2005.07 ついにでた待望のスマートフォン

わーくすてーしょんのあるくらし (94)

2005-07 大橋克洋

7月23日(土)午後4時半の地震はちょっと大きかったですね。 私は竹芝桟橋近くにある富士通総研の立派なビル5Fでセミナーを終え、 帰る前に会場で立ち話をしているところでした。 話を終えてエレベータのところに行くとエレベータは停止しているとのこと、 前で待っていた人達と階段を探して降りて行く間も 周りは余震でギシギシと音がしていました。 なるほど、このビルは鉄骨作りだったんですね。

歩くのが好きな私は、 近くの浜松町を通り越して 三田線の芝公園駅まで歩いて行くことにしました。 これだと家まで一本で帰れるからです。 地下鉄芝公園の改札を入ろうとすると、 「地震のためダイヤが大幅に乱れています」とのアナウンス。 とりあえず動いているんだな、 と誰でも思いますよね。 ホームにはまだそう大勢の人数は居ませんでしたが、 待てど暮らせど電車は来ません。 「点検の終わったところから順次動きだします」のアナウンスに変わりましたが、 やはり来ません。

もう30分も過ぎているので、 「ええい、それじゃ家まで歩くか」ということで地上に出て歩いて帰りました。 6Km ほどの行程を丁度1時間歩いて帰宅しました。 当日はかなりの蒸し暑さで、 スーツ姿にパソコンの入った重いスーツケースを下げて夏場を歩いたのは初めてでした。 途中、三田の街は歩行者天国で何組かのブラスバンドが出て、 ぎっしりの人ごみを縫って歩く状況です。 道路沿いの商店では店の前に臨時の屋台を設け、 都医の理事仲間と時々訪れる中国飯店では 名物の北京ダックを売っていました。 土産に買って帰りたかったのですがちょっと無理でした。

びっしょり汗をかいて帰宅した時の気持ちは、 充実感があってなかなかよいものです。Tシャツ一枚で ビールの美味しいこと。 この夏も、毎日の通勤でスーツの下にびっしょり汗をかくことが とても健康に良いようで、体調は夏バテなし絶好調です。

私が独学で研究しつつある「歩術」も、 時々このような1時間以上の実践の場が必要になります。 以前とはちょっと歩き方のコツも変わってきました。 これについては、またの機会に。

○ ついにでた待望のスマートフォン

「PDA に電話機能を載せて欲しい!」と叫んできてから何年になるでしょうか。 ようやく日本でも、7月1日に NTT DoCoMo からモトローラ製の M1000 というスマートフォン(携帯電話に PDA 機能をもたせたもの)が発売になりました。 私の住む武蔵小山商店街にも携帯の店が沢山ありますが、 発売日昼頃に早速 DoCoMo の店へ飛び込みました。 運良く「1台だけ置いてあります」とのことで迷わずゲット。 価格は5万円弱でした。

結構厚みがありますが、 アンテナのでっぱりはありませんし思ったより重量感もないので(約168gr)、 ズボンのポケットに入れておくには抵抗ありません。 ワイシャツの胸ポケットでもいけそうですが、 うつむいた時に落とす危険は多分にありそうです。

○ ネットワーク

M1000 は電話回線の他に 無線 LAN も使えるのが嬉しいです。 急いで購入したのと発売日とあって販売店もまだ慣れなかったためもあり、 電話回線でのネットワーク接続は契約しないとできないようです。 とりあえず無線 LAN でつないでみることにします。 無線 LAN の設定は通常のパソコンや PDA などと同様の方法で、 難なくつながりました。

、、、と書いたのですが、訂正です。電話回線でも接続できました。 どこかプロバイダー契約がしてあれば、電話回線で接続できます。 私の場合 IIJ4U を使っているので そこへ接続設定したのですが、パカですねえ、 電話番号がいつも使っている AirH のものだったためつながらなかったのでした。 携帯電話用の電話番号へ替えたら問題なくつながりました。 ただ、これですと料金がかなりかかってしまうので、 パケット契約をした方が良さそうです。

M1000 は iモードへは対応していませんが、 PC と同様に通常の Web や Mail が使えますので問題ありません。 さて Web や Mail の機能やいかに?

○ Web ブラウザーの印象

Web browser は Opera7.5 (スマートフォン版)が載っており、 画面は90度倒して 横長設定にもできます。 CLIE UX50 の場合はこのレイアウトが使いやすかったのですが、 M1000 では縦長の方が使いやすいですね。 ボタンなどコントローラの位置の関係でしょう。 CLIE の癖でつい、背面のローラでスクロールさせようとしてしまいますが、 M1000 にローラはありません。 スタイラス(画面操作の専用ペンのようなもの)で画面のスクロールバーを 操作しなければなりません。

このあたりは絶対的に CLIE は優れていましたね。さて Web を開いての第一印象ですが、 「画面の色や解像度が落ちるなあ、画面のにじみが気になる」。 CLIE の美しい画面に慣れてしまった人間にとってはこんな印象です。 もうひとつ、同じ無線 LAN へ接続しても CLIE は快適な速度で画面を開けますが、 M1000 ではかなり速度が落ちます。 やはり「SONY さん、CLIE に携帯電話を載せて!」のお願いは 続けることにしましょう。

やはりモトローラ製ということなのでしょう、 現在のわが国の技術ならもう少し奇麗な画面のはずです (しかし、必要な機能を最初からしっかり備えているところは、 さすがに米国製とも言えます)。 M1000 に続いておそらく年内に、 カシオなど国産のスマートフォンが出てきそうで、 これにはかなり期待できそうです。

○ E-mail

POP の他に IMAP にも対応しているところは優れものです。 IMAP ですとメールの整理をサーバ側で行うので、 私のように色々な端末を使ってメールを 読み書きする人間にとってはとても有り難いです。 既読メールはしばらくしてからアクセスしてみると 見えなくなるようです。 サーバの方で分類されてるはずのフォルダーも見えません (ということは IMAP のご利益は余りない?)、 現在受け取ったメールだけがリストアップされています。

携帯ですのでこれはこれで良いかも知れませんね。 携帯でメールを読み書きするという 最低限の利用法において、とりあえず不満はありません。 しかし、まだ十分使い込んでいないので、 他に設定方法があるのかも知れません。 間違っていたら後日訂正することにして、、、

○ 文字入力インタフェース

この端末にはキーボードやテンキーはありません。 メールに限りませんが文字入力は、 すべて画面をスタイラスでタップすることにより行います。 画面下の小さなキーボードのアイコンを スタイラスでタップ(マウスのクリックと同じ)すると、 文字入力用インタフェースが現れます。 入力インタフェースが現れるにはちょっと待たされるので、 慣れないうちはミスったかと思い何度もタップしてしまいました。 これはもう少しスピードアップして欲しいところですね。

入力インタフェースは、 仮想キーボードからスタイラスで文字キーをタップする方法の他に、 手書文字認識などいくつかの方法を選べます。 CLIE の場合は主としてGraffiti と呼ばれる方法で 手書きしたアフファベットを日本語変換する方法を愛用し 日本語の手書入力は余り使わなかったのですが、 M1000 での文字キーのタップはちょっと辛いこともあるので、 手書文字入力の利用度は上がりそうです。

スタイラスを使う入力としては 「やはりPalmOS の Graffiti が使いやすかったなあ」と 思うのですが、その代わり携帯電話で常識となった手法として、 過去の変換文字を候補として表示してくれるのは有り難いです。 仮想キーボードでのアルファベット入力の場合、 かなりキーが小さいのでミスタッチが起こりやすく、 スピーディーな文字入力は困難と言えるでしょう。

○ 通話機能

M1000 は折りたたみタイプのサイズながら 折りたたみではないので、 マイクとスピーカの距離は 耳から口元までの距離よりずっと短くなっています。 これについて ちょっと懸念がないでもなかったのですが、 マイクやスピーカーの感度が良いので問題ないようです。 ただ騒がしいところでの会話の場合、 こちらの声が相手に伝わりにくいようですが、 そんな場合は耳に手をあてがうように マイクに手をあてがってやれば問題ないようです。

テンキーがないので 電話番号のダイアリングは画面のテンキーをタップします。 しかし通常の携帯と同様、アドレス帳や着信・発信履歴など完備しているので、 直接数字キーをタップして電話をかけることは少ないと思います。 ボイスレコーダー機能を持ちますが、 マニュアルをひっくり返してみても通話相手の声は録音できないようです。 折角の機能なのにちょっと不便かなと。

○ Bluetooth

M1000 は Bluetooth にも対応しています。 内蔵カメラで撮った写真を Mac へ転送してみました。 まず Bluetooth が指定の Mac を認識するよう M1000 側で設定します。 おお、ちゃんと Mac のマシーン名を認識して名前がでてきました。 画像ツールで画像を指定しておいて、メニューから「送信」を選択。 Mac 側でアラートパネルが立ち上がり、 送信を受け入れるかどうか聞いてきましたので、 許可すると転送が終了しました。 さて、転送されたデータはどこに入っているのかな? ここで MacOSX の便利な spotlight を使ってみましょう。 転送されたはずの JPEG ファイル名で検索すると、 なるほどホームの下の書類フォルダーに入っていました。

今度は、逆に Mac から M1000 へ画像転送してみましょう。 Mac の Bluetooth コントローラを、私はメニューバーへ登録してあります。 ここをクリックしてプルダウンしたメニューから「ファイルを転送...」を選ぶと、 どのファイルを送るか聞いてくるので、 ファイルを指定すれば M1000 へ送られました。 さて M1000 へ送られたファイルはどこに入っているんでしょう。 通常の画像フォルダーには入っていません。はて? こちらには spotlight がないので、マニュアルをひっくり返してみました。 なるほど、Mail として送られるんですね。 Mail ツールの中の Bluetooth を選択すると、 添付データとして存在しました。それを画像フォルダーへ保存すれば、 画像として扱えるようになります。

デジカメ写真のやりとりなどをケーブルレスで行えるので、 これは便利ですねえ。アドレス帳やスケジュールなども PC と同期できるようですが、 私はどちらも自作の Web Application を使っているので、 これに Bluetooth を使うことはありません。 コードレスのキーボードやマウスを M1000 へ接続して使えると便利なのですが、 どうやら対応してなさそうです。

○ その他

カメラは左側面のシャッターボタンを押すと非常に手ぶれしやすく、 液晶画面の中のシャッターボタンをタップした方が手ぶれが少ないようです。 背面カメラは131万画素ということですが、 画像もかなり甘いように思います。 Talby のカメラの方が美しい画像を撮れました。 テレビ電話用に自分の顔を写す正面カメラもありますが、 こちらは31万画素です。

Talby と比較すると、 薄さやデザインの違いは当然ですが、 Talby の方が画面が圧倒的に明るく 文字も大きくて明快です。 M1000 の何となく にじんだようなぼけたような画面は、 米国の安い PC 類の印象につながりますね。 こんなことから 最近の日本製品の高い品質を思い知らされた次第です。

携帯によくある十時方向へ操作するボタンが画面の下方にあります。 これはとても片手操作しにくい位置です。 うっかりすると本体を取り落としそうになります。 このような形状の機器では、 やはり CLIE のようなローラー式ボタンが必須なのかも知れません。 もしかして、あれは SONY が特許で独占しているのかしら、 万一そうならオープンにして欲しいものですね。

○ M1000 とりあえずの総合評価

とまあ、こんな第一印象です。 私のトータルな評価として、 現状では期待に添った満足できるスマートフォンに仕上がっています。 不満は画像の美しさや無線LANの接続速度が CLIE 並みでないこと位ですが、 これは我慢できる範囲です。 さらに高望みをする方は今年の末位まで 純国産スマートフォンの登場を待つのも一つの選択かと、、、

ああ、そうそう、実際に駅のホームで乗り換え案内を見たいと思った時、 通常の携帯では片手でテンキー操作だけですが、 スマートフォンですとスタイラスを使うため両手が必要になることに気付きました。 このあたりは PDA 機能を望む以上、妥協するより仕方ないのかも知れません。

○ M1000 とりあえず改善を望みたい点

そうは言え、しばらく使ってみるといくつか是非改善して欲しい点も見えてきました。

    • sleep からの復帰について

      • 一定時間操作しないと自動的に sleep に入って 液晶のバックライトが消え、 画面のタップなどによって sleep から目覚める仕様です。 これが結構「困ったチャン」です。 先日もポケットに入れている間に、 携帯ストラップで押されて sleep から目覚め、 勝手に電話をかけ始めてしまい オットットということになりました。 画面は側面スイッチでロックできます。 つまり「使わないときはロックしろ」ということなのですね。

      • しかし、ちょいちょい不便なことがあります。 携帯電話を腕時計代わりにして、もう何年にもなります。 ちょっと時刻を見たいとき、 通常の携帯電話ならポケットから出して時刻を確認できます。 M1000ではロック解除操作が必要で、 これが結構うざったいのです。

      • ちなみに CLIE でどうしていたかと考えてみると、 自動的に sleep になった後、 時刻を見たい時は 下端のアプリケーション起動スイッチを押していました。 このような仕様に変えて欲しいですね。

    • 筐体の頑丈さについて

      • 案の定、胸ポケットに入れ うつむいた拍子に2度ほど 落としてしまいました。 その時は気がつかなかったのですが、 後で「音声の拡大/縮小」ボタンが飛び出しているのに気がつきました。 引っ込めようとしても、 今度は頑として引っ込みません。 かなり苦労してようやく正常な位置に引っ込めましたが、 ボタン内側についていた微小な爪をひとつ折ってしまいました。 まあ、支障はなさそうですが。

      • 「携帯は落すのが当たり前」と考えるべきで、 今まで何度も床へ落としたことがありますが、 歴代の携帯で破損や故障したものはひとつもありませんでした。 画面の褪せた色合いやにじみとともに、 これも機器を安っぽく見せてしまいますね。 まあ私の場合、今回のものは試作機と割り切っていますが、 今後は国産の機器並みになって欲しいものです。