2013.10 歩いていればいつか到達する

わーくすてーしょんのあるくらし ( 248)

2013-10 大橋 克洋

日曜早朝の散歩コースにある路地裏 ここを抜け壮大な大海原へ

< 2013.09 教える・教わるは必要か | 2013.11 時には現場から離れることも必要 >

◯ 歩いていればいつか到達する

横浜「みなとみらい」から 20km 歩いて帰った時のこと。地平線の彼方まで一直線に続く第1京浜を荷物を背負って歩きながら、遠方に見える大きなビルを目にして「あそこまでかなり距離がありそうだなあ、しかし歩いていればいつか到達する」と考えました。そして実際に到達、やがて遥か遠方に遠ざかって行きます。今回の電子カルテ大改装でも同じ思いをしました。非常にやっかいで すぐには解決困難な問題に直面し、細かなデバッグを繰り返しながら「こうやって地道に少しずつ解いていけば、いつか解決するもんね」と。一歩後退二歩前進てな感じですかね。

人生も同じ、めげずにこつこつと喰らいついていけば夢は必ず実現する。

◯ 「ASCII」の社名が消えた

雑誌社「アスキー」を角川グループが吸収、アスキーという名前のついた雑誌は継続されるそうですが、今月からアスキーという社名が消えたそうです。創世記のアスキーから私は色々なものをもらいました。昭和53年暮れも近い頃、近所の本屋で「アスキー」という名前の雑誌が目にとまりました。「スキーの本かな?」とか思いながら手にとりパラパラめくってみると、何やらコンピュータの本のようです。コンピュータにはその前から興味を持っていましたが、当時は大きなビルのワンフロアーを占めエアコンをがんがんに効かせた中で飼わねばならない極めて高価な機械、手の届かぬ別世界のものと思っていました。

しかしこの雑誌によるとコンピュータと名のつくものが自分の手の届くようになったらしい。早速、月刊「アスキー」を買って帰りました。それは世界で初めてのパーソナル・コンピュータ「Apple」が実現された翌年のこと。早速コンピュータを買おうと、雑誌の裏表紙の広告をみると3社から発売されているようです。Apple には赤いリンゴのマークがついていて「これはオモチャだろう」、Tandy のはまったく色気もなく食欲の湧かない外見、キャッシュ・レジスターのような PET に決めました。当時マイコン(マイクロ・コンピュータあるいは自分のコンピュータ)を買う人のほとんどがゲーム・アプリを作ったり遊ぶことが目的のオタクでしたが、私は最初から業務に使いたかったのです。その2,3年前から「電卓つきタイプライターが欲しい」と願っていたのですが、まさかこれがこんな形で実現するとは、、暮れもおしつまった頃、西武デパート(当時はデパートで売っていた)から届いた PET2001 付属のうすっぺらなマニュアルを頼りに BASIC 言語を独学で学びながら、正月休みに給与計算だったか財務会計だったかのアプリを組みました。

つまりアスキーこそが、私のコンピュータ人生への水先案内人だったのです。それから6年後、知り合ったコンピュータ仲間達と juice というネットワーク組織を作りました。中にはアスキー社員もおり、月例会を青山にあったアスキーの施設で行いました。やるき満々だった当時のアスキー社内を見学させてもらいました。デスクとデスクの間に寝袋がころがっているのは夜通しで仕事をしている証拠。最新型コンピュータの脇に綺麗な女性のお尻の写真が貼ってあります。マジック・ペンで「触るな」。日本産婦人科医会で一緒に仕事をしていた仲間が「うちのマンションの隣に夜中でもこうこうと電気がついている会社があるんだよね。何の会社なんだろ」というので、場所を聴いてみるとアスキーでした。

当時のアスキーの記事にはとてもノリがあり技術的内容も高く、スタッフに優れたハッカー(本来は優れた技術をもつ人間を称える言葉だった)が大勢いることを思わせました。数年後、個人では珍しかった LAN を仕事場と自宅の間に引いている話を聴いて、アスキーの西社長(当時、米国マイクロ・ソフトの副社長も兼任)が私の自宅を訪れ、私の書斎でしばらく談笑して行きました「わー、今夜は寝られなくなっちゃうな」という言葉を残して、、

そして後年、私の次女はアスキーに入社、そこで社内結婚をしました。「わくわくする体験」「良い思い出」を残してくれたアスキー、さようなら、、

◯ 体調管理あれこれ

先月も書いたように昨年初めから毎日の体重・血圧・歩行距離・その他を記録しています。体重とともに順調に下降してきていた血圧がこの夏頃から再びやや上昇気味。食事も降圧剤も生活も以前と変わっていないはずなのですが、、

で、先月「血圧が多少高い方が体調は良い。ここが悩ましいところ」と書いたのですが、血圧をプロットしたグラフを見ていて、一旦谷底になった時期を調べてみました。すると予想通り今年1月から2月頃、あの頃はコラムにもちょっと書いたと思いますが、軽いウツ状態がみられた時期と重なります。「うーむ、なるほど、そうか」少なくとも私にとって血圧は多少高めの方が体調は良いんだなと、また悩んでしまいます。

ところで今日は楽しみにしていた日曜なのですが、また朝から雨で歩きに出られません。大分気温も下がってきました(と、行ってもまだ15度から18度程度)。来週はまた少し気温が上がるとか。三寒四温の逆で冬に向かってゆくのですね、、

今年は秋口に入ってから台風の来襲の多い年。地球温暖化が進むに伴い今後どんどんそうなるのかも知れません。この秋、何度目かの台風、今までは本土に上陸し関東に達するまでに大分勢力が落ちることが多かったのですが、10年振りの大きな勢力を持つ台風が太平洋上から関東直撃の予報。日が暮れて窓の外を見下ろすと、街灯に照らされた車道は東京では余り見ることのない盛大な土砂降り、これが朝まで続く予想。「こりゃあ、東京でもかなり出水の被害が出そうだなあ」。幸い私の所は武蔵小山という地名が表すように、比較的高台なので水の心配はないのですが。

幸い台風は東京の出勤時間の頃にはほぼ通りすぎていましたが、その後の報道をみると伊豆大島で山津波の大災害。なるほど昔からの火山灰の山肌にあれだけの集中豪雨が振り続けばうなづけることではあります。局地的ながら東日本大震災にも匹敵する災害となってしまいました。これからは地球規模の気候変動に対応する考えが必須ですね。

◯ 今月の脳トレ

ということで仕方がない、歩きに出られないので電子カルテ NOA の開発作業にかかるか。実は NOA の大改装、最後の仕上げもほぼ終わろうとするところで問題発生。昨日の外来診療で、超音波断層装置から取り込んだ画像をカルテにドラッグ・アンド・ドロップする部分が正しく機能しなくなりました。その前に HTML 関連のタグを除去する仕組みを挿入した部分があったのですが、今回の問題とは関係ない箇所のはず。昨日午後から夜にかけ関連部分をチェックしてみましたが、なかなか原因を特定できません。寝る前にようやく発見した原因は Google Chrome の仕様がいつの間にか変わったためでした。念のため Safari でやってみると問題なくドラッグ・アンド・ドロップできます。

超音波画像をドラッグする時、カスタマイズした情報を運ぶようにさせておき、ドロップすると、画像にマウスが載ると拡大したりクリックすると別パネルで開くような仕掛けをしています。今度の Chrome の仕様では、画像に付属させた情報より画像そのものの情報を優先するようになったため「単なる画像として貼り付くだけ。そこにマウスを載せても何も起こらないし、クリックしても反応しない」ということになってしまったのです。このようにブラウザーごと微妙に仕様が異なるのは、Web アプリ開発者にとって困った事です(うまく乗り越えられた時は「やったぜ」という優越感を味わえますが)。おーい、そんなの黙ってやらないでよ、、

Chrome は知らない間に自動アップデートしてくれたり、どんどん改良されるのは良いんですが、開発者でさえ悩むこういう問題は一般ユーザさんにとっては更に解決困難な問題となります。昨晩、対応策を幾つか試みてみましたが、どれもうまく行きません。さあて、今日中に解決できるだろうか、、これから格闘戦に入ります。

・・・

その対策を得るべく、いろいろ試行錯誤しました。「これはやっかいだぞ」と思ったのですが、試行錯誤の過程の中で偶然 解決策が見つかりました。非常にラッキーでした。画像を受け入れる側のオブジェクトに画像受取りの仕組みを組み込むことで解決しました。判ってしまえばほんの数行コードを書くだけなんですけどね。

◯ 大改装を終えて

昨年のこのコラムを読み返してみると、昨年も大改装をしたのでした。今回の大改装には昨年に比べかなり日数もかかり、いつもより念を入れチェックしたつもりでしたが、細部にわたる全面改装だったこともあり、やはり幾つかユーザさんから不具合のレポートがありました。加えて新たなリクエストもあったりして、それらの対応版を1週間ごとにリリースしています。2回の修正版を経て、そろそろ波も収まってくるかなと、、

普通、開発者はバグ・レポートや新たな機能のリクエストなど、心情的に Welcome ではないものです。私は自分の尻を叩く意味もあり「バグ・レポートでもリクエストでも遠慮なくどんどん投げてね」と常々言っています。それらに対しなるべく速攻で修正版を打ち返すよう心がけていますが、今回は対応に頭をひねり時間を要するものが多かったように思います。そのようなことを少なくするためにも「プログラムはもっとシンプルにしなきゃな」と思ってはいても、なかなか叶わぬこと、、

開発者にとって無理難題と思われるリクエストでも、極力実現するよう心がけてきました。その甲斐あって、今まで想像もしなかった機能を実現できたりします。これだから、やめられませんね、、

◯ iPad Air 発表

先月の iPhone 5s /5c の発表につづき、今月は iPad と iPad mini の発表があるとのことで楽しみにしていました。特に iPad mini が retina display になったら、ぜひ外来診療で使いたいと思っていました。うわさにあった指紋認証は iPad には組み込まれませんでしたが、iPad mini には目出度く retina display が組み込まれました。iPad の方も左右のベゼルを狭くし、かなりの軽量化を果たして名称も iPad Air となりました。

現状で私の使う iPhone を見ても容量は 64GB ないとデータが溢れてしまいます。iPad でもその位は必要となると、その価格帯の Air と mini 両方を一度に購入するのはちょっときつい。とりあえずまだ持っていない iPad mini が優先かな、現在の iPad に不満も感じていないし。Apple Store を覗いても予約をとる気配なし。大人しく11月の発売を待ちましょう。

Mac 本体の方も OS が Mavericks に代わりました。剛毅なことに Apple 社は今度から OS を無償配布。「これはハードとソフト両方を扱える Apple 社の強みで MS 社を一気に突き放そうという方針ではないか」との記事もありました。あり得るかもね。「無償配布の意味は、皆が同じ OS で同じ環境を持つことにある。そうなれば、アプリ開発は非常に効率的になるので、ユーザも開発者もそして Apple 社も大きな恩恵を受けるはず」との記事もありました。こちらの方が更に核心をついていそうです。で、早速 Mavericks をダウンロードしてインストール。NOA の挙動にはまったく問題なく、ひとまず安堵。しかし、今度の OS アップデートはメジャー・アップデートにもかかわらず「え、で、以前とどこが変わったの?」という位、違いが判りません。徐々に効いてくるのかな。

火鉢あるいはゴミ缶スタイルの Mac Pro は12月から発売とのこと。私のところでは、サーバは Mac mini で不満はないし、開発マシーンも iMac で 事足りています。Mac Pro にすぐ食指が伸びることはなさそう、、

◯ MacBook 派と iPad 派

前にも書いたように、私は外出時ノートブックを持って歩かなくなりました。iPad で十分事足りてしまうからです。ちょっとしたプレゼンなら会場の液晶ディスプレイに iPhone を繋ぎ綺麗なプレゼンを提供することもできます。iPad で出来ないのはプログラム開発のみ。ところが所変われば品変わるではありませんが、人により様々であることを知りました。

うちの家内は暇さえあれば食卓の MacBook Air に貼り付いたまま。殆ど Mail, Web, iPhoto などのようですが「それなら iPad の方が画面も明るく綺麗だし操作もずっと楽」と云っているのですが iPad を使う気配はありません。ところがその MacBook Air、二代目なのですが先日、画面が真っ暗になりピーピー悲鳴を上げるようになりました。電源ボタンで強制的に落とそうとしても落ちません。渋谷の AppleStore に持込み修理して帰ってきましたが、1日もしないうちパニック画面が出るようになりました。今度は数日入院修理とのこと。仕方なく iPad を使っています。この機会に iPad の良さをわかってくれると嬉しいのですが、、

もう一人、私の後輩でプログラマーの K 先生、iPadも使っているかと思っていたのですが、先日の話では iPad はあまり使っていないらしい。まあ、外出先でプログラムをするには MacBook が手放せないことは判るのですが、私同様ガジェット好きで Apple の犬と自称する彼が iPad を殆ど使わないとは、うーむ、人さまざまなんだなあと、、彼が12月発売の Mac Pro をいち早く購入するであろうことは間違いありません。

仕事やプログラム開発は iMac の大画面ですが、持ち歩くにはやっぱり iPad でしょ、、

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これは日々の生活で感じたことを書きとどめる私の備忘録です