わーくすてーしょんのあるくらし ( 337)

大橋 克洋

2021.03 平和を保つ心がけ

早朝散歩:大きく様変わりした渋谷駅前

◯ 国雖大好戦必亡天下雖安忘戦必危

これは山本五十六元帥が親友にあてた手紙などで好んで書いた言葉。「大国といえども戦いを好めば必ず亡ぶべし、平和といえども戦いを忘れば必ず危うし」と読みます。

今までこのコラムで何度もこのようなことを書いてきました。戦争を何としても回避するには、ただ反戦を叫んでも「絵に描いた餅」でしかない。もっと腰を落ち着けた覚悟と用意が必要。それに対し「現代社会の考え方は余りにも甘い」との危惧が強いためです。

ようやく民主の世の中を取り戻したミャンマーが、突然のクーデターにより軍事政権に制圧されました。軍事独裁政権による抑圧された暗く長い時代を知るミャンマーの民衆は、二度とあの時代を味わいたくない、民主の世に戻りたいという強い気持ちから、連日大規模のデモや職場放棄を行い抵抗しています。

これに対し軍事政権はデモに加わる民衆への発砲も辞さなくなっており死者も増加。国際社会こぞって強い批判を浴びせていますが、日本政府はだんまり。日本は第二次大戦終戦時の経緯などから軍事政権ともパイプがあり、世界でも日本こそがミャンマーの軍事政権を諌められる立場だそうです。私は現在の日本の政権を応援したいと思っていますが、先月もコロナに対する政府の動きに苦言を呈したように、今回の問題に対しても国際社会の先頭に立ってミャンマーの国民を守る動きをして欲しいと願っています。

ミャンマー軍部の突然のクーデーターは、自分たちが大敗した選挙に不正があったとの理由で行われました。これは米国大統領選挙でトランプが頑なに唱えていた文言で、私が恐れていたトランプの害毒が早くも海を跨いだ遠い国に強い影響を与えてしまったものと思っています。地球上のどこにいても情報を即座に共有できるグローバル化の時代にあっては、たった一人の人間の及ぼす影響がいかに広く大きいかという恐ろしい例と思います。

◯ 今月の歩術

ここのところ少しずつ早朝散歩の距離を延ばしつつあり、最近は1日平均8キロ歩いています。時々は10キロを超えるようになったので最近大きく様変わりした渋谷駅前まで足を延ばしてみました。往復14キロ少々。

以前は渋谷を周ってくることも時々あったのですが、以前のようにガンガンに歩けなくなった最近はそこまで足を延ばすこともなくなっていました。駅前に着いてみると以前あった横断歩道橋の形が変わっており、ビルの姿も大きく変化していました。学生の頃、参宮橋にある東京乗馬倶楽部で朝練のため、渋谷駅前からバスに乗ることがありましたが、当時バス停群のあった広場も上の写真のような姿になっています。渋谷駅周囲の工事はまだ進行中ですから、まだまだ変わっていくのでしょう。渋谷から恵比寿にかけ山手線沿いの細長く広大な地域が一挙に変化しつつあります。どんなものができるんでしょうね。

歩きの方は以前のように力強い歩きとはいえないものの、それなりに耐久性を持った歩きがができるようになってきました。これからはこんな形態で進んでいくんでしょう。

現在の歩きを具体的に述べると、歩きはじめ余力のある間は比較的普通の膝を伸ばした歩き方ですが、上り坂ではやや腰を沈める感じ後肢で安定的に全身を支えつつ、前肢を水平に浮かせ柔らかく前方へ着地、疲れてきた時の歩きも上り坂の要領。この歩き方だと歩きが長い距離になっても、速度は遅いが歩きを持続できる。

支持脚となる後肢1本で立っても全身がふらつかないこと。それには支持脚が地面にしっかり根を張ったような意念を持つ。それでいて支持脚がその場に居着くわけではない。滑らかに流れていく動きが大切。これは太極拳など中国武術での支持脚の使い方、いつ何処から押されても1本の支持脚で立っていられる安定性が目標。歩くこと自体が中国武術の練巧であるよう心がけたいもの。

◯ 今月のコロナ

緊急事態宣言による飲食店の時短営業が効果を及ぼしたようで、感染者数が次第に減少していきました。しかし今月中旬に入ると東京の感染者数は下げ止まりから漸増に変化、感染率の高い変異株も認められるようになりつつあるにもかかわらず、政府は1都3県における緊急事態宣言の解除を行います。

その理由として病院などにおける状況が改善されたからと述べていますが、世界に広がりつつある変異株や東京での感染微増傾向を考えれば、緊急事態宣言の解除は国民の多くに気の緩みを与え、再び爆発的な感染者数増加に至ることは間違いないと思っています。医療機関の小康状態も、感染増加に至れば即座に悪化することになります。既にフランスでは変異株急増により再び3度目のロックダウンが発令されたというのに、、

昨年の GoTo キャンペーンもそうでしたが、政府の判断は危機に対する優柔不断からようやく動くかと思えば、あえて国民の不安感を押し切り危機に足を踏み込むように思えます。

菅総理の人柄は悪くはないと思いますが、「専門家の意見を参考にして決める予定です」とか「緊急事態宣言は解除しても、感染対策はしっかり行っていきます」などの言葉に余りにも実態を伴わないのが問題と感じています。「有言実行」が求められます。

飲食店での感染が多いということで営業時短が行われていますが、これは飲食店に深刻なダメージを与えています。私は「時短」より「入店者数の割合を制限し、大声の会話などを慎むこと、店内の換気」などを徹底することが重要と思います。カウンター席などでも一人おきに座り間にアクリルのパーティションを設置、大声での会話を控えるなどすれば、かなり感染の危険性を減らせるでしょう。ただ、危惧されるのは、このような規制に従わず反発するやっかいな客。そういう意味では「時短は容易な対応策」ではあるのですが、、

あくまで基本を大切に、シンプルに「常に密閉・密集・密接を避けることの維持」を「簡潔・具体的・繰返し説明」し続け、国民の共通認識とする方が合理的と思っています。

◯ 画像会議に適したデバイスは

日本医師会医療情報システム協議会が毎年開催されます。昨年はコロナで中止となりましたが、今年は Web 開催。Zoom のような双方向性のものではなく、Web 画面に埋め込まれた動画によるもので、講演者や座長の多くは全国各医師会から参加していたようです。今回は300名ほどの医師会員が同時に視聴していました。

視聴にあたり、最近 FOD などで映画を視聴するのに使っている方法「iPhone12 で接続し、画像・音声を TV 画面にミラーリングする方法」を使ってみました。画像も音声も満足できる質で視聴できます。

試しに iPad で視聴してみましたが、やはりもっと大きな TV 画像の方が快適ということで、結局 iPhone 同様 TV へミラーリングすることになりました。

次に、書斎のメインマシーン Mac mini に接続した24インチのディスプレイで視聴してみました。ところが画質がかなり落ちる。iPhone + TV に戻してみると、こちらの方が画像もくっきり鮮明でずっと快適。やはり動画の扱いは iOS の方が格段に優れていますね。

図や動画などプレゼンなしの場合は多少画像が悪い Mac でも良いのですが、プレゼンを見るにはハッキリ・クッキリの iPhone + TV に限るという結論。月に2回、Google meet を使って画像会議を行っています。最初は MacBook や iPad を使っていたのですが、最近はいつも iPhone を使っています。音はワイアレス・イアホン。画像会議はこれが一番快適。ただし、プレゼンを伴う場合は画面の大きな iPad か iPhone + TV でしょうね。

今回どこの問題か、画像が止まってしまったり TV へのミラーリングが止まってしまうことが何回かありました。iPhone 側の Web を再読込みしてみたり、再立ち上げしてみたりと試行錯誤を繰り返し、ようやく TV 画像が復活。これで数分間、講演を聞き損なうことが何度かありました。

すでに臨床を離れ4年目になりますが、最新の医療におけるデジタル機器やソフトウエア環境などを知ることができたのは、予想外の収穫でした。主催者側は「来年は Web 開催でなく対面でできるといいですね」とのことでしたが、私としては自宅から参加する方が快適に感じました。Web 方式に欠けるのは、いつものような質疑応答がなかったこと、会場や懇親会で旧知の先生方と「やあ、やあ」と声を交わすことができなかったこと。

講師の中に昔々の医療情報学会などで懇意にしていた大学関係の先生がお二方ほどおられたのには、とても懐かしい思いでした。

◯ 卒業のとき

TV の卒業ソング特集を観ていて思ったこと。友と過ごした楽しい日々を失い難く胸に迫るものあり、卒業式で涙を流すということはよく聴く話ですが、、

自分の卒業式を思い返してみると、小学校・高校・大学、いずれもまったくそのような思いは浮かびませんでした。

小学校卒業に当たっては、それなりに楽しい思いや仲の良い友達も大勢いたのですが、恐らくそれよりもこれから始まる麻布学園中学への期待の方が大きかったのかと思います。小学校は私の家の目の前でしたし、、

麻布学園は中高一貫校で、中学卒業の節目はありませんでした。麻布学園卒業に当たっては小学校とは逆に、高校生活には離れがたく楽しい思い出や親しい友達もあまりなく感慨もありませんでした。高校時代ただ一人の親友だった安藤勝也とは鉄棒で切磋琢磨し、高校時代の最後は鉄棒だけが生きがいでした。大学で体操部に入ればいいかと思ったりしていました(しかし慈恵医大に体操部はなく麻布体操部の同級生のいる東大駒場体操部の練習場で何度か練習させてもらいましたが、やはり他学には通いにくく、慈恵医大馬術部に入部することになりました)。

慈恵医大卒業に当たっては、楽しい思い出や親しい友人が何人もいましたが、卒業しても大学の附属病院に残る人間が多く勤務先も当面同じところで、離れがたく思うような感慨はありませんでした。

それより大きな感慨を感じたのは、青春の全てを昇華させた馬術部の現役生活から卒業してしまうこと。こちらの衝撃はとても大きいものでした。卒業後数年は合宿や競技会に皆勤で参加しましたが、試合でチームの輪に入れなくなったことが無性に寂しかったりしました。私が慈恵医大卒業ではなく、慈恵医大馬術部卒業と称する所以です。

◯ 戻ってくるか SONY

SONY から EV:電気自動車が発表されました。地球温暖化を止めるため脱炭素化が叫ばれ、世界的にこれから自動車はガソリン・エンジンから電気モーターへの流れになりつつあります。EV になるとエンジンだけでなく、トランスミッションや補機類なども大幅に簡略化できるため、自動車製作のノウハウを持たない企業の参入が容易になると云われています。Apple が自動車を開発しているという噂も、、

SONY は EV 発表とともに、ドローン「Airpeak」を初公開するほか、自立型エンターテイメント・ロボット「aibo」も発表、同社が推進する AI ロボティクス事業の取り組みを包括的に紹介していくそうです。

ついに SONY もその流れに戻ってきたかあ、、もう何年前だったか忘れましたが、このコラムで SONY が aibo などエンターテイメント部門を捨てたことを嘆きました。SONY が米国人の社長を迎えた頃でした。また、その数年後に同じくこのコラムで、SONY がもっとも得意とすべきロボット部門などを捨てたことで SONY から未来が失われたと嘆きました。でも、ようやく SONY がまたこの方向に舵を切ったことをとても喜んでいます。

SONY、Apple とともに昔から私の大好きな企業 HONDA もあの特徴的なロボット ASIMO の開発をやめたとのニュースが最近ありました。HONDA のことですから、SONY が aibo を捨てたのとは違う事情と思いますが、世を牽引していた ASIMO を捨ててしまうのはとても惜しい感じがします。最もこの分野の進歩はめざましく、最近では Boston Dynamics の開発する ロボット Atlas などの方が先を行っているということもあります。

◯ と思ってたら HONDA も?

SONY の「凋落から復帰の兆し」に期待するとともに、HONDA にはそのようなことはないだろうと書いていたら「なぜホンダはここまで落ちぶれたのか?頼みの綱のフィットはTOP10圏外、国内シェアは下がり続け10%を着る寸前に」という記事。

これを読むと、HONDA は「他メーカーが真似できない独創的な車を創るメーカーだったのが、最近は市場に媚びたクルマを作るようになりファンから見放されたのかも」「ホンダのデザインは凡庸になった」「ホンダのクルマはもはや面白くない」「誰からも好かれるようにすれば、誰からも好かれなくなる」。確かにその通りと思います。本田宗一郎さんの息のかかっていた頃の HONDA は、社内で商売と関係のない発明大会をやったり、皆に夢を与えるロボット ASIMO に力を入れたり、元気だった頃の Apple や SONY とともにドキドキして一目惚れするような製品を発表していました。特に宗一郎さんの心意気で自動車業界に参入した頃は、HONDA S800、HONDA N360、HONDA1300、HONDA CITY などなど心躍る車たちの登場に胸踊らせたものです。

現在ではむしろトヨタが逆に GRヤリスはじめ、面白いクルマを作る自動車メーカーになっています。かつてトヨタの作るクルマは「誰からも嫌われないことに注力した凡庸なクルマ」ばかりでした。しかし現在の、豊田章男社長になってからは、モータースポーツに力を入れるとともに次々と魅力的なクルマを発表、トップシェアとなっています。

やはりメーカーを率いるトップのセンスや心意気が、最終的アウトプットとしての製品を左右するということなんですね。私の好きな豊田章男社長も、最近では何かと叩かれる記事を散見するようになりました。「出る杭は打たれる」でしょうが「出過ぎた杭は打たれない」ということもあります。頑張って欲しいと思います。

残る私の好きなメーカー Apple も、そろそろ Jobs の息もかからなくなりつつあり、このコラムで何度も書いたように面白いものを出すメーカーではなくなりつつあります。いつの日か HONDA にも Apple にも SONY のような復活の兆しが見えることを待ち望みますが、まあその頃には私はとっくにフェイドアウトしているんでしょうね。

◯ 割箸建築

久しぶりの割箸建築。土地価格のやたら高い東京に住んでいる悲しさ、ケチって極力狭い土地に建てることばかり考えてきました。しかし、どうせリアルな土地を購入するわけでもないし、そんな制約は外して考えることにしました。ということで、今回の建築は比較的ゆったりしたものになっています。南向きの屋根の一部はガラス張りで、冬の太陽光を十分室内にとりこめるようになっています。夏場はガラスの下に帆布か遮光ネットなどのシェードを展開します。ゴーヤなどの蔦類を這わせるのもありかな。太陽光発電も良いな。

屋根の一部を外した写真。建物は平屋ですがロフト・スペースがあり、納戸のほか、ちょっとしたワークスペースとして使えるようになっています。南側には一間幅のフローリングのデッキがあり、左端は物干しスペースとして使えます。

屋根をすべて外した写真。左上から浴室・脱衣洗面室、洋室、ウオークインクローゼット、洋室、和室、客用トイレ・玄関、左下からトイレ・パントリー、キッチン、居間。

使った建材は、割箸、アイスクリームの芯棒、ダンボール、厚紙。ダンボールに貼る白い厚紙は名刺を使うことが多い。屋根や外壁に使うガルバリウム鉄板に見える建材など欲しいのだが、うまいものが手元にない。家族が使った割箸やアイスクリーム棒なども、全て洗って私の手元に建材として保存しています。

割箸建築をはじめた頃は、彫刻刀やカッターで割箸を切っていました。しかし、これでは余りにもキツく効率悪いので、ノコギリやノミがあると良いなあと Amazon を検索してみたらありました。模型用のミニ・ノコギリがあるんですねえ。ノコギリを使う際、割箸をしっかり保持するための万力:バイスも購入しました。これで大分作業が楽になりました。

今のところ割箸はそのまま使っているのですが、ちゃんと太さや表面をそろえるための工具がないかなあと思っています。必要な治具は自作してしまうのが良いんでしょうけど、、

これが設計図です。自作の Web アプリで作図したもの。10年以上前まで Mac で動く比較的安価な CAD アプリを使っていたのですが、Mac OS のアップデートとともに使えなくなってしまいました。他の CAD アプリを探してみましたが、いずれもプロ用の本格的なもので、かなり高価で手が出ない。「それなら、自分で作っちゃえ」ということで、使い慣れた Web アプリとして作成しました。Web アプリとあって機能は限られていますが、そこそこのものは描けるので、とりあえず満足しています。

これで自分の好きな建築設計を思う存分でき、どっぷり漬かって楽しんでいます。

桜散り敷く目黒川沿いの遊歩道

これは日々の生活で感じたことを書きとどめる私の備忘録です