2012.12 カオスの中から新しい発想が生まれる

わーくすてーしょんのあるくらし (238)

2012-12 大橋 克洋

「TOKYO2020オリンピック招致」の白い横断幕のかかる

早朝の「林試の森」公園を散歩する

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◯ 混乱の中で苦闘することは大切

第8世代電子カルテ NOA のリリースから1ヶ月、ようやくユーザさんからの降りしきるメールのスコールも収まり平穏が戻って来ました。こうなると何か物足りなくなる私の性格は何?

デザイン学校に通った成果もちょっぴりあって GUI をブラッシュアップしたので、少なくとも自分としては毎日の外来診療を楽しく行えるようになりました。第7世代と比べ基本的な部分は余り変わっていないものの、細かいところではかなり変わったところもあります。この変わったところは、降りしきるスコールの中を夢中で走り抜ける中から湧いてきたアイデア。やはり雨を避けて家に篭ったり、雨宿りをしないで良かったなと、、

今回の大改装の大もとはと振り返れば、今年5月の Seagaia meeting のホテルで朝食の席。たまたま一緒になったハッカーの方々と何ということなく盛り上がったヨタ話。話の内容はともかく、そこからもらった「気」が起爆剤となったのでした。

やはり必要なものは「カオス」と、その中を駆け抜ける「気」こそが大切と強く思うものです。地球の誕生、生物の誕生もそんなところから生じてきたはず、、

来たる2013年、その次は2014年、両方とも私にとって何か験(げん)の良くなさそうな数字ですが、たとえ何があろうと「気」をもって駆け抜ければ、必ず爽やかな夜明けがくるはずと思っています。来年もアグレッシブに生きましょう、、

◯ 急速な技術革新の中でも なかなか変わらないもの

このエッセイ最初の号を読んでみると、私のオフィスへの FAX 導入について書いてあります。1985年 FAX 導入時、私の所ではすでに電話回線のオート・ダイアルアップで他所のコンピュータと接続してメールが行き交っており「FAX など入れてもいずれメールに置き換わるからと導入を拒否していたが、少しでも早く恩恵に浴すべきと考えを変えた」と。

インターネットが一般化したのは、それから10年近く後の1994年。当時まだ一般社会に電子メールはありませんでしたが、インターネットの実用化に向け先進的努力をしていた大学工学部や企業の研究所の実験ネットワークに、私もコンピュータ仲間と一緒に接続させてもらっていました。初めて海外からメールが届いた時の感激は忘れません。あの仲間達とはその後 十数年も音信が途絶えていましたが、facebook の普及により再び何人かの仲間と感動を共有できるようになっています。

そして FAX 導入から27年、予想に反し未だに FAX を廃止できません。電子メールが普及したとはいえ FAX でないと連絡できない所がまだ少なくないためです。私の予測がこれほど遅れたことは他にありません。ふーむ、ということは、私の予測通り FAX がメールなどへ完全に置き換わるにはまだまだ何年もかかるということなのでしょう。私の生きているうちには切り替わるはずと思うのですが、、

◯ MacBook Air がパンク

娘に譲った初代 MacBook Air は、購入から4年と10ヶ月になるマシーン。昨日「蓋が閉まらなくなっちゃったんだけど、」と持ってきました。見ると確かに筐体が変に歪んで蓋がピッタリ閉まりません。「落っことしたり、ぶつけたりしたことはないんだけど」とのこと。よく検めてみると、キーボードやトラックパッドの面が綺麗に膨らんでいます、丁度、網の上で焼いて膨らんだ正月の餅のように。

へえー、経年変化でヘタったバッテリーが膨らむ話は読んだことがありますが、身近に見るのは初めて。最初は修理に出すことも考えましたが、これだけ筐体が膨らんでしまったものは恐らく修理に出しても無駄でしょう。可能だとしてもかなり費用がかかるに違いないと諦めることにして、私の使っていた MacBook Pro を譲りました。私自身この頃、外へ持って出るのは iPad で事足りてしまうようになっています。強いて云えばプレゼンがやり難いかなとも思いますが、慣れれば iPad で問題ないはず。というか iPhone でも出来る時代。私にとって Mac がないと出来ないのはプログラム開発だけ。それも最近は外でプログラミングをする機会もなくなりノー・プロブレム。

おそらく膨らんだのは充電中だろうと思いますが、万一夜中に火を吹いてはかなわないので、用心のため Fat Mac は空いた植木鉢の上に。手元にノートブックがないと電子カルテ NOA のテストに困ることがあるかなと思いつきましたが、他にも空きマシーンがないでもないし何とかなるでしょう。必要になったら新しい MacBook Air を購入することにして、、

◯ 価格破壊は人を幸せにするのか

診察室の椅子がカクッとなって、あやうく後にコケそうになりました。椅子の足を調べてみると5本足のうちのひとつからキャスターが抜けています。単にナットが緩んではずれただけで、はめて締めれば何ということはないのですが、ナットの位置に指も工具も入らない構造。恐らくナットを締めた後、椅子の足の断端を溶接で閉じる工程だったと想像されます「お〜い、何でこんなの作るんだよ」。デザインも良く使い勝手も良くて気に入っていた椅子なのですが、これでは使い物になりません。5本足だと一見安定が良さそうですが、一つ欠けただけで完全にコケます。まったく資源の無駄を促す構造だなあと、、

仕方なく粗大ごみに出すことにして、新しい事務椅子をネットで探してみました。ASKUL に「おっ、まさかの3980円??」というのがありました。写真でみた限りでは真っ当な事務椅子に見えます。ダメ元で頼んでみようかということでポチってみました。届いたダンボール箱を開け組み立ててみると、作りもなかなかしっかりしています。明らかに中国製で「黒いメッシュの背当ての辺りからホツレてくるのかな」とも思いつつ、「まあ安いから5年もてば良いか」と使っています。

キャスターの動きも以前の椅子より軽やか、座り心地もグーで気に入っています。しかしよく考えてみると、こんな値段では中国から宅配まで流通にかかる費用だけで消えてしまいそうな気もします。「これじゃあ、真っ当な製造業はまったくやってられないなあ」とも思いました。確かにユーザの立場からはとても嬉しいことですが、長い目でみた時、このような流れは果たして人々を幸せにするのでしょうか。非常に疑問を感じました。つまり、その裏で「極めて安い賃金で働く、割をくっている人が少なからず居るはず」と思うわけです。

◯ 今月の歩術

12月に入ってからは、さっぱりです。先月にも書いてきたような理由。そうしたらテキメンに効果が現れてきました、体重増加です。この春から苦労し綺麗に減少してきた体重カーブがグッと鎌首をもたげ上昇に転じました「これはいかんなあ、」と。暗くなっても寒くなっても歩かなきゃ、今日こそは少し歩こうと思っていたら、外は冷たい雨。雨の時は仕方がありませんが、距離をぐっと縮め 2km から 3km くらいにしてでも歩かなきゃと思っています。こういうものは習慣ですから、億劫に感じてもやっているうちに何とかなるかなと、、

ということで、寒さにめげず日が落ちてから歩きにでることにしました。歩き出すと 2km や 3km では物足らず 5km ほど歩いています。以前から、早朝の歩きをやってみたいと思いつつやっていなかったのですが、よく晴れた休日の朝7時から歩きに出てみました。天気は良くても外気温4度、手袋をしない手先が結構冷たい。最初はシャツ襟元のボタンを閉め、両手親指を他の4指で包みこみながら歩いていました。2km を過ぎる頃からようやくエンジンも暖まりはじめ、4km を過ぎると襟元のボタンやジャンパー胸元を開けてもやや暑くなってきました。

今月の表紙「林試の森」公園がその写真。早朝の林試の森で太極拳グループが朝の錬功をやっていると聞いたのですが、7時も過ぎたためか姿を見ることはできません。恐らく参加者の多くは中高年でしょうから寒い冬場はやっていないのかも知れません。しかし、木々の梢に朝日が当たり始める寒い早朝の森、歩いている人の殆どが中高年。僅かにジョギングする若者の姿を目にしました。ここのところ上昇傾向にある私の体重、時々の歩きでは減りそうにありません(寒い季節に入り防衛のため脂肪を蓄積しているということもあるのでしょうが)。短くてもよいのでなるべく毎日か隔日には歩く必要がありそうです。

◯ 今年の減量作戦

◯ 今月の脳トレ

自分の健康管理のため、毎日の血圧・体重・歩行距離などを記録する NOALight というツール。記録したデータは CSV で吐き出し Excel に読み込ませてグラフ化することもできます。今年3月から記録しはじめたデータが大分溜まってきて、もう少し使いやすいものに改良したくなりました。新世代 NOA の大改装も一段落し、ユーザさんからの便りもまったく途絶えています。「便りのないのは良い知らせ、きっと問題なく日常診療に使われている証拠」と勝手に思っていますが、そんなことで手持ち無沙汰になってきたことでもあり、NOALight の改装にかかりました。

試作品だったこともあり一日のデータを一ファイルとして決まったフォルダー内に書き出す仕様だったのですが、数百のファイルが溜まってくるとこれでは如何にも効率が悪い。今度は全部をまとめ一ファイルとして書き出すようにしました。あえてデータベースを使わないのが NOALight たる所以でもあります。データの読み書きはサーバに任せ、サーバ側でローカル・ファイルを読み書きするようになっていますが、「同時に手元のブラウザーにもデータを記憶するので、サーバと切れてもとりあえずデータの読み書きできる」仕掛けとしたものの、よく考えてみればこのアプリは Web アプリですから、これはちょっとアホな考えでした。つまりサーバにアクセスできない時はアプリそのものが動きません。ま、この辺は色々と実験的意味合いが大きいのであって、当面は人様に使って頂くことを想定していませんし、良しとすることにしています。

◯ 長寿記録を更新した首振り iMac

外来受付で毎日活躍している iMac を購入して10年と3ヶ月を過ぎようとしています。丁度10年前、このコラムで「純白のクラゲ、液晶 Mac がやってきた」と書いたマシーン。巨大なお供え餅のような本体上に、自由に動くステンレスの太い腕で支えられた液晶ディスプレイと云うユニークなデザイン。初めての液晶 iMac でもあります。診療デスクで使っていても、指一本で軽く画面を患者さんに向け説明するのにも便利なマシーンでした。

現在は受付けで電子カルテ NOA の受付端末として使っています。当初懸念されたように白い筐体がやや汚れてきているものの、液晶画面はまだ綺麗で十分使えています。CPU が古いので最新 OS は載せられずブラウザーも古いバージョンしか走りませんが、NOA は Web アプリケーションとあって Web ブラウザーさえ動けばよく、問題ありません。

1978年12月初めてのパーソナル・コンピュータ購入以来、50台以上のコンピュータを使ってきました。NeXTStation が最長10年半の稼働記録を持ちますが、最後の数年は単なるプリンター・サーバでしかありませんでした。しかし首振り iMac はまだまだ第一線で現役として仕事をこなしています。これは凄いことです。この首振りデザインは診療所で使うにはとても具合が良いので、iMac 復古版を出してくれると嬉しいのですが。

シャンパンでも抜いて彼の長寿と長年の働きを祝ってやりましょう、、

◯ 予見されたクラウド環境

そんなことでこのコラムの10年前を読み返してみると、こんなことが書いてありました「先日も Windows のノートブックを使っている企業の人が『今やこれが自分の外部脳、これをなくすとえ らいことになる』と言っていました。私もその通り、ノートブックのデータはあくまコピーでしか ありません。オリジナル情報はネットワーク上のファイルサーバに置き、ノートブックをなくしてもパニックにはならないようにしています。 将来はこれがもっと徹底し、情報のすべてはネットワークの彼方のサーバ上にあり、手元の極めて身軽な携帯端末からそれを読み書きすることになると思います」と、、

そして現状は、まさに予見した通りになっています。このコラムのネタを含め、思いついたアイデアなどは手元のコンピュータや iPhone などから Simplenote にメモします。そのデータはクラウド上に保管され、何時でも何処からでも読み書きできます。Web 上やfacebook その他で見つけた後で役立ちそうな情報は、分類タグをつけて Evernote へ放り込みます。医療機器の見積書から契約書まで、結構重要なものも Evernote へ放り込んでいます。出先でも胸のポケットから iPhone を取り出し参照することができて便利です。消失して困るものは自分のマシーン上に記録しますが、何時の日にか参照するかも知れない、参照できると便利そうなものは全てこのようにクラウドへ投げています。

保存したスクラップの殆どが従来は紙くずでしかなかったのですが、無料のクラウド・サービスにより「もしかすると有用かも知れない膨大なゴミ」が地球上にどんどん溜まりつつあると思います。人類が絶滅した何万年もの先、もしこのようなデータを知的生物が発掘し解読することができたなら、人類を知るため非常に有用な情報となるかも知れません。古代遺跡から出てきた取るに足らない生活のゴミが、考古学者にとっては宝の山であるように。

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左が今年3月始めから今年末までの減量作戦の成果。食事と歩きにより夏を過ぎるまでは直線的に下降し目標の 60kg 以下を達成したのですが、11月に入り日没が早くなるに従って夕方の散歩をやめたところ、テキメンに体重が増加傾向に転じました。寒い季節に入り身体が脂肪を蓄積しようという傾向もあるのでしょう。

これはいかんと12月中旬から夕方の歩きを再開したのですが、やはり暖かい季節のように6〜7km の歩きは望めません。それでも5km ほどは歩いているのですが、一旦体重増加傾向になると身体機能がそちらに向かって動き始めるようで、大きな船の行き脚を変えるには努力してもしばし時間を要するようです。これから2月までの厳寒に向かう中、もたげた鎌首をどの程度抑えられるのでしょうか、、

平塚小学校跡工事:公園の造成がはじまりました

これは日々の生活で感じたことを書きとどめる私の備忘録です