1999.01 構内ネットワークあれこれ

わーくすてーしょんのあるくらし (13)

1999-01 大橋克洋

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日本産婦人科医会で会員間のメーリングリストが始まりましたが、 ここに以下のような質問がポストされました。

現在、診療所を新築中なのですが、マッキントッシュを使って院 内LANを考えています。先日、工事の人にLANについて聞いたとこ ろ、配管をしなくても設置する場所が決まっていたら配線だけで 良いと言われたのですが本当でしょうか。

これに対して、何人の方から回答が寄せられました。配管の要・ 不要は建物の規模やコンピュータ・ネットワークの信頼性をどのよ うに考えているかにより異なってきますが、ほとんどの意見は私が 考えてきたことと同じでした。

長年の間に、私のところのネットワークは神経細胞が突起を伸ば してゆくように成長と退化を繰り返してきました。その結果 10BASE-5(イエローケーブルと呼ばれる太いやつ), 10BASE-2( TV アンテナ用同軸ケーブルと同じようなもの), 10BASE-T(現在 もっとも広く使われている電話線と同じような twist pair) が混 在するようになりましたが、現在基幹は 10BASE-5, 同じフロアー 上は10BASE-T の構成になっています。 メーリング・リストで回答された内容を含め、今月はこれをテー マにとりあげることにしましょう。

○ 建築にあたってネットワークの準備

今までもこのエッセイで何度も触れたことですが、父から譲り受 けた土地を18年前にマンションのデベロッパーに等価交換方式で 一旦売却し、その見返りとして13階建てのマンションに入ること になりました。マンション建設に当って、元の地主の特権で1Fの 外来から13Fの自宅までコンピュータ用のパイピングをしてもら いました(当時は Apple II などのパソコンが世に現れたばかりの 時期で、ネットワークなど大型電算機でなければ思いもよらぬ時代 だったのですが、コンピュータは将来 on line で繋いで使わなけ れば意味がないと思っていました)。

これが大成功で数年後、そこに Ether cable を通して「ねっと わーくのあるくらし」が始まりました。ただ、それでも失敗したの はパイプの径が余り太くなかったことです。

現在、地元の荏原医師会では新会館建設が進んでいます。現在の 医師会事務局内には Mac が3、4台あり AppleTalk(もうEther になっているかも知れませんが、私はタッチしていないので)で室 内だけで繋がっている状態です。他にも臨床検査センターや看護学 校にもコンピュータがありますが、これら他のセクションとはネッ トワーク化されていない状況です。

しかし新会館はネットワーク化を考慮しておかねばなりません。 設計事務所への注文は、各フロアー間を貫通する部分は太目のパイ ピングを、同じフロアー間は天井裏に配線できるよう考慮をとオー ダーしてあります。最初は、建物の中央に共同溝のようなものを通 しておいて、後日そこに色々なライフ・ラインを通せるようにした いという希望を述べたのですが、設計事務所から却下されました。 どうしてでしょうね。コストがかかったり設計が面倒になるので嫌 がるのでしょうか。私はそう思わないのですが。建物の用途は、住 む人の事情や時代とともに変貌してゆくものですから。 以下に、私のネットワーク体験から得た要点をまとめて見ましょう。

○ 基幹部分には太めのパイピングを

私のところで建設時に敷設した各階を貫通するコンピュータ用配 管は、直径 5mm 以下の光ケーブルと 10BASE-5 のイエローケーブ ルをそれぞれ一本通しただけで一杯になってしまいました。 各フロアー間や建物のセクション間を貫通する部分には、基幹が 通る太いパイプを通しておくことが必要です。この部分の改造は費 用もかかり工事も非常にやっかいで、後からでは事実上不可能に近 い場合が多いからです。

私のところも、今1Fから13Fまでケーブルを通そうとすれ ば、マンションの管理組合総会の承認を得なければなりませんし、 大事になります(一昨年、ケーブルテレビを13Fに引こうとして 実感しました。この時は、うまい具合に17年目のマンション外装 の大規模補修工事にぶつかったので、総会の承認を得て外壁塗装と 同時に、マンションの各階にケーブルテレビを敷設することができ ました)。

○ 同じフロアーは天井裏を利用

同じフロアーで天井裏を利用できる場合は、パイプを省略する代 わりに要所、要所に点検口を設置しておくことが大切と思っていま す。これは将来、色々な ME 機器の配線や監視カメラなどの設置に も役立ちます。 気をつけなければならないのは、鉄筋の建物の場合、天井裏に fire wall が入っている場合があることです。そこにはパイピング など何らかの貫通手段が必要となります。

以前、コンピュータ仲間に手伝ってもらって、病棟部分の廊下天 井裏にネットワークケーブルを通したことがあります。点検口から 天井裏に上がってみると、天井裏の意外なところ(建築設計上は当 然のところ)に、しっかりとコンクリートの防火壁が入っており、 そこを越えて向こう側にケーブルを出すのにとても苦労しました (廊下の天井を2カ所ほど踏み抜いてしまったのは、素人工事がユ エで、プロはどことどこに体重を掛ければ構造上安全かを心得て作 業するのでしょうが。踏み抜いたところに白い紙を貼ってしばらく ごまかしていましたが、昨年改装して今その部分はなくなっていま す)。

改装に当って分娩室と手術室をぶち抜いて50名ほど入れるセミ ナールームを作ったのですが、ここは天井裏配線を考慮して点検口 を設けてもらい、自分で Ether cable を設置しました。 オフィスなどでは専用の床材を使って床上げし、その下に配線を 自由にはわせる方法もあります。しかし、これはコストも高いし、 何か無駄があるような気がして私は好きではありません(昔のもの は今のものほど良くなく、歩くとドブ板を踏んだ時と同じようにゴ トゴトと音がした記憶があるのも印象を悪くしています。そういえ ばドブ板などというのも、もう死語でしたね)。

そんなことで、私は天井から降ろすのが一番合理的ではないかと 思っています(外見をスマートにしたい場合、降ろし方が問題とは なりますが、私は外見もさることながら、まず実用的かどうかが大 切と思いますので)。

○ 電話業者に頼むのも一方法

とりあえず Twist Pair(10BASE-T)の配線で良いというのなら、 電話工事業者に電話の配線と一緒にやってもらうのが一番安上がり のようです。将来もっと良い媒体が出た場合、新たに別の配線を考 えることにはなりますが(私のところでは、後述のように 10BASE -5, 10BASE-2, 10BASE-Tと変遷を繰り返してきました)。

電話線といえば、10年程前電話システムを交換機ごと更新する 際、電話機の後ろに RS-232C の口がついているものを入れた事が あります。当時はまだ UNIX も今のように TCP/IP ではなく、単に 232C で繋いだ端末で役に立っていた時代でしたが、とうとうそこ へ端末を繋ぐことなく終ってしまいました(それからすぐ Ether を引いてしまいましたので)。

○ 手軽な露出配線の功罪

自宅 LAN についても以前書きましたが、露出で床の隅を Ether がはい回っています(手軽なというより、思いっきり手を抜いた という方が正しい)。

家内が居間の掃除機をかけていて接続部がゆるみ、ネットワーク が全部ストップし、それを知らない私は原因をみつけるのに大汗を かいたことがあります。コネクターが完全にはずれればまだしも、 ちょっと緩んだだけで見た目にはわからなかったのです。当時自宅 のネットワークケーブルは 10BASE-2 を使っていました。10BASE- 2 も接続が簡便で良いのですが、難点はどこかで接続不良になると ネットワーク全体が突然凍りついてしまうことです。

今の 10BASE-T では、接続がはずれたり緩んだりしても、ネット ワーク全体がストップということはありませんし、原因究明も楽で す。ネットワークはとても便利なのですが、一旦トラブルと結構エ ネルギーを消耗することになります。

知りあいが同じマンションに住むようになりまして、彼と接続す るのに一番安上がりな屋外露出配線(10BASE-T が風でユラユラ) をしました。雨風に当るので対候性を心配したのですが、駄目に なったらケーブル交換だけで安上がりという結論でした。 北海道のコンピュータ仲間が、長年屋外露出で使っており潮風に 当って数年経つが、びくともしないという話も勇気を与えました。 これら、お手軽配線は、もちろん own risk での話となります。

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