1999.11 New PowerBook G3

わーくすてーしょんのあるくらし (23)

1999-11 大橋克洋

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この原稿が載る頃には少し色あせた話になりますが、Apple 社から コンシューマ向けのノートブック iBook がついに発売されましたね。 大方の予想通りカラーリングや質感は iMac 風ですが、デザインは やや予想とは違うものでした。ハマグリの貝殻を思わせるデザインで、 いつも Apple の独創性には感心させられます。今迄コンピュータに このようなデザインを採用した例はありません。

最近 TV や新聞、電車の中の広告などで iMac を真似たことが一 目瞭然の Windows マシーンが大々的に宣伝されています。よく恥 ずかしげもなくやるな、とは思いますが、表層しか見ない大衆をつ かむには、かなり効果のあることなのでしょう。 このハマグリも数か月後には、きっとどこかのノート型パソコンに 影響を与えることは間違いないと思います。

しかし私は Apple 社のこの新しいノートブックが発売されるこ とを承知で、new PowerBook G3 を購入しました。今回はそのあた りの話題です。

○ 「ドコでも開発環境」を実現したい

前号でも触れたように、メールについては携帯電話 i モードで 良いし、会議の議事録などは薄くて軽いシャープのメビウスがある ので、重くてかさばる PowerBook を今更購入する必要があるのか ということについて述べます。その理由は「携帯できる開発マシー ン」が欲しいということです。

数か月前 Apple 社から講演を頼まれ、電子カルテ WINE を MacOS X Server に移植したものをデモする機会がありました。講 演は札幌で行われたのですが、Apple 社に無理を言って PowerBook G3 を借してもらいました。その時点ではまだApple Japan 社内でも新しい PowerBook G3 は手に入らなかったので、 ひとつ前の機種でした。

やや不安を抱きながら MacOS X Server をインストールしてみま したが、PowerBook の上で問題なく MacOS X Server が動くように なりました。早速、共同研究者の高橋先生と WINE を移植しまし た。G3 マシーンは早いので快調です。 開発の場合はかなりメモリーやハードデイスクを使いますし、 CPU のスピードが早くないと効率が悪いのですが、PowerBook G3 では何の問題もありません。ひと昔前には、ノートブックで開発な んて考えられないことでしたが。

これなら列車の中でも開発ができます(宮崎へ向かう飛行機の中 でやっていたら、客室乗務員からニコヤカに注意されてしまいまし た。お、そうか、まだシートベルト着用ランプが消えていないん だった)。

○ new PowerBook G3

ということで、札幌の講演から帰ると早速 new PowerBook G3を 予約しました。待つこと半月位だったでしょうか、待ちに待った PB G3 が届きました。新しい PB G3 は前のものよりかなり薄くな り重さも軽くなりました(とは言っても、シャープの Mebius やソ ニーの VAIO とは比較にならないほど、厚く重いのですが)。

最近の Apple の傾向を反映してキーボードも、半透明で薄い コーヒー色(Apple 社ではこの色を Java と呼んでいるようです。 あるいはブロンズ・キーボードのパワーブックなどとも呼びま す)。このキーボードはかなり薄型にもかかわらず、キータッチ がとても心地よいので、とても満足です。

CD-ROM drive をはずして、そこに予備のバッテリーをさせば、 10時間もつということで、予備バッテリーも注文しました(でも、 これを持って歩くとますます重くなるなあ、と思いながら)。 外部デイスプレーのコネクターもあるので、出先でデモも快適に できます。 大きさと重さは最初から覚悟の上なので不満はないのですが、何 と、私にとって思いも及ばなかった致命的な問題があったのです。

○ ショック!! MacOS X Server が動かない

私より数日早く new PB G3 を手に入れた高橋先生からメールが 届きました。MacOS X Server がインストールできないというのです。 ガーン!! ショックです。 あの凄いハッカーの高橋先生が色々やって駄目なら、私にできる はずもないと思いながら、色々とやってみましたが、やはり駄目の ようで諦めました。

どうも MacOS X Server の開発時には、まだこのマシーンが存在 しなかったことと、内部的なアーキテクチュアにかなり変わったと ころがあったりして、意識的に new PB G3 には MacOS X Severを インストールできないようにしてあるフシがあります。 旧型では、あんなに何の苦労もなくインストールでき、快適に使 えていましたし、Apple 社も「MacOS X Server の動作保証する機 種は G3 以後の機種」というような言い方をしていましたので、 G3 の名前を冠した new PB G3 で動かないとは夢にも考えていな かったのです。

高橋先生は、私以上にショックが大きかったようで、何と新しい PB を他の先生の旧型 PB と物々交換してしまいました。 私は、旧型 PBも最初は Rhapsody(MacOS X Server の開発名)が 載せられなかったが、その後動くようになった経緯もあるので、い ずれバージョンが上がれば動くであろうことを期待して、このまま 待つことにしました。

○ それはそれとして new PowerBook G3 は快適

ということで「PB G3 に MacOS X Server の開発環境を載せて持 ち歩く」夢はお預けになりましたが、これはこれでなかなか満足 の行くマシーンです。 私は開発用ということで2種類あるうちの上位機種を購入しました。 こちらに装備されている CD-ROM drive では DVD も再生できます。 これを使ってみたいために早速秋葉原へ DVD ソフトを買いに行 きました。後で近所でも DVD をレンタルしてくれる店があるのを 知りましたが、購入するなら永久保存版として愛蔵したいものをと いうことで選びました。

DVD の映画を再生してみると、さすがです。フルスクリーンで動 かしても、何の滞りもなくガンガン動きます。PB G3 は結構大きい 面積を持ちますが、それに応じて画面の大きいことはやはり良いこ とです。特に DVD を再生する時など、その幸せを味わいます。 試しにEPSON の液晶プロジェクターに接続して映画館の臨場感を 味わってみようと思いました。しかし残念なことに、私のもってい るプロジェクターの解像度と相性が悪いらしく、プロジェクターに 接続すると音声は再現されるのですが、肝心の画面が真っ白で何も 見えません。

ということで、最近は DVD と MP3 を載せて、動く映画館や携帯 プレーヤーとして活躍しています。動く映画館はなかなか良いで す。最近ブームになり始めた MP3 は MPEG-1 Audio Layer3 という movie/sound の規格を 使って音楽 CD をコンピュータ上で圧縮し、 人間が耳で聞く範囲では殆ど音質を下げずにファイル・サイズ を1/10 以下位のかなり小さな容量にし て扱うものです。自分の好きな曲を好きな順序にパソコンへ入れて おき、再生できるので、ノートブック型があれば WalkMan を兼ね てしまうということです(その前に CD player を搭載しているので、 直接 CD を聴くこともできるのですが)。

○ コンシューマ向けノート iBook

ハマグリ型携帯マシーン iBook は、携帯といいつつ 3Kg もの重 量があるので、日本ではとても携帯とは言い難いものがあります。 私の願いは「VAIO 級の PowerBook G3 を早く出してくれえ」と いうことなのですが、当分の間 Apple 社にそれを期待するのは無 理なんでしょうね。いずれ Jobs の気持ちが、またコロっと変わっ てSONY と仲良くなり、SONY の OEM で PB G3 が出ることを期待し ていたりします。

Jobs という人は、言っていたことが手のひらを返すように変 わってしまうことのある人です。目の敵にしていた IBM と共同プ ロジェクトを組んだり、恨みを抱いていた(であろう) Apple 社に 返り咲くなど。

いきなり路線が変わってしまうということは、それを売って商売 する人たちにとっては凄く迷惑なことのようですが、私などは「 Jobs の心変わりの結果は、ほとんどの場合良い方向への転換だっ た」と考えており、実際には今迄使っていた物が使えなくなって 「だあー!!」と思いつつも、好感を持って受け止めています。 私のところの受付端末を iMac にしようと思いつつ「iMac は結 構奥行きがあって場所をとるしなあ」と思っていたところなので、 受付端末には iBook が良いかなとも思うようになりました。もし 駄目でも、他での使い回しがしやすいですしね。

無線でネットワークに繋がるところも買いかなと思っています。 そのうちに、TV ドラマの中、ファッショナブルなお店の中など で、色とりどりのハマグリがささやくようになるのでしょう。 まあ、私のところで買うのは MacOS X が動くようになってから ですので、おそらく来年になるでしょう。その頃は VAIO 級のPB が出てたりして、、、というのは甘いですかね。

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