2002.11 MacOS X 10.2(Jaguar) がやってきた

わーくすてーしょんのあるくらし (59)

2002-11 大橋克洋

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MacOS X がようやく念願の 10.1 から 10.2 へアップグレードし ました。前評判はいろいろな雑誌で紹介されているのですが、実際 はどうなのでしょうか。とても楽しみでした。使ってみるとそれほ どでもなかったり、結構バグなどの不具合があるのではがっかりし てしまいます。しかし使ってみた印象は素晴らしく、とてもスムー スなバージョンアップと舌を巻いた次第です。 最近 Apple 社は大分余裕ができてきたようです。今回のアップグ レードに関しても間に合わせのやっつけ仕事という部分はまったく 感じられませんでした。

電子カルテを開発している立場としては折角うまく動いているも のが、バージョンアップでいろいろな不具合がでてはたまったもの ではありませんが、これもバッチリです。何の問題もなく移行でき ました。新しい OS が届いてそこへ移植し翌日から現場で仕事に使 って何の問題もないということは凄いことだなと思います。ソフト ウエアを開発する立場から見ると、そのような完ぺきな仕事をする のは凄いことと心から感心してしまうのです。

○ てなぐさみにフリーウエア

MacOS X が順調に発育を続ける中、最近はいろいろ楽しいWeb br owser が増えてきたことをお伝えしました。そうしているうちに、 URL の集積を Web browser とは独立した形で管理できると便利だな あと思うようになりました。私の場合、こうして原稿を書いている のは外来診療デスク上のコンピュータですが、自宅に帰れば自宅の PowerBookG4 を使います。そうなると Web browser が変わるだけ でなく、マシーン自体も変わるのでネットワーク上で URL を一括管 理してくれるものがあると便利です。

同じようなツールがあるはずとインターネット上を探してみると 、Mac の Classic 環境で動く URLManager Pro というものを見つけ ました。私も自作したら URLManaer というツールにしようと思って いたところです。 download していじってみると、ほぼ私が欲しい機能は備えていま すが、やはり Classic 環境は使いたくありません。 そこで「欲しいものは作ってしまえ」の精神で自作しました。ネ ーミングは予定どおり URLManager です。いろいろな URL をジャン ル分けして保存でき、それぞれに簡単なメモをつけることもできま す。

製作中どうしてもわからない所がでてきて、ネットでコンピュー タ仲間の知恵を借りました。こうして大体私の欲しかった機能を備 えたものができ上がったので、由緒正しいネットワークのお作法に 則り、お礼を兼ねこれをネットワーク上で公開しました。 私はインターネット上の URL を管理することだけを考えていたの ですが、コンピュータ仲間から「自分のコンピュータ上のファイル も管理できると便利」という要望を頂きました。

さっそくその機能を追加しましたが、なるほどこれは便利です。 インターネット上のものであろうと、自分のマシーン上のものであ ろうと、同列に管理できます。 前回のご紹介と同様、私の Web site のソフトウエア作品という ページから download できますので、MacOS Xを使っている方はどう ぞお試しください。

○ 無秩序データを自分の秩序でハンドリング

「世の中に存在するいろいろなデータはそもそも何らかの秩序の もとに存在するのではなく、人間が自分の都合のよい秩序にそって 見たいだけである。データを整理して保存するのではなく、無秩序 なデータを整理して見せるツールこそが必要」というのが電子カル テ開発において前々からの私の持論でした。

私の開発する電子カルテ NOA は WineCell と呼ぶ情報を読み書き する窓のようなユニットを組み合わせて自分の好きなレイアウトを 構成する仕組みになっています。 URLManager も期せずしてこのコンセプトを違う手法で実現するソ フトウエアとなりました。つまり無秩序に(あるいは自分の秩序と合 わない状態で)散らばるデータを URLManager で自分の好みの秩序 にならべて管理することができるのです。

例えばいつも使うファイルなどを登録しておきますと、それをク リックしただけで、画像なら画像ビューアが、テキストならテキス トエデイターが立ち上がってそれらのファイルを開いてくれます。 フォルダーならファインダーがそのフォルダーを開いてくれます。 こうなると、URLManager をファインダー代わりに使えるようになり ました。このような方向性で進化させると面白いものになりそうで 、これからが楽しみです。

○ MacOS X 10.2(Jaguar) がやってきた

AppleStore で予約しておいた Jaguar が発売予定日の8月24日の 朝一番に宅急便できちんと配送されました。開けてみるとパッケー ジには豹柄のXの文字がどーんとデザインされています。何度も書き ますが私は Aqua の透き通るようなブルーの方がずっと好きなんで すが。Apple はこれからもしばらく豹柄で行くのでしょうか。

さっそくインストールです。OS 10.1 では最初のリリースから何 度か update がありましたので、何かの事情でOS を入れ替えようと するとすごく大変な思いをします。OS 10.1.5 を入れたいだけなの に、まず CD から OSを入れた後、security update だとか Instal ler のupdate だとかいろいろと update をかけた後にようやく OS 10.1.5 に update できます。私の場合は電子カルテ NOA 開発が WebObjects を要求するので、WebObjects を入れようとすると、こ れまた Developerのバージョンをきちんとそろえておかないとやり なおしだったりします。

ここのところ何度かそのような思いをした後だったので、OS 10. 2(Jaguar) のインストールは拍子抜けするほどスムースでした。イ ンストール後従来使っていたいろいろなものがちゃんと動くかテス トです。ここでヤバイ!!WebObjects 関連が動かないと、どきっと させられましたが、WebObjects をインストールした後 networkで update をかけると無事問題なく動くようになりました。電子カルテ NOA もばっちり動きます。

このようにすべての環境を整えるのに3,4時間ほどでした。今 までの経験からするとこれはとてもスムースな移行です。2台目の マシーンへのインストールは、日曜日の朝起きて食事をしたり何や かやと朝の行事を済ませているうちに済んでしまいました。

翌日からそのマシーンで電子カルテ NOA を動かし仕事に使いまし たが、何の問題もありません。いや、ひとつだけありました。USB プリンターには出力できるのですが、ネットワークプリンターに出 力できないのです。これは困ったなと思いましたが、結局わかった ことは今度の OS はプリンター共有機能が充実して、ここの設定が まずかったためだったことがわかりました。 では Jaguar になって変わったなと思うことをいくつか書いてみ ましょう。この原稿が載る頃にはいろいろなレポートが雑誌などに 載るでしょうから、ほんの印象記ということで。

○ Mail が良くなって嬉しい

明らかに快適になったと感じているのはメールです。進化した大 きな点はフィルタリングです。迷惑メールらしきものを見つけると 、茶色の迷惑メール印をつけて表示してくれます。最初は結構誤判 定もあるので、それらは「迷惑メールではないボタン」を押してお きます。逆に迷惑メールなのに判定されなかったものもあるので、 それらは「迷惑メール」としてチェックします。

Mail はこれらを学習していって次第にお利口になってくれるのだ そうです。現在でもそうおバカではないので、これは楽しみです。 Mailing list にいくつも参加していると、それらの振り分けをし なければなりませんが、これも複数の条件で細かく設定できるよう になりました。私は現在、3つのプロバイダーを使い分けています が、すべてこの Mail アプリの中で一緒に扱えます。

○ セキュリテイーの配慮が随所に

現在世の中はウイルスによる被害が後を絶ちませんが、OS 10.2 のコントロールパネルでは各マシーンごとのファイアーウオール機 能がつきました。もちろん、高度なものではありませんが、これで もちょっと安心と思います。

ただ最初は設定の意味が正確に理解できないので、前述のプリン ターで出力できなかったり、AirMac で接続している時に他のマシー ンが接続に来ると接続できなかったりなどの失敗もありました。近 いうちに解説本が沢山でるでしょう。 セキュリテイーについては「ゴンベが種まきゃカラスがほじくる 」できりがないのですが、今回のOS からは随所にそのあたりのこと を配慮した仕掛けが用意されており、Apple の真剣な取り組みが感 じられます。

○ Jaguar を入れてさらなる飛躍を

著明な差ではありませんが、全体の印象としてはサクサクと動く ようになり心地よいです。またボタンなどのデザインがさらに精緻 になり、小さな CD がくるくる回るNeXT 譲りのカーソルもやや大き くさらに格好よくなりました。とにかくとても美しい画面に、面食 いの私としては大満足しています。

さて OS が良くなったので、ハードの方もさらに充実させたいと ころです。電子カルテ NOA のサーバ用に Xserve を買おうと考えて いたのですが、Xserve はもう少し待つとRAID 5 あたりをサポート したもっと良いものが出るのではないかという感じもするので、と りあえず青白の PowerMac G3 に HD を追加してソフトウエア RAID 1 でしばらくしのぐことにしました。

そのかわり iMac 17 inch を注文してしまいました。念願の診察 室デスクのマシーンとして使う予定です。ショップでシネマデイス プレイなどと見比べて見たのですが、シネマデイスプレイ以上のグ レードですと診察室で使うには超弩級のデイスプレイに圧倒されて しまう感じがします。ただでさえ診察室に入って上の空の患者さん の意識をさらに遠い彼方へ持って行ってしまいそうです。

そこへ行くと、やや横長の iMac 17 inch は診察室のデスクにベ ストフィットするような感じがしました。首を自由に振れるので、 インフォームド・コンセントで患者さんに説明するにも便利そうで す。次はそのあたりをレポートしたいと思います。

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