1998.02 コンピュータ画面とのつきあい方

わーくすてーしょんのあるくらし (2)

1998-02 大橋克洋

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私の住んでいるマンション屋上に携帯電話の電波の中継アンテナ が立つことになった。宅配便などが業務用に利用する携帯電話で、 近隣を調査した結果ここが一番条件がよいということだそうであ る。その賃貸料で共益費の負担も減るであろうということで管理組 合も了承した。

私の住居は最上階で、丁度アンテナの直下になる。電波障害を心 配する家内の要請により、業者が測定器を持ち込みオシログラフに 現れる電波を、一番低い波長の FM から始まり、民放 TV、ポケッ ト・ベル、携帯電話、警察電話など行政用の帯域ほか全波長にわ たって説明してくれた。

オシログラフで見ると一番レベルが高いのは TV の電波で、それ 以外はその三分の一程度が殆どであった。やはり映像を送るとなる とそれなりのエネルギーが必要であることをよく実感できたりし て、なかなか面白かった。 試しに携帯電話の帯域にフォーカスを合わせておき、手元の携帯 で電話をかけてみるとオシログラフの中でピーンと立ち上がる部分 がある。近くでやっても TV を少し上回る程度であった。

後日、屋上のアンテナから電波が発信されるようになった時点で 再度見せてくれることになっているが、せいぜい TV の電波と同程 度か、やや上回る程度であろうと聞いてようやく家内も安心したよ うである(その程度の電波の身体への影響を心配するなら、煙草の 方がずっと害があるぞと脅かすのだが、なかなかやめそうにない)。

○ コンピュータ画面とのつきあい方

後でしまったと思ったのは CRT の電磁波がどの程度のものなの か確かめそこなったことである。 当然、距離によるだろうが、通常コンピュータを操作する距離で どの程度の影響があるか知りたいところである。その辺を飛びかっ ている TV 電波よりレベルが高いのかもしれない。

コンピュータと付きあい始めて20年弱になるが、およそ紙と鉛 筆を使う仕事のほとんどをコンピュータでやっているし、最近は通 信端末でもあるので、CRT の前に座っている時間は恐らく平均して 一日8時間程度のはずである。 電磁波による障害は気にしたことはないが、明らかな影響が出や すいのは、やはり視力であろう。長年の間に私が会得した CRT との 付きあい方は以下のようなものである。

  1. デイスプレイと目の距離はなるべく離す

    1. 普通、デイスプレイの奥行きに対して机の奥行きは余りないの で、どうしても目との距離は近くなりがちである。このような時、 私はデイスプレイを正面ではなく側方におくようにしている。

      1. キーボードは正面に置き、首を左か右へむけて操作するわけで、 このようにすれば目とデイスプレイとの距離を稼げる。いつも(斜 め)横を見ることになるので、首がくたびれて嫌だという人もある かも知れないが、私は余り気にならない。 診察室のデイスプレイはこのような配置で使っている。

  2. 正しい姿勢でキーボードを打つ

    1. これは先ほどの視力とも関係するが、長時間キーを打っても疲れ ないためには大切なことである(私は歩くのが健康法と実用を兼ね た趣味で、かなりの距離を歩いたりするが、長時間を速く歩くコツ も正しい姿勢にある)。

  1. デイスプレイだけはおごって良いものを

    1. 画質の悪いデイスプレイがもっとも視力に悪い。大枚をはたいて も良いものを使うべきである。 そろそろ液晶デイスプレイも価格が安くなったので、来年くらい は一台入れたいと思っている。チラツキもないので目にも良いはず である。秋葉原に並んでいるのを見て、画質や明るさもとびぬけて 良くなったのに驚いた。省スペースも大きな魅力であるし是非入れ たいと思う。もう少し値段の下がるのを待っているところである。

  1. デイスプレイの明るさはほどほどに

    1. デイスプレイが明るすぎたり、暗すぎたりは、目の調節能力を 酷使するので良くない。やや暗め位の方が良いのかも知れないが、 部屋の明るさとの関係もあり、一概には言えない。要するに、デイ スプレイと周囲との明るさの差を少なくするということであろう。 同様の理由で、デイスプレイへの写り込みをなくすことも重要で ある。私はどちらかというとデイスプレイは垂直よりやや手前に倒 し気味で使うのが好みである。

私はデイスプレイで目が疲れたと思うことは殆どない(ある時 期、どうも朝起きて新聞を読もうとすると目がかすむ。これはデイ スプレイの前に座りすぎて眼性疲労かなと思っていたが、何度か続 くうちに「老眼」の始まりであることに気がついて愕然とした記憶 がある)。

○ 液晶プロジェクター

少産化により数年前に分娩の取扱をやめたが、遊んでいた分娩室 ・手術室を改装して、50名程度入れるセミナールームを作った。 「オーシャン・スペース」と名づけ、さし当たり NeXT ユーザ会の 例会や分科会などに提供しようと思っているが、貸会議室として提 供することも考えている。目黒から目蒲線で二駅目なので、都内で その程度の研究会などをやりたい場合はどうぞご利用ください。

ここに、コンピュータ画面をそのまま投影できる液晶プロジェク ターを入れた。EPSON 製の XGA をエミュレートできる解像度のも のである。本当は XGA をそのまま投影できるものが欲しかったの だが、予算を大幅にオーバーするので今回は断念した。 一緒に ELMO 製の「ビジュアル・プレゼンター」と称する、CCD カメラで文書などを取り込む装置も入れた。安いのは5万円程度か らあるが、画質が落ちるのでその上のクラスにした。これは結構便 利で、プロジェクターと組み合わせて使うと実体をそのまま投影で きる OHP として使える。カメラの角度を水平に向ければ室内の情 景を映し出すこともできる。

これからの会議室は、VTR の画面などを含め、あらゆる画像のプ レゼンテーションをこのプロジェクターで済ませてしまうことがで きる。今から十年以上前、芝浦にある東芝本社の大会議室を見学さ せてもらったことがある。百人前後は入れるかと思われる楕円形の 豪華な大テーブルを囲んだ作りで、壁面の大スクリーンにはまさに このようなマルチメデイアを投影できるようになっていた。とても 感激したものだが、これを自分のところでできるようになるまでに 十年以上の歳月を必要としたことになる。

実際に使ってみると、色々と問題点はある。電源ケーブルはまあ 良いとして、デイスプレイの延長ケーブル(本来のデイスプレイに も表示したいとすると、プロジェクターからコンピュータ本体へ戻 りを含めて2本要る)、その他 VP 用のケーブルなど、何本もの ケーブルが床の上をはいまわるので、足にひっかけやすい。

本来、会議室としてはそのようなことも想定して設計しておかね ばならないことが今になってわかった。元々手術室だった場所なの で、床から電源をとれるようにはなっていたのだが、位置が今度の 実情とまったく合わない。 液晶プロジェクターの明るさもちょっと低めで、室内の照明はス クリーンに近い部分だけでも落とさないと見ずらいが、これは財布 との相談だから仕方がない。

以前の RGB 三管式のデカイやつだと、RGB の調整などが結構微 妙で、据えつけにしておかないと、ちょっと設置位置がずれたりす るだけで調整が大変だと聞いたことがある。液晶式ではまったくこ んな心配はない。位置がずれても単にフォーカスを調整してやるだ けだし、装置もコンパクトで軽い。 液晶プロジェクター、VP ともにズーム機能があり、これがなか なか快適である。液晶プロジェクターの方は手元のリモコンでズー ムさせた上に上下左右に画面を移動できる。

VP の方はズームだけで画面移動はできないので、手元の原稿を 移動させなければならない(VP の場合は液晶プロジェクター側で ズームすると画質が落ちる)。しかし、かなり拡大できるので虫眼 鏡を必要とするような細かい文字でも、遠方から十分見えるほどの 大きさにスクリーン上に表示できる。表示色にちょっと不満もある が、フォーカスも結構シャープな方ではないかと思う。 これらは、今後の会議室に必須アイテムであろう。

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