2000.11 札幌での MedXML ミーテイング

わーくすてーしょんのあるくらし (35)

2000-11 大橋克洋

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Jobs の帰ってきた Apple 社では、製品のグループを田の字に分 けた4製品としてプレゼンテーションしてきました。プロ用には Power の文字を冠した PowerMac G4 と PowerBook、アマ用には internet の i を冠した iMac, iBook の4製品です。 ところが、思いがけずこれに PowerMac G4 Cube という製品が加 わりました。そういうことで、折角綺麗に分けられていた製品群が やや複雑化するのが気にならないでもないのですが、Cube は美しい ですね。10年ほど前に衝撃的なデビューをした NeXT 社初のマシ ーン NeXTcubeの影響がないといえばウソでしょう。

同時に発売された 15 inch の Studio Display との組合せはなか なかのものです。私の診察室のデスク上も、来年くらいにはこれ にしたいなあ、などと思いました。Display がもう一回り大きいと 言うことなしですが、その上の50万円の Cinema Displayにはちょ っと手が届きません。 前回の原稿の中で懸念していたように、やはり MacOS X ベータの リリースは9月に延期になってしまいました。リリースになったら 書きたいことが山ほどあるのですが、また少なくとも1か月以上は お預けのようです。

○ MedXML コンソーシアム

先月は、札幌で MedXML コンソーシアム(電子カルテ情報の交換規 約のひとつを研究するグループ)のコア・メンバーによる検討会が行 われました。このコンソーシアムのメンバーは「電子カルテ研究会 」と共通するとメンバーが多いのですが、その運営委員長の役をお おせつかりました。企業をも含めた組織ということで、大学や企業 以外の人間がまとめ役をやった方がよいだろうということです。

この春に設立総会をやった後、なかなか具体的な活動に移れない ので、この際一気に合宿をやって「エイヤっ」とエンジンをかけて しまおうということになりました。時期的にはどうしても暑い7月 頃になります。それでは涼しい北海道あたりで、ということから札 幌で行うことになりました。結果的には地元札幌医大の先生に大変 なお手間をとらせることになってしまいました。 後から考えて見ると、結局3日間ホテルに缶詰になるのだから、 東京のホテルでも同じだったということでした。

コンソーシアムは会費をとっているので多少の予算はあるのです が、会議室の賃料以外は、旅費・宿泊費・懇親会費などすべて各自 もちとしました。 現在、電子カルテの交換規約としてはいくつかのものが提案され ていますが、MedXML の提案する MML(Medical Markup Laguage) で は、米国で主流の HL7 その他の仕様も拒否することなく、そのまま MML に包含してしまう柔軟性をもって検討されています。

○ ミーテイングをいかに効率的に行うか

この検討会を仕切らねばならない立場として、3日間にわたり全 国から時間をさいて集まって頂くメンバーとともに、いかに有効な 成果を挙げるかに頭をひねりました。そこでまず次のようなザック リとしたスケジュールを立てました。 第1日目は MML と CLAIM に関する解説と質疑。

これは私自身がそれらの詳細について完全には把握していないこ ともあり、勉強したいということが実は本音ですが、他のメンバー の多くも同じでしょう。もうひとつはメンバーの間での認識の差を なくし摺り合わせをすることです(ちなみに CLAIM とは、電子カル テとレセコンとを接続するための交換規約でMML の中のひとつのモ ジュールとして実現します)。 第2日目は、1日目にでた問題点について作業班に分かれ解決の ための作業。夜は息抜きのため外へでて懇親会。 第3日目はまとめと確認をかねたミーテイング このようなスケジュールです。

会場は札幌プリンスホテルの比較的小さな会議室です。15名ほ どのメンバーと札幌医大からオブザーバの先生方5名ほどで一杯に なるほどの部屋です。 MML, CLAIM について宮崎医大の荒木先生から説明を受けながら、 参加メンバーで質疑を重ねていきました。

ここであがったデイスカッションの問題点を箇条書にしておき、 翌日はこれを元に、2つの作業班に分かれて問題ごとの対応を協議 しました。この夜は息抜きに札幌ビール園での懇親会です。ジンギ スカン鍋を囲んで、汗を流しながらのビールと羊肉は大量にはけま した。メンバーは皆おおいにエンジョイしましたが、明日の会議も あるので羽目をはずすこともなく帰路につきました。 今回のミーテイングは、このような息抜きの時間を含め、3日の 間ほとんど無駄な時間なく有効に、かつ MML や CLAIM に関する問 題点への対応やメンバーの摺り合わせという大きな成果を挙げるこ とができ、委員長としてはホッと胸をなでおろすことができました。

○ 全体ミーテイングの進め方について

帰ると、参加した若い先生からのメールが届いていました。「ク リエイテイブな会議はこのようにやるのかと、良い勉強になりまし た」との感想を頂きとても嬉しく思いました。 このような中身の濃い会議こそ、完全にオープンで誰でも参加で きる形で行うべきなのですが、何せ今回はコンソーシアムを軌道に 載せることが最重要課題でしたので、議事が有効に進む15名以内 のメンバーに絞りました。あらかじめ「何も発言しない ROM は 駄目よ」とクギをさして開催したのですが、大勢でのミーテイングに なると、こうはいきません。前にここでも書いた今年の電子カルテ 研究会は ROM の大集団でした。

MedXML コンソーシアムのようにメンバーが全国に散らばり、しか も忙しいメンバーばかりの場合は、年に1、2度はこのように泊り 込みで集まり一気にエイヤっと懸案を処理するのがもっとも効率的 のようです。これをさらに有効なものにするためには、事前に Mai ling list などで十分問題点を洗いだし、討議を尽くしておくこと が重要でしょう。

今後、このようなパワフルで有効な会議と、誰でも参加できる会 議との融合をどのようにするかが、考えどころと思っています。 欧米では会議に参加して意見を言わないのは、大変軽蔑されるそ うです。私も医師会などの会議に出席しながら、毎度まったく発言 ナシの人はけしからんと思ってきました。特に医師会などの場合、 委員会の出動費をもらっておきながら、任期の間ほとんど発言もな く過ごすのは会費の無駄使いとまで思っています。 ですから、私に委員メンバーの選択の自由がある場合は、多少間 違った意見でも構いませんから、必ず何か意見を言って頂ける方を 選考するようにしています。

○ 会議場でのコンピュータ

今回の会議ではほとんどのメンバーがノートブック型のコンピュ ータを持参し、説明はそれに液晶プロジェクターを接続して画面に 投影したものを皆で見ながら行いました。 相互のコンピュータを Ethernet で接続することを想定して Hub も用意してもらったのですが、結局 IP address を割り当てる などが面倒で今回は接続しませんでした。ファイル交換はどうやった かというと、相互のノートブックがカード型モデムでインターネット 接続できる場合、メールでやりとりしたりしました。

私の場合、所属するプロバイダーの PHS 局が札幌にはなかったた め、東京の局を利用しました。札幌にいながら隣の席のコンピュー タとファイルのやりとりをするのに、わざわざ東京経由でやりとり するという一見馬鹿なことをしましたが、とても便利でした。 秋葉原で衝動買いしたセイコーインスツルメンツ製のPHS カード は快適です。カード自体が PHS 電話機なので、携帯電話を接続する ことなく通信ができます。

思ったのですが、初心者用のコンピュータはノートブック型を 購入してもらい、このようなカード型モデムをセットして Web や e-mail を読み書きできるようにして渡すのが一番良いのでは ないでしょうか。メールや Web ブラウザーを立ち上げれば何も 考えずにインターネットに接続してしまいます。 札幌で大分使ったので電話料の請求が心配でしたが、先日届いた 請求書の額は思ったほどではなく安心しました。パケットで送るの で、接続時間ではなく送ったデータ量に比例するためでしょう。メ ールなどは送受信したらすぐ回線を切ることにしています。

○ 活躍するノートブック

私の持参した PowerBookG3 はデユアルバッテリーにしておくと、 使いっぱなしでも6時間以上電池がもちます。これは昨年春に購入 したタイプですが、今年でた PowerBook はさらに長い時間もつよう です。外見はまったく同じですが、最新の機種は比較にならないほ ど熱をもたないようで、これが大きく貢献しているのでしょう。 しょっちゅうデイスクにアクセスする UNIX 互換 OS を使ってい て、こんなにバッテリーがもつのは画期的なことです。お蔭で電源 アダプターのお世話になる場面がかなり少なくなりました。

PowerBook は画面も大きいので単体で使って不自由を感じません が、外部デイスプレイ、キーボード、マウスを外付すればデスクト ップとすげかえることもできます。もうこれからはデスクトップや タワー型などの据え置き型はサーバとして少数台あれば十分で、手 元で使うにはノートブック型で決まりですね。

残念ながら Ethernet を無線で飛ばす AirPort はまだ MacOS X Server に対応していないので使っていませんが、 これを使えばまさに「どこでも仕事場」を実現できます。 先日、iBook に MacOS X Server を載せて使ってみる機会があり ました。解像度の制限で画面の広さにやや難があるものの、十分仕 事に使えそうです。私自身はこの楕円型のデザインが、どうしても 機能的には思えず好きになれません。いずれもう少し良いデザイン のものが出れば、 一台あってもよいかなと思っています。

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