2001.01 そして MacOS X(Public Beta)日本語版リリース

わーくすてーしょんのあるくらし (37)

2001-01大橋克洋

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MacOS X(Public Beta)がようやく9月にリリースされましたが、 日本でのリリースはされなくてガッカリされた方も多いと思います 。先月号でのレポートのように、米国版(パリで発表されたので「パ リ版」という呼び方もあるようです)でもとりあえず日本語の読み書 きはできます。しかし約一ヵ月後に日本でもリリースとなり、誰で も手に入れられるようになりました。

このリリースをめぐって、Windows の時ほどの騒ぎではありませ んが知る人ぞ知るかなりのフィーバーがありました。今月はそのあ たりのことをネタにしてみたいと思います。

○ 日本語版をいち早く

MacOS X の ML(mailing list)は、その話で盛り上がりました。リ リースは10月21日で Web 上の AppleStore から購入できますが 、今回は何と新宿のデパート高島屋で2日間のみ限定販売もするそ うです。 月に一回、私のところのセミナールームで NeXT ユーザ会が開催 されます。NeXT が Apple に吸収合併となるに伴い、名前はそのま まで内容は MacOS ユーザ会へと移行しました(セミナールームとい うのは、分娩の取り扱いをやめるとともに、分娩室と手術室をブチ 抜いて40名位入るセミナールームを作り、インターネット・リー チャブルでパソコン接続プロジェクターなどを備えた貸会議室とし て解放しています)。

おそらくこの位のタイミングで日本語版がリリースされるだろう と先月のうちに当たりをつけ、今月の例会の日取りを決めたのです が、まさにズバリ的中です。当日は、ユーザ会のメンバーが高島屋 に並んで OS X を手にいれ、夕方からの月例会でインストール大会 をやろうということで盛り上がりました。

Apple 社は自社の製品を過小評価していたのか、販売手順の不手 際で数千人の長蛇の列ができ、2時間近く待ってようやく手に入れ た人、本日は品切れと言われあきらめて帰ったらその後でまた販売 をはじめ、後から来た人は手に入れられるなどという不公平があり 、ユーザにとって喜んでよいのか悲しんでよいのか。 当日夕方行った人は30分で手に入り、2日目午前中には10人し か並んでいかかったそうです。「大橋先生の分も買ってきますから ね」というメールを頂いたのですが、初日はそのような混乱で結局 一人一枚が精一杯のようでした。

私は Web を利用して AppleStore からオーダーしました。朝は混 雑のためか Web が落ちていたようですが、午後アクセスしたところ 何なくオーダーできました(ML を見ていると、一昨日あたりから「 届きました」という方があるのですが、私のところへはもう7日に なるのに届きません。大分首も長くなってしまいました)。

○ 当日のユーザ会

当日午後7時には、苦労して手に入れた OS X public beta を手に手にメンバーが集まりました。このようなホットなネタが ある時は集まりもよいようです。 本日リリースされたホカホカの MacOS X をプロジェクター で投影しながら、意見を交わしました。

前述のように、すでに先月手に入れていた米国でリリースされた ものでもほとんど問題なく日本語が使えていたので、明らかに変わ ったのはメニューが日本語で表示できる、日本語タイトルをつけた ファイルが削除できなかったのが削除できるようになった位で、見 た目には日本語版になってどこが変わったのか、よくわかりません (しかし後日、徐々に入る情報を聞いていると、米国で配布されたバ ージョンより上がっており、かなり良くなっているとのことです)。 私を含め PowerBookG3 を持参した人が多かったのですが、MacOS X にプロジェクターを接続した場合、パソコン画面と外部デイスプ レイすなわちプロジェクターの画面とが同じになる「ミラーリング 」機能が効かず、別々の画面としてしか表示できません。

これはプレゼンテーションでは不便な場合が多いです。あるアプ リケーションを操作していて、そこから別のウインドーが立ち上が る場合、プロジェクター側でなく手元のパソコン側の画面に出てし まうので、いちいちそれを隣のプロジェクター画面へマウスで引き ずっていかねばなりません(後日知った情報では、これはモニター設 定の画面で、2つのモニター画面の下端をそろえておけば大丈夫な のだそうです)。また文字入力なども手元の画面ではなくプロジェク ターの画面を見ながら入力しなければいけないので、細かい文字で は判読不能のこともあります。

Windows マシーンなら途中から外部デイスプレーを接続してもそ のまま表示できますが、Mac では立ち上げ時に外部デイスプレーを 認識する仕様なので、必ず一旦電源を落しプロジェクターを接続し てから電源を上げねばなりません。先日もあるところで講演をした のですが、この問題でプレゼンがスムースに行かず大分恥ずかしい 思いをしました。 ミラーリングについては旧来の MacOS では可能だったので、いず れ対応される可能性がありますが、途中からのデイスプレイ認識に 関してはどうなのでしょうね。何とか対応して欲しいのですが。

○ WINE の MacOS X への移植作業

WINE の MacOS X への移植も、米国版を手にして約4週間で7割方進 みました。外見上は9割方移植できたのですが、細部についてはま だまだきめ細かい対応をしたいと思っています。 普段の仕事は MacOS X Server 上の WINE で行っており、こちら の方は大変安定していて使い勝手も上々です。しかし MacOS X 版で はさらにモジュール化を進めるため、わざわざサラから書き直しロ ジック部分も新しくした部分が多いので、細かい部分をさらに磨き 上げる必要があります。なにせ OS がリリースされてまだ1ヵ月 のしかもベータ版とあって、データベースなど他のアプリケーショ ンとの連携には苦しまぎれの実装を行わねばならないなど、完全に 満足できるものではありません。

第3世代の WINE までは、汎用のパーツを使ってはいるもののや はり電子カルテ専用のアプリケーションがあったのですが、今度の 第4世代では電子カルテ専用アプリケーションさえもなくしてしま いました。WINE は道具箱と白い紙のセットのようなもので、まった く汎用の機能しか持ちません。ユーザがこれをベースに好みの機能を 追加して、自分なりのシステムを組み上げるような設計にしました。 前の世代までは紹介状作成やお絵描ツールなどをプラグインなど と呼ばれるユーザが自由に選んで組み込める部品として提供してき ましたが、今度は電子カルテ機能さえもプラグインにしてしまったの です。

ですから WINE は専用プラグインさえ作れば、経理システムでも 何にでも変身可能な柔軟性を持ちます。色々なメーカーのアンプ、 スピーカー、プレイヤーなどを自由に選んで好きなシステムが組み 立てられるように、自分の好きな電子カルテ・システムを作る基盤 を作ったわけです。まだ実験的な部分があり、部品間の接続部にこ なれていない部分もありますが、いずれここをなるべくシンプルな 規格にして、いろいろな人々と手をつなぎながら発展する方向へ持 っていきたいと思っています。

○ ソフトもハードもより美しく

そういう訳で機能的にはまだイマひとつなのですが、見た目は A qua環境の WINE はずっと美しく、毎日の診療がより楽しくなりそう で大いに期待しています。操作に対する追従速度が、現在使ってい る MacOS X Serverに比べるとややトロいのですが、これはベータ版 だから仕方のないところでしょう。その原因には、もうひとつCl assic と呼ばれる旧来の MacOS も動くようにしているための負荷 にも原因はありそうです。

旧来の Mac ユーザからの抵抗が強いため、当分このような二人三 脚で行くのでしょうが、Cocoa と呼ばれる新しいシステムの方がず っとパワフルで可能性や柔軟性に富んだシステムなので、いずれ全 てが Cocoa 環境へ移行する頃にはずっと快適な状況になるはずです (その前に CPU パワーの向上で問題は吸収されているはずですが)。 昨日、PowerMac G4 に接続した Studio display 上で動く MacOS X を心ゆくまで見る機会がありました。先月号にも書きましたが、 このデイスプレイは G4 Cube にぴったりのクリスタルな感じの美し いものです。しかし、パソコンショップで見た限りでは、美しいと 感じたのはデイスプレイ本体そのものであって、画面に感動したも のではありませんでした。

ところが、MacOS X の Aqua 環境の動く Studio display を見て感動してしまいました。これは従来のアナログ接続ではなく 、デジタル接続になっているためもあるのでしょうが、液晶自体も 大変きめ細かく、その画面の美しさは本当に感動ものです。また G 4の速さも素晴らしいです。私の G3 マシーンも来た時はその速さ からくる動作のスムースさに感動したものですが、G4 はさらにスム ースで流れるように操作できます。

G4 Cube はファッショナブルなデザインを売りにする店の デイスプレイとしてはまさにピッタリです。このような目的で カラフルで可愛い iMac を置いてきた店も多いようですが、 これからは G4 Cube がその一部を肩代りしてゆくのでしょう。 G4 Cube には電源部の接続が(輸送中に?)ゆるんでいるというト ラブルが多いようですが、しばらくすると落ち着くでしょう。 何とかMacOS X 正式リリースの来春には、G4 Cube と Studio di splayを診察室のデスク上に置きたいなあ、と思っています。

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