、昨年秋の入院でもそうでしたが、 慈恵医大の病棟の看護師さんを含めスタッフ全員が とても礼儀正しい中に親しみやすく、母校の職員教育の質の高さに鼻を高くしたものでした。 ドクターの方々も、今流行の無精ヒゲがあったりするのは私の世代には頂けませんでしたが、 どの方も信頼できる良い印象を残してくれました(あの様子なら、 私が母校の先輩ということを差し引いても、人当たりに大きな違いはないでしょう)。

○ 外来のマシーンがダウン

昨年 4月に書いたように診察室の iMac が急逝し、 遊んでいた初代 MacBook をスタジオ・ディスプレイに接続して使ってきました。 退院翌日から診療を始め、いざログインすると「コンピュータを強制再立ち上げしてください」 というような黒い画面。ハードエラーを示す画面ですが「たまたまのことかな」と思い、 電源ボタン長押しでシャットダウン。再起動。 しかし、しばらくすると同じ症状。

長い休診の後だったので、患者さんがどんどん増えてきます。 いつも持ち歩いている MacBookPro を急いで自宅から持参ししのぎました。 こういう時 Web 版 NOA は楽です。何の設定もなく Web ブラウザーを立ち上げれば いつものように使えます、、と言いつつ、実際には処方箋出力のため、 プリンターなど多少の設定作業は必要でした。

スタジオ・ディスプレイへの接続、 コネクターが異なり MacBookPro にはそのままでは接続できません。 やむを得ず、ノートのディスプレイそのままでしのぎました。外来終了後 ダウンした MacBook に OS を再インストールしようと試みたのですが、 やはりハード的問題のようで、すぐに例の黒い画面になってしまいます。 どうも お釈迦のようです。昨年の iMac も今回の MacBook も 30年以上にわたる私のコンピュータ歴の中でも かなり短命な方です。

MacBook は外来デスク隅に置いてありました。 その上に書類などが積み重なるようになり、 うつ熱したのが寿命を短くした原因かも知れません。 毎日使っていれば、もう少しもったところを Seagaia と私の入院で10日以上も 休ませてしまったため、立ち上げれないほどのダメージ になったのではないかと思っています。 最近のマシーンは、コンデンサーなど使っていないと思うのですが、 古くなったコンデンサーは長時間休ませると、 その間にトロけてしまうことがあると聞いたような気がします。

そんなことで、予期せぬ MacBook の急逝に 急遽 iMac を購入することになりました。AppleStore を見てびっくり、 2年前に購入した iMac 20インチは25万もしたのに、 現在の iMac は 27インチのやつでも19万弱です。 当然、今度は 27インチを入れることにしました。 今度の iMac は万一 本体がお釈迦になっても、 ディスプレイとして生き残れるはず。 それにしても期せずして iPad の届くのと同日となりました。 iPad リリース開始日 ただでさえてんてこ舞いであろう AppleStore や運送会社さん、 ご免なさい。それでも AppleStore からはきちんと iPad や iMac を28日に届けるむね メールが届きました。偉い!!

○ iMac 27 inch そして iPad

28 日になりました。Apple 新製品リリースの日には午前 9 時きっかりに 「ピンポーン」と宅急便が届いたりするのですが、 午前の診療を終えて帰ってきてもまだです。「あの予約状況から見て、 今日は Apple も配送業者さんも大忙しなんだろうな」と。 午後 1 時、ピンポーン!(最近、犬のトイレに仕掛けた数千円の監視装置の音が、 玄関のインタホーンとまったく同じ音なので、非常に紛らわしい)。 「来たっ」出てみると、届いたのはまず iMac でした。 発注も Apple からの出荷メールも iPad が先、 iMac の到着は夕方と思っていましたが、、

宅急便のお兄さん軽々と抱いてきましたが、やはり 27 インチは デカイ、重い。家内に手伝ってもらって段ボールから出してみると、 書斎で使ってる iMac に比べ、一段と巨大な画面。 こちらを開発用にして、今まで書斎にあった方を外来へ降ろす予定。 やはり CPU のランクが上がっているだけあって、こちらの方が速度も 心持ち早いようです。

そうこうするうち午後 3 時、iPad 到着。宅急便の小父さんの転がしてきた台車には、 同じような段ボールがまだ5つ6つ載っています。 「iPad この近辺でも頼んだ人が沢山居るんですね」と聴くと 「そうなんですよ。盗難が多いので気をつけながらやっています」との返事でした。 おそらく当マンションでも幾つか発注があったのだろうと思います。 この密度から考えると、初日の iPad 出荷台数、もの凄いことになりそうです。 前代未聞のことですね。

さて、使ってみた体験記については、次号で、、

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沖縄美ら海(ちゅらうみ)水族館

これは日々の生活で感じたことを書きとどめる私の備忘録です