1996.11 ネットワーク・トラブル

わーくすてーしょんのあるくらし (2.11)

1996-11 大橋克洋

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今月はネットワーク・トラブルで何週間も時間を費やしてしまいました。 とかくネットワーク・トラブルはどこの施設管理者も一番頭を痛める事柄で あることを知っていても、うちの場合ユーザが少ないことや自分自身が管理者 ということで、さしたる苦労はせずに過ごしてきました。しかし、一旦トラブ ると泥沼であることを久々に実感しました。

私のところのネットワークは、構築してから丁度10年ほどになります。最 初は1階の診察室と13階自宅の Sun ワークステーションを Ethenet で繋い だことに始まりました(私の診療所はマンションの1・2階にあります)。

○ NEXTSTEP のネットワーク管理は NetInfo でとても楽ちん

その後 NeXT を使うようになり、ネットワーク管理は NEXTSTEP 標準の NetInfo というネットワーク管理システムを使っています。NetInfo は大変使 いやすくできていて、サーバさえ設定しておけば、クライアントを接続するの は極めて簡単です。新しいマシーンが来たら Ethenet をパチャンと繋げて立 ち上げると「マシーン・ネームは何にしますか」と聞いてくるので、新しいマ シーンの名前を入力すればただちにサーバに登録され接続されてしまいます。 Sun OS などでやっていた諸々の作業は全てオートマチックで、裏側でやって おいてくれます。

というわけで、NEXTSTEP の楽ちんな世界にどっぷりと漬かっていたツケ を久しぶりで払うことになりました。

○ ネットワークが不安定に

症状は、時々ネットワークの接続が不安定になることから始まりました。思 い当たることは、その前に mailing list の再設定のため、少しNetInfo をい じったことです。NetInfo は便利な反面、へんないじり方をしてハマルと泥沼 に陥ることを何度か経験しています。

サーバをはじめクライアントの NetInfo をいろいろといじってみても、 ネットワークの不安定な状態は改善されません。サーバの NetInfo は結構入 り組んでいるので余り作り直したくなかったのですが、思いきって作り直すこ とにしました。経験上 NetInfo がおかしい時は、下手にいじるより新規に作 り直すのが一番です。

クライアントの NetInfo も新規に戻して繋いでみました。マシーン名を聞 いてくるので、今まで使っていたマシーン名を入力すると「その名前はすでに 使われています」と受けつけてくれません。「馬鹿もの、俺がそのマシーンだ い」と言っても、サーバはガンとして受けつけません。仕方がないので新規の 名前を入力すると自動接続してくれましたが、当然ながらサーバが勝手に振っ てくれた IP アドレスは以前使っていたものとは違うので何かと都合が悪いで す。「うーん、昔使っていたアドレスで接続するには、どうするんだっけ」 と、初めてマニュアルを読みます(私はマニュアルを読まずにどんどんいじっ てしまう悪い人です)。

そうか、わかりました。手動でやるには HostManager で Ethernet アドレ スも登録するんでした。これで昔の IP アドレスとマシーン名を使って元通り クライアントを接続できました。

しかし、それでも症状は改善されないのです。マシーンの立ち上げ時に、 「NetInfo が応答しません」などというメッセージも時々見られます。 そこで「うーむ、遂に最古の NeXTCube あるいは NeXTstation がイカレは じめたかな」と思うようになりました。

○ Ethenet の歴史とともに

私のところのネットワークは1階と13階を結ぶ一番古いところが 10Base- 5 いわゆるイエローケーブルで、13階の自宅内は 10Base-2(Thin Ether) を 引き回してあります。そして更にその先に Hub を付けて 10Base-T(Twist Pair) が繋がっています。1階も同様に Hub で延長してあります。まさに ネットワークの歴史に添った拡張がなされてきました。

以前ネットワークがトラブッたことがあります。いきなり、どのマシーン間 も切れてしまったのです。この時も原因究明に苦労しました。自宅内の Thin Ether が床の隅を露出で這い回っているのですが、家内が掃除機をかけた時に 接続がゆるんだためのようでした。ケーブルがはずれていれば、かえってわか りやすいのですが、なまじ目視ではわからなかったので、気がつくまでに大分 苦労しました(ここが素人たる由縁ですね)。

このように 10Base-2 や 10Base-5 では、ネットワークのどこか一か所の接 続が不良になっただけで、ネットワーク全体が死んでしまいますから大変で す。 今回は違います。ネットワークは生きているのですが、時々接続が不安定に なるのです。ハード的なものなのかソフト的なものなのかということで、最初 はソフト( NetInfo の設定)を疑ったわけでした。

○ ネットワーク・トラブルの切りわけ

ネットワークのどこに問題があるか、切り分ける必要があります。どうも サーバのある13階部分は問題なさそうです。ということで、1階部分を チェックすることになりました。「ややっ」、今度は1階・13階間のネット ワークが完全に切れている現象が出ています。

イエローケーブル両端のトランシーバ部分をチェックしても接続は完全です。 となると疑わしきは Hub か、ということで手持ちの Hub を色々と入れ替えて みましたが問題なさそうです。

最後に残ったのは、13階でイエローケーブルから Thin Ether への受け渡 しをしている、でっかいルータです。こいつは NeXT を購入した時、NeXT に は 10Base-5 の口がないので、10Base-5 から 10Base-2 へ変換するため購入 せざるを得なかったものです。今ならマッチ箱位の大きさで済むものを、大き なスーツケース位で、アルミダイカストのパネルのついた立派なものです。当 時30万位したでしょうか(思いがけぬ余分な出費でした)。

冷却ファンがうなりを立て、インジケータがクリスマスツリーのように美し く明滅する威風堂々たるものです。どうしても5万円以下の Hub の方を疑っ てしまうのが人情というものですよね。

「もしかして」と、そいつをはずしてイエローケーブルの両端に Hub を接 続して見ると、ネットワークはバッチリ生き返りました。なあーんと、「そう いやあ、こいつも年中無休で7年間働いたもんな」と合点がいきました。

○教訓

「立派な見かけにだまされてはならない」 「貧相だからといって馬鹿にしてはいけない」

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