2009.06 Seagaia meeting in OKINAWA あれこれ

わーくすてーしょんのあるくらし ( 196 ) 

2006-6 大橋克洋

先月訪れた沖縄ムーンビーチ・ホテルのテラス 

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先月沖縄で開催された Seagaia meeting の エピソード、あれこれ綴ってみましょう。

○ マシーンにおフダを貼るのは常識?

呑み会でのヨタ話です。マシーン・トラブルの話から、 誰かが「マシーンにおフダを貼っておくと良い」と言いました。 「それって誰でもやること?」 他のメンバーから「そりゃーあ 常識だろ」「そうだ、そうだ」??。 聞いていたサイバーの加藤さん「いや、いや、いや、、これは新しいビジネス・モデルかも」 「バグ退散など、厄よけのおフダを売れば商売になるかも」。 大いに盛り上がりました。

なんてことを話した翌日、皆でそば屋に昼飯を食いに行った帰り、 こんなものを見つけました。「無事故」と読み替えるのだそうな。そういうことで、お土産にペアの小さな「シーサー」を買って帰り、 厄よけに iMac の画面のてっぺん両側に両面テープで貼付けました。 屋根の両端で睨むシーサーのように。 さてさて、ご利益はいかに。

 

○ うつ の話

高橋キワム先生から、 短期間ながら深刻なウツ状態の兆しを経験した話 がありました。サイバーの加藤さんも真剣な面持ちで聞き入っていました。 この Web サイトにもチラッと書きましたが、 私も後から考えれば「あれは軽いウツ状態だったんだ」と思い当たることがありました。

それは丁度、還暦、60歳の頃です。 明らかに年齢的、肉体的変化によるもので、ホルモン環境の変化もあるでしょうが、 それに伴って脳循環の低下も関係するのだろうと思います。 というのは、その後、一念発起して「筋トレ・ダイエット」により 身体を絞ることにより、いつの間にか解消してしまいましたから、、

今まで「三度のメシより好き」「ストレス解消に一番」 だったプログラミングが、とても億劫になってしまったのです。 まさに感覚としては 「頭の中にクモの巣が張っている」「頭の中で水飴をこねる」状態でした。 複雑なことを考えるのが、もの凄く億劫になってしまったのです。 おそらくメタボなどによる脳循環低下が、 それを惹起していたのでしょう。身体を絞り運動能力を高めることにより、 まったく改善されました。しかし完全復帰には3、4年ほどかかったでしょうか。

ということで「還暦前後に一旦ウツ状態を経験したり、 プログラミングなどの能力低下がある。そこを越えられるかどうかが勝負。 そこさえ乗り越えられれば、次のフェーズに移ることができる」と、 自分の体験からのアドバイスでした。

○ プログラミングに必要な思考回路は

これも Seagaia meeting の酒の宴での話。 久々の電子カルテ NOA のプレゼンが、結構受けたようです。 「還暦すぎたプログラマー」をとっくにクリア、 「古稀を過ぎたプログラマー」を目指していると言うと、話は盛り上がりました。

で、私の方から話題を振ったのですが 「黒人はプログラミングに向いていないのかと思っていたら とんでもない、 NeXT の頃にジェイソンという凄いプログラマーを知った」 「しかし、凄いソフトウエアを書いた女性のプログラマーを見たことがない」 「どうしてなんだろう」。 女性プログラマーは居るようですが 「凄いソフトを書いた女性プログラマー」の名は、 これだけソフトに長けている人が集まっても誰も挙げられません。 やはり、居ないんですかね。そこで、大きな疑問です。 先月のコラムで、頭の思考回路の違いの話を書きました。 では女性と男性の思考回路は どこがどう違うことによって、 女性に凄いプログラマーが居ないんでしょう。

その回答とまではいきませんが、 ふん、ふん、とうなづける回答が得られました 「そういや、女性の作曲家は居るけど、 バッハやショパン、ベートーベンのような 偉大な交響楽の作曲家は居ないよね」。 また「太古の昔から、男性は狩りに出るので地理的感覚が育ったが、 女性は家を守るので余り育たない」という説も出ました。しかし、 今時この説はあてになりません。女性でも地理的感覚に優れた人は居ると思います。

ははーん、さて、どこがどう違うんだろ。 別に男性が女性より優れているとはまったく思わないのですが、 思考回路のどこがどう違うことによって、このような違いが生まれるのか、 とても不思議です。

○ 今月の iPhone

その沖縄旅行での話です。 那覇空港へ降り立ち、ムーンビーチ・ホテルまでタクシーで行こうかと 同行の3人で空港の外に出ると、バスを待っている他のメンバーが居ました。 バスは数分で来るとのことで、路線バスに変更。 ところが、ところが、これが結構なもので、ホテルまで2時間近くかかったのです。

日も落ち周囲が暗くなる中 「懐中電灯持ってる?」「バスを降りたら真っ暗かも」 と不安になったようです。幸いホテルは飲食店なども多いところで、 懐中電灯のお世話にならずにすみました。期せずして小塚先生は「どういう訳か、 懐中電灯持ってるんだよなあ、、」そして、たまたま私の肩のトート・バッグにも、 どういうわけかファスナーのツマミがわりに ミニ懐中電灯がぶらさがっていたのでした。

で、本題の iPhone 話です。行けども行けどもスピードのあがらない一般道路、 「今どのあたりを走っているんだろ」という時、便利なのが iPhone の Google maps 。GPS で取得した自分の位置が地図の中にプロットされます。 時々 iPhone をシャツのポケットから取り出しては「ははーん、このあたりを走っているのか。 あと40分はかかるな」とか知ることができます。

初めてこの武器の威力を知ったのは、2月の伊豆旅行の時でした。 伊豆の山中をバスで走っていて、シャツのポケットに入るこんなちっぽけなもので、 ちゃんと自分の位置がわかるのは、なかなかの感激ものでした。 都内の「歩き」でも これを使って出発点から目的地まで、 私有地のような狭い道を縫うように直線距離で歩くことができます。

○ 今月ダウンロードしたアプリから

iPhone には読書アプリが幾つかあります。「i 文庫」とか「SkyBook」 などをダウンロードしてみました。両方とも似たようなものですが、 SkyBook の黄ばんで古びた本の風情はなかなか良いです。 インタフェースはなかなか快適なので 今後は特に文庫本のようなものは、 電子ブックで読まれるようになるのではないかと思っています。 いずれ出現しそうな雰囲気の Apple 社のタブレット PC も、 読書マシーンとして絶好のものとなるでしょう。 まさにアラン・ケイの提唱した DynaBook の実現ですね。

惜しむらくは著作権の切れた本ばかりのようです。 料金を払ってでも良いから、私の大好きな山本周五郎などの作品を 電子ブックで読みたいものです。 電子マニュアル類も検索機能を充実させながら、こんな形になるんでしょうね。

次に ダウンロードしてみたのは UTAMO というもの。 これはカラオケです。3000曲が使えるということですが、 まだ私の持ち歌には無いものもありますねえ。 しかし一人ひっそり練習するには良さそうです。 まだまだ iPhone はアイデア次第、 無限の可能性を感じます。 何といっても Apple 関連アプリは、センスが良いので心地よい。

○ 待ってました! Mac 版 Google Chrome

Google Chrome は当初 Windows 版だけしかリリースされておらず、 それを使ってみたいばかりに Windows を立ち上げてみることもありました。 最近 Mac 版の開発版をダウンロードできることを知り、 ちょっと使ってみました(あくまでも「ちょっとだけよ!」ということで Chrome でなく Chromium という名前がついていました)。

いかにも「開発中」ということは、 バージョンがめまぐるしい勢いで(場合によっては日に何度も) 変わってくることです。とりあえず「こんなものか」と 満足して、その後使うことも余りなかったのですが、 この度 Chromium ではなく、 Mac 版 Chrome の開発者プレビュー版がリリースされ、早速 ダウンロード しました。 見たところ大きく変わるところはなく、 バージョン・ナンバーも前回ダウンロードした Chromium に近いものでした。

「わーくすてーしょんのあるくらし」を開いてみました。 Safari と変わらずバッチリ見えます。Windows IE のように 写真が崩れることもありません。電子カルテ NOA はどうでしょう。おー、こちらもバッチリのようです。 ちょっと今度、仕事で使ってみますかね。 Safari では、数ヶ月前のアップデートからだと思いますが、 このコラムを書いている時、画面を再読み込みすると、 以前は右フレームの本文も再表示されていたのですが、 右フレームにトップページが 表示されてしまうようになりました。 そこから、再度「わーくすてーしょんのあるくらし」 を開いて、さらに今月のページを開かねばなりません。 これが不便で仕方ないのですが Chrome もこれは同じです。

アクセスしたブラウザーの種類を見る javascript を作って Chrome に刻印されたものをのぞいてみると「Mozilla/5.0 (Macintosh; U; Intel Mac OS X 10_5_7; en-US) AppleWebKit/531.0 (KHTML, like Gecko) Chrome/3.0.182 Safari/531.0」と表示されます。 なるほど、Chrome も Safari と同じ Apple WebKit エンジンを使っているわけですね。

・・・

Chromium というのは、 Google のオープン・ソースのブラウザ という位置づけであることがわかりました。 そして Chrome は、これをカスタムビルドしたもの という位置づけなのだそうです。 ほう、Darwin と MacOSX との関係みたいなものか、、 つまり Chromium ではソースを読むことができるんですね。 Visual C++ のソースなんだそうで、私としては読む気しないですけど。 Win な人が作ったものなのでしょう、、 その割にはさすが Google、許せる GUI です。

その翌日、さらに正しい認識を得ました。Chromium というのは Chromium Authors が作っているオープンソース・ブラウザで、 その Chromium がカスタマイズしてリリースしているのが Google Chrome なのだそうです。つまり Chromium は Google からの提供ではないのだそうです。 へえー、知らない人が多そうだなあ、、

ただし Chromium Authors の中の人は Google の人だそうで、つまり Chromium は企業の産物ではなく、 あくまでプライベートな位置づけ と理解すれば良いんですかね。 「こういうフレキシブルなところが Google」と感心!

○ WWDC 2009の話題

今年も楽しみのひとつ Apple の開発者会議 WWDC が始まりました。 「もしかして、」と期待していた Steve Jobs の登場はなりませんでしたが、 MacBook、Snow Leopard、iPhone 3GS と、 それぞれ話題には事欠きませんでした。 私がもっとも嬉しかったことについて 触れてみたいと思います。

MacBook に関しては「バッテリー持続時間が延びた」ことです。 最長7時間ということで、これだけでもつい手がでてしまいそうですが、 まだ購入して1年をようやく越えたばかりの MacBook Air が可哀想なので、パスすることにしましょう。 そうそう、ネーミングも、単なる MacBook は ポリカーボネートのマシーンだけで、アルミ・ボディーはすべて MacBook Pro なんですね(あれ、これって前からでしたっけ、)。

次に新しい OS である Snow Leopard 今秋リリースになりそうで、これも楽しみ。

そして、やはり最大の目玉は iPhone。 iPhone OS 3.0 になって100もの機能が新しくなるようですが、 現在の iPhone へも今月半ばから ダウンロードできるようになるのはとても嬉しい。 さらに今月末に日本で発売される iPhone 3GS 。 カメラの解像度が上がり動画もサポート。 フォーカスを当てたいところを指でタップ。 バッテリー持続時間の延長(従来の携帯ほどではないでしょうが)。 実行速度も2倍だそうです(現在の iPhone でも「遅い」と思ったことはないのですが)。

iPhone に最も欲しかった機能「テザリング」つまり、 iPhone を外付けモデムにして 出先でノートをインターネット接続できる機能ですが、 よく読むと SoftBank ではまだサポートされないようです。 以前使っていた京セラの携帯電話で非常に便利だったので、 期待していました。 うーん、これは非常に残念。

いずれにせよ、iPhone 3GS は手に入れることになると思いますが、 SoftBank のショップには良い印象がありませんので、 他の携帯ショップで購入することになると思います。 ショップに日参して、はぐらかされた苦い経験がありますので、 今回は潤沢にモノが行き渡ってからになるでしょう。 従来の iPhone も捨ててしまうには惜しいので、 家族に進呈することになりますかな。従来の電話番号を残したまま、 そのような移行はちょっと面倒ではありますが、可能なのでしょうね。

今回のプレゼン、 Apple 社のスタッフで手分けし 健気に頑張っていましたが、やはり Jobs の居ないプレゼンは 「クリープを入れないコーヒーなんて・・」。寂しいですね。

○ Steve Jobs CEO 肝移植

気になっていた Jobs の状況が少しわかりました。 2ヶ月前に肝移植を受けたのだそうです。おそらく 膵臓がんの肝転移ではないか、との報道でした。 経過は良好ということですが、心配ですね。

まだまだ、クリエイティブなことをやって欲しい、、

前回の膵臓の時もそうでしたが、 2度目の困難を乗り越え、 彼の人生観や考え方は これでまた少し変わるのでしょう。 世の中に良い成果を送り出して欲しいと思います。 彼のポリシーをしっかりと Apple 社に根付かせて欲しいと思います。 まあ、現在、すでにそうなのだとは思いますが、 Jobs の居ないプレゼンを見ていると、 やはり寂しいなと、、

○ 続いた大物スターの逝去

こんなことを Steve Jobs の後に書くのは何なのですが、と言うか Jobs には縁起でもない、これからももっと長生きして欲しいのですが、 挿入位置としてはこの辺かな、ということで、

米国時間24日、女優ファラ・フォーセットが末期がんの中で、 長年つかず離れずで過ごし彼女の病床に付き添った 男優ライアン・オニールからの求婚を ついに受け入れたというニュースが流れました。明けて25日、3年前からの直腸がんの転移で、 ついに逝去のニュース。

ファラ・フォーセットは チャーリーズ・エンジェルなどで人気のあった女優さんで、 私は特にファンということはないのですが、 世の中に余り知られないが 私の好きな映画「愛妻が遺した妻」で とても印象深い女優さんでした。

西部開拓時代、 やっとたどり着いた荒野を夫と二人で開墾する妻の話。 演ずるはリー・トンプソン。 バック・トゥー・ザ・フューチャー主人公の彼女役で とても可愛かった印象があります。 夫の農夫は、あのロボコップ役の俳優。 まだ幼い子供たちを何人も抱えたまま、 医師から癌で余命いくばくもないことを宣言されます。 彼女は独りで馬車をあやつり、 夫や子供たちのために自分の後釜を探しに旅に出るのです。

開拓時代の西部ということで、女性は貴重な存在。 なかなか夫の妻になってくれそうな人はみつかりません。 くたびれきって入った場違いな酒場。「この町に女性は?」と 聴くと教えてもらったところは、娼婦達の住む地域。 「自分の夫の妻になって欲しい」というと、 当然のことながら 呆れられるだけで相手にされません。 何人目かの無愛想な娼婦が一言のもと、ぶっきらぼーに「いいわよ」。

これがファラ・フォーセットで、 最初は無愛想な娼婦そのものだったのが、 生活の引き継ぎなどを受けつつ一緒に暮らすうち、 戦友のような友情に結ばれ、前妻の最後を看取り、 夫とも仲良く 子供たちを立派に育て上げるという物語でした。

そんな印象深いファラ・フォーセットでしたが、 同じ日にマイケル・ジャクソンの急死ということで、 彼女のニュースは吹っ飛んでしまいました。 おそらく米国でもそうだったことでしょう。 ちょっと、気の毒に思ったのでした。

○ 思いがけず iPhone 3GS 発売初日にゲット!

本日は iPhone 3GS 発売の26日。 午前の診療を終え、都庁の委員会へ向かう道すがら、 武蔵小山商店街の SoftBank や、その他の携帯ショップを横目で見ると、 お客は閑散としています。昨年の 3G 発売の日もそうでした。 ほんの数台しか入荷せず、開店と同時に完売して昼には閑散。 今回もそんなことかなあ、などと思いながら出勤しました。

昨年、3G 発売の時は発売数日前から SoftBank ショップに日参したのに 「予約も受け付けず」、発売の日は「とっくに売り切れました」。 原宿の SoftBank 旗艦ショップでも、冷たい扱い。 それから約半月、何人かから iPhone 入手の報を受け 「第2弾のロットが入荷したかな」と、SoftBank ショップへ行くと 「今朝入荷しましたが、もう売切れました」。「発売前から日参したのに、 予約はとらないの?」と聞くと「取りません」と木で鼻をくくった返事。 「クッソー」と思いながら、ふと、その数件先の普通の携帯ショップに寄り 「iPhone ないよね」と尋ねると「ありますよ」。iPhone 山積み状態。 速攻で iPhone をゲット、というのが昨年の話でした。

そんな経緯で、意地でも SoftBank ショップでは買わないぞ、と。 都庁の帰り、くだんの携帯ショップに入って「iPhone 3GS もう、ないよね」 「32GB の黒はありますよ」。おー、速攻で「それ、ください」。

「iPhone の SIM カードはその機械を認識しまっており、 3GS に以前の電話番号を使うようにすると、今まで持っていた 3G は携帯機能を失い、 単なる iPod になってしまう」と聞いていたのですが、 iPhone 同士なら SIM カードの差し替えができるそうです。 新しい iPhone 3GS を今までの電話番号で使うため、 新旧の iPhone で SIM カードをスワップすることにしました。 古い方は SoftBank 携帯を使っている家内か末娘に進呈するつもりです。

帰宅すると早速ゲットした iPhone 3GS の設定です。 古い方のデータをバックアップするだけですので、 ちょっと時間はかかりますが操作は簡単です。 まだ、使い込んでいませんが、コンパスは面白いですね。 「ほー、なるほど」今度は Google maps の中でもコンパス機能が働き、 自分の向かう方向を示してくれます。 以前,地下鉄から地上に出た所で Google maps で地図はわかるものの、 自分の向かう方向がどちらかわからないことがありました。 こんな時は重宝しますね。

次はカメラです。画面の中を指でタップしたところにフォーカスを合わせる機能 「ふーん、なるほどね。こんな感じか」。そして動画、これは結構遊べそうです。

あと、大した機能ではないが「さすがアップル。マイクロソフトは絶対こんなところに 凝らないよね」というのが、iPhone のガラス面。 一見 iPhone 3G とまったく変わらないのですが、指の油がガラス面にほとんど残りません。 奇麗です。うーむ、私自身は画面に指紋が付こうが一向に気にしない人ですが、 こんな所が意外な快適性につながるんだよなあ、、

○ 今月の脳トレ

動画プレゼンが好評で多いに気をよくした Web 版 NOA ですが、これに背中を押され、 以前から迷っていたオープン・ソース化を 本格的に考えてみる気になりました。

踏み切れなかった理由はいくつかあります 「世の中に役立ててもらおうとソースを公表しても、 美味しいところだけパクられて商売に使われるのはいやだなあ」 とか「NeXus(NeXT ユーザ会)の頃のように、 パワフルでノリのある本当のハッカー達が 集まって盛り上がることは、もうないんだろうなあ」とか。 「でも、まあ、いっか。これで商売しようなんて色気は まったく無くなったし」「オープン・ソースにしておけば、 トラが居なくなっても皮が残るし」。

そんな自問自答の結果、 そのような方向性でソースに手を入れ始めました。 無理矢理、現場投入して1年、 自分にとって 「今までで最も使いやすい電子カルテ」として安定してきましたが、 いかんせん手抜きのところも多いのです。 「無理矢理 現場投入」の名残り 「とりあえず自分だけ使えればいいか」ということで、 設定に「手打ち 平文 決め打ち」「暗黙の了解」的なところもあり、 現状のままで他人様にお渡ししても 簡単には自分用に設定できないでしょう。

なるべくシンプルでわかり易い GUI をつけ、 可能な範囲でヘルプを充実させる必要があります (極力ヘルプなし、直感で操作できるよう 作っているつもりではあるのですが)。 動画プレゼンを見て「是非使いたい」という リクエストも2、3頂いているので、 作業を進めはじめたところです。 もう1、2ヶ月のうちには 「とりあえずのバージョン」を何とか リリースできるようにしたいと考えています。

あり得ることかどうかわかりませんが、 これを「どこかの企業がカスタムビルドし製品として提供」 みたいな、Chromium と Google Chrome との関係のようなことにでもなれば 皆さんハッピーなのかもね。 もっとも Chrome は Google が無償で提供してますので、 さらにハッピーですね。普通はあり得ない展開。

○ 目的があると 見方もかわる

そんなことで、オープン・ソース化に向けて、 ソースの改良に励んでいます。

面白いですね「自分の仕事のツールとして ほぼ行き着くところまで行き 満足してしまい、 ちょっと気の抜けた」というか、目標物を失ったような 雰囲気も漂っていたのですが、 あらたな目的を持つことにより、見えないものが見えてきました。

本体と周辺ツールとの接続 API を決め 「今後、色々な人々や企業のアイデアによる 電子カルテ周辺ツールを、簡単に接続できるようにすべき」 「電子カルテ周辺ツールは、世の中の皆が使い回しできるべき」 というのが、NOA プロジェクトの大きなコンセプトです。 そのための API をどうするか、長いこと考えてきました。

しかし、なかなか具体的アイデアが浮かばないことにめげて、 所詮「とりあえず、自分のところで使えれば良いか」 的になっているところがあったのです。 それで何も困ることがありませんでしたから。 しかし今回、目標ができたことにより、その API が見えてきました。 そのような API で接続部分を書き換えています。

「柔軟性・拡張性・シンプル」をコンセプトとしたいと思いますが、 それらについては、まだまだ満足すべきものではありません。

○ 今月の勤トレ

電車の吊り広告で「勤トレ」というのが目に入りました。 「お、これだよ、これ、」ということで、 「今月の歩術」から「今月の勤トレ」にしてみました。 私の日々のトレーニングは、 朝昼晩の(せいぜい、そのひとつが5~10分もかからない) トレーニングですが、考えてみれば 東京都医師会への通勤路がもっとも長い (といっても片道ドア・トゥー・ドアで45分程度) トレーニング時間になります。 勤トレの要素として「電車の中で掴まらずに立つ」は大きいですが、 「歩く」「坂を上る」「階段を上がる」なども大きいですね。

昨日は久しぶりに、 市ヶ谷の東京産婦人科医会から自宅まで歩いて帰りました。 気温もまだ余り上がらず、夕刻とあって気持ちのよい歩きです。 東京都医師会からの帰路と同じ 10km くらいの行程のはずですが、 1時間45分で帰着。都医からですと、 最近ようやく2時間を切ることができたところです。 都医からの経路は皇居前から三田へかけて、 信号で止められることが多いのが原因ではないかと考えています。

そうか、都医からの経路も、 今度は「信号の少ない経路」を模索してみましょう。 信号で止まる時間もさることながら、 せっかくエンジンがかかり巡航速度になったところで ぶつ切りにされると、どうしてもエンジンの潤滑油が切れたりして、 快調な回転ではなくなるんですよねえ、、

、、、あとで、Google Earth で行程を調べてみました。 なるほど都医のあるお茶の水より、市ヶ谷の方が少し近いんですね。 都医から東京産婦人科医会までの歩きが いつも30分弱ですから、今回の時間は妥当なところか。 少し速度が上がったかと思ったのに、ちょっとがっかり。

○ 今月の歩術

「今月の歩術」としては NHK の「ためしてガッテン」でやっていた 「速筋」と「遅筋」を意識してみました。 「素早く動かす速筋は持続力がないが、 ゆっくり動かす遅筋には持続力がある」というものです。 なあるほど、私はもともと「瞬発力のある運動は不得意だが、 歩きのようにゆっくりの動きなら何でも来い」だったのは、 そういうことだったかと、ガッテン!

で、市ヶ谷からの歩きでも、 それを意識して歩いてみたわけですが、 現状での認識は次のようなことです。 「疲れてきた時、歩きを振り返ってみると、 踵などに無理がかかっている」「心持ち腰を沈める感じで、 足音のしないよう、忍者のように滑らかに歩く」。 ガクン、ガクンという歩きは、非効率的ですし、 身体を痛め、必ず疲れの元になります。 昨年「医師と歩こう」で完全に失速し、 初めてリタイアの屈辱を味わったのは、 出だしからスピードを上げる先頭集団に追従したのが敗因でしたが、 その原因も「なるほど」と再度追認できました。

○ 社会保障カードは是か否か

社会保障カードについてネガティブな意見が多いのですが、 私としては「個人にひとつの ID を振る」ことは、 是非やるべきと考えています。それにより、どれだけ色々な処理が効率化され 社会から無駄な経費が減るかわかりません。 「名寄せをされるのは困る」「ID で国民を一括管理されるのは心配」 という不安の声が多いのですが、 それは「白昼の世界を知らず暗闇におびえる」ようなものです。

このようなカードが存在しなくても、 世の中やインターネットにあふれる雑多な情報を集めるだけで、 今では かなりの名寄せができてしまいます(実際その実験のような 人と人との相関図を示すサイトもあります。 そこに私も載っていることを知りました。ただし、そこに示された私の交友関係を見ると まだまだ不正確なようですが、今後どんどん精度は上がるでしょう)。 またすでに色々なところで、個人を特定する ID は振られています。

従って ID による一元化に反対するよりも、積極的にそれを推進することの方が どれだけ経済的に無駄を省けるかわかりません。そして断固やるべきことは、 そのようなシステムへの移行により起こるであろう不具合、 特に皆が心配するセキュリティーなどについての 対応策に時間を費やすべきです。

文明開化の頃、鉄道などの出現で、 今回と同様、漠たる不安からの反対が沢山でたはずです。 確かに鉄道の出現は鉄道事故という問題を生ずるようになりました。 しかし人々の努力により、それは極めて少ないものとなり、 鉄道から受ける恩恵はどれだけ大きいか計り知れません。 「恐れず前向きに対応すべき」と思います。

・・・

それからもうひとつ。とても大切なこと。 「仕組みは なるべくシンプルに」。 日本人の凝り性な特性から、社会保障カードはどんどん複雑化しています。 どうせなら「あれもやりたい」「これもやりたい」。 これでは、またしても莫大な「時間と税金の浪費」になること必定。

「普及させるならシンプル」に。 言い方を変えれば「利用者にとって便利なものなら、放っておいても普及する」。 携帯電話や SUICA を見れば一目瞭然でしょう。「使い方が簡単」で「便利」だから 普及したのです。NTT や JR にとっての利便性を優先させていたなら、 決してこのように爆発的普及はありません。 御用学者はあくまでアドバイザー、現場やユーザの立場が主体となって推進しなければ、 絶対に使い物になるシステムは出現しません。 大失敗の好例が「特定健診」。

 

○ ここでも、効果の薄いバラまき行政

厚労省から子宮がんや乳がん検診を受診できる 無料クーポン券なるものが発表されました。 その中身を聴いてびっくり「子宮がんは20歳から40歳までの5歳区切りの人のみに支給。乳がんは40歳から60歳」 しかも何と「単年度予算」。 つまり、21歳とか22歳とか、 その狭間の年齢の人に恩恵はないのです。 「あー、あなたはハズレですね。残念でした」ということ。

産婦人科医会として学問的にも大きな問題とするところは、 従来の住民検診では検診結果を経年的に分析し、 どの程度の癌発見率があったかなど、 検診の精度管理と効果についてフォローアップしてきました。 今回の一年ぽっきりで独立した検診結果は、 まずその統計システムの中に組み込まれず、 消え失せることになるのでしょう。

さらに医療現場として、 最も困るのは受付業務での混乱と煩雑さを増すことです。 この事業は国から、市町村などの自治体へ実施が移管されるため、 料金からやり方からバラバラなのです。それでいて 「県境をまたがっても実施する」とのこと。公費妊婦健診や 特定健診での窓口業務の悪夢に、さらなる重荷を追加です。

で、なぜ、一回ポッキリの事業なのかというと 「経済政策の一環」とか。「おい、おい、単なるバラまきかよ」。 それなら、従来からの住民検診は平行実施されるわけですから、 地方自治体へ財政援助の形でやってもらえば、無駄な経費を使わず、 現場や住民に無用な混乱を起こさないですむものを、 「あー、最近のこのような視野の狭い一貫性のない、思いつき行政。 実際には誰が決めているんでしょうかね、」

○ 茶のこころ

産經新聞のコラム、久しぶりに千宗室さんが書いていたので 「きっと、また良いことがあるぞ」と読んでみると、やはり今回も とても良いことが書いてありました。

「茶の作法は堅苦しいもの」 「きらびやかに身を飾って、高価な道具を並べ、そこで褒め合いをしなければならない」 「茶室で何かしくじりをすると恥をかく」「そういった所には近づかぬ方がよい」 そうした表面だけのことで茶を敬遠されてしまうのは残念に思っている。 茶の道とは芸や技を競うものではなく、心豊かな場をお互いに醸し出し、 よきコミニケーションをつくり、 差別のない人間としてお互いを見いだす生涯の修練の場と思って頂きたい。

千利休の「南方録」という茶の教典のようなものには次のようにある。 「家は漏らぬほど、食事は飢えぬほどにて足ることなり。 水を運び、薪をとり、湯をわかし、茶をたてて、仏にそなへ、人にも施し、 吾ものむ。花をたて、香をたく。みなみな、仏祖の行いのあとを学ぶなり」

今、世界はまさに人類存亡の危機に直面しているが、 どうするすべもない。地球環境の変化は 化け物のように大きくなってしまった科学文明の力によるところも多い。 国連の世界食糧計画では世界の食糧危機が起こると想定し、 いろいろな工夫をして救済計画を打ち出している。

禅に「寒時寒殺闍梨、熱時熱殺闍梨」という教えがある。 弟子の僧が師匠に「寒熱を避けるにはどうしたらよいか」と問うたところ 「寒い時は寒いのだから寒さに向かうがよい。熱い時は熱いのだから熱さに向かうがよい」 という答えである。人間は四季とともにあって生活をしてゆくのが本来である。 寒いの暑いのと不平を言うとともに冷暖房に頼っている。これでは いくらエネルギー源が工夫されても、いつかは消滅してゆく。 自然環境を大切にするためには、ある程度の辛抱我慢をしなければならないのである。

最近の自分も、寒い時でもなるべく薄着で、 暑い時でもスーツ姿で通勤、のように 全天候型で身体を鍛えてきましたが、 室内ではともすると暖房や、つい冷房を、となってしまうのは、 ちょっと反省すべき点かなと。また最近の日本が食糧はじめ多くのものを 海外に頼っているのは、非常にヤバイ状況と思っており 「自宅マンションのベランダで、ささやかでも家庭菜園を」 などと考えながら、なかなか手が出ないのでした。

○ サンマリノ共和国に感動

TV でサンマリノ共和国の特集を見て感動しました。イタリア国土の中に、 ポツンと独立して存在します。 まずは、その国土の形。傾いた山の斜面、三日月型の地形にびっしりと ヨーロッパ特有のオレンジ色の瓦屋根が並んでいます。 これだけで人口約3万の都市国家。世田谷区などよりずっと狭いはずです。そして、 国連の加盟国だそうです。「凄っげー、」とまず感動。 早速 Wikipedia で調べてみました。世界で5番目に小さなミニ国家、 かつ現存する最古の共和国だそうです。

行政のトップである執政は2名。何とその執政は6ヶ月ごとに 一般市民の中から選ばれるとのこと(ウッヘー、 今度はじまった最悪な日本の裁判員制度。 なら、日本も裁判員などでなく首相を一般市民の中から選ぶくらいのこと 「男は度胸!」で やって見ろい)。

サンマリノの歴史は4世紀から。第2次大戦を含め、 なぜこのような小国が独立を保てたのか。 それは「他を侵略しようとしなかった」からだそうです。 なるほどねえ、4面を海に囲まれた日本にこそ、 この手はもっとも使えるはず。太平洋戦争以後、 日本は他を侵略していません(貿易とかで、ちょっと物議もありましたが)。 もし、これが真実なら、日本こそ「世界から、他を侵略しない信頼を勝ち得ることにより、 永遠(とは言えないのでしょうが)の独立を保てる」可能性の高い国と思います。 ぜひ、日本の国民にはこのような方向性を考えて欲しいと思います。

第2次大戦の時は 家々の屋根に大きな白十字を描き、 連合軍による誤爆を防いだそうです。 人口1万5千人くらいだったサンマリノへ イタリアから10万人もの難民が押し寄せ、 それを受け入れたとか。 人々の住まいだけではとても受け入れきれず、 長いトンネルの中にベッドを持ち込んで凌いだそうです。

そしてサンマリノは、日本に次ぐ長寿国なのだそうです。 その長寿の方へインタビュー「あなたはどうして長生きできていると思いますか?」 「嫌なことは考えないで、いつも楽しいことを考えることよ!」。 そうですよねー、私もそう思います。

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これは日々の生活で感じたことを書きとどめる私の備忘録です