2004.07 「おっくう」ということはどういうこと?

わーくすてーしょんのあるくらし (82) 

2004-7 大橋克洋

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ある程度の年齢になると「おっくうだ」とか「面倒だ」と 感ずることが多くなります(まあ若い時でもありますけどね)。 そもそも、これがどういうことなのか最近明確にわかりました。

年齢のせいで、ちょっと屈んで物を拾うような動作が 億劫になっているのに気づきました。 「それじゃあ、物を拾う動作をせっせとトレーニングしよう」 と私のへそ曲がり精神がそそのかしました。

ところがどうでしょう。しばらくすると、そのような動作が まったく億劫でなくなっているのに気がついたのです。 背筋力がついたため、屈むのが億劫でなくなったということです。 「ふーん、なるほど。億劫ってのは能力が落ちている ってことなんだ」と合点がいった次第です。

○ リハビリかねたプログラミング

そういえば最近は 以前ほどプログラミングに没頭することがなくなりました。 時には億劫でさえあるのです。 以前はストレスが強い場合、 プログラミングに没頭することでストレス解消ができました (人によっては、 プログラミングこそがストレスという場合も少なくはないでしょうが)。 まさに、メシより好きなプログラミングだったのに。

「こりゃあ、いよいよ頭も駄目かいな」と思いつつ、 試しに中学の頃から大好きだった建築設計をやってみました。 これが全然大丈夫なのです。億劫でもなく、 昔のようにとても楽しく図面を引けます。 なるほど、創作能力は落ちていないんだなということがわかりました。

そこで、都医理事の忙しさにかまけ、 やや離れ気味だったプログラミングを、 頭の体操的に少しずつやりはじめることにしました。 ただプログラミングの問題点は 「ソース全体を一旦頭の中のメモリー上に展開してから、 エイやっとやらなければならない」ことです。 若い時から記憶力には強くなかった私ですから、 しばらく離れていただけですっかり忘れてしまっている部分も多いのです。 プログラミングに必要な 「ソース全体を頭の中へ展開する」作業が 億劫の原因であることがわかりました。

そこでリハビリと楽しみを兼ね、 Objective-Cで書いてある電子カルテのサーバ部分を Java でぼちぼちと書き直す作業に入りました。 さあて、どのあたりで形になるんでしょうかね。

読者の皆さん、日頃「億劫だ」とか「面倒だ」と感じていることはありませんか? そんな時は、その億劫なことばかりトレーニングしてみましょう。 力がつくことにより、それが解消されます。

○ COMINES熊本2004

COMINES のシンポジストとして7月17日(土)、 18日(日)と熊本へ行ってきました。COMINES は全国の医師会関係で 情報に興味のある方の年に一回の集まりです。同じようなものに全国医師会医療情報連絡協議会というものがありますが、 そちらよりは仲良しグループという意味合いがやや濃いようで、 演題発表の他にディスカッションに時間をとるのが特徴でしょうか。

「火の国」熊本の焼けるような日差しの下の鶴屋百貨店

今年のCOMINESは熊本市の鶴屋百貨店東館7階ホールで開催されました。 え?百貨店と思いつつエレベータを降りてみると、 立派なホテルのワンフロアー風の広い会場でした (夕方、会議が終わってエスカレータを下ると、 その下は通常の百貨店の売り場フロアーが広がっていて、 その落差が何とも面白かったです)。 横道にそれそうなので本題に入りましょう。

○ COMINES 第1日目

7月17日(土)は13:15から「IT化で医師会の何が変わったのか」というメインテーマで行われました。

日医の松原常任理事から日医としては「ORCA project の継続」「CA 局の構築」 「デビットカードでの窓口決済 」「保険証の認証機構の作成」 などについて今後進めてゆくとの話がありました。

京大の吉原教授からは、宮崎・熊本の「ドルフィンプロジェクト」、 東京の「HOT project」、これから京都で動き出す「舞子ネット」 などを交え、今後それらの連携をはかる「スーパードルフィンプロジェクト」 の構想などについて話題提供がありました。 吉原先生とはちょっとお話をしようかと思っていましたが、 京大に導入中のシステムで超多忙なようで、 講演後すぐ京都へトンボ返りされるということでした。

中央区医師会の安藤理事からは、 NTT の映像会議サービスを利用して会場の画面と 東京その他を結んだ同時中継によるプレゼンがありました。 私としては見慣れた会議ですが、 初めての方々にはかなりインパクトがあったと思います。 高価な映像会議システムを利用するより、 パソコンと数千円の Web camera を利用した このようなインターネット会議の方がずっと現実的と思います。 画像は粗く動きもカタカタですが、現状ではこれで充分です。 ただ、発言のタイミングなどが難しいなど、 やや隔靴掻痒の感は否めませんが、 もう少しの辛抱で技術革新も進むでしょう。

○ COMINES 第2日目

7月18日(日)は10:00から 「ORCAの普及には何が必要か」というテーマでのシンポジウムです。

私は結構そそっかしいところがあります。 数カ月前、熊本医師会の COMINES 事務局から講演依頼を受けた時、 てっきり HOT project について話をすればよいのだと早合点して 資料を作ってきたのですが、昨日の講演を聞いていて重大なことに気づきました。 私が用意してきたプレゼンはまさにこの第1日目のテーマであって、 私のしゃべる2日目のテーマは ORCA であることに気づいたのです。

そんなことで、 夕方からの懇親会もそこそこに抜け出してホテルへ帰り、 急遽プレゼンの作り直しです。昔のスライド時代なら えらいことでしたが 今は楽です。持参のノートパソコンで、プレゼンソフト KeyNote や 図譜作成ソフト OmniGraffle など、あるいは Web で探した写真などを 使って無事プレゼン資料を作り直すことができました。

という6名のシンポジストの話題提供があり、 ディスカッションが行なわれました。

私の方からは ORCA project が立ち上がったころからの悲願として、 「ORCA を医事計算サーバ」として独立運用できるようにして欲しい。 そうなれば CLAIM/MML で通信することにより、 色々な電子カルテと接続することができるので、 ORCA 開発チームも GUI に関する負担を軽減でき、 電子カルテを介しての ORCA 普及も促進される」 ということをお話しました。

他の方々からは、「地域によってはサポート業者が少ない」 「マニュアル類をもっとわかりやすく」 などのお話がありました。 この Web でレポートすることを考え、 もう少しメモしておけば良かったのですが、 現地では考えつかず聞き流してしまいました。 あとの記憶は不正確なので、こんなところで済みません。

COMINES の場合、発表よりもむしろ後のディスカッション に時間をとろうというスタンスはとても良かったと思います。 そんなことで座長の飛岡先生は、 演者の講演時間オーバーにヒヤヒヤされていたようです。 私は早口でしゃべり何とか時間内におさめたのですが、 最終的にはディスカッションの時間がかなり少なくなり 昼食時間まで食い込むことになりました。 シンポジストも壇上で食事をしながらのシンポジウムと なりましたが、これも結構面白いですね。 昔々 UNIX ユーザ会の BOF で座長はじめ缶ビールを 飲みながらのディスカッションを憶いだしましたが、 残念ながら今回缶ビールは出ませんでした。 盛り上がりすぎても困るかも知れません。

○ 「火の国」熊本

日本は昨年は冷夏でしたが今年は記録的な猛暑で、 東京も大手町で39.5度、その夜は30.1度を超える熱帯夜という どちらも観測史上初めての記録が出たばかりです (その夜の東京は午後10時を過ぎても、 まさに外は「熱したフライパンの底状態」でした。いやー凄かった)。 東京には珍しいフェーン現象だったそうです。

この時期に「火の国」熊本行きということで覚悟を決めました。 しかし考えてみると、空調室外機や激しい交通機関、コンクリートジャングル の東京より、熊本の方がましかも知れないと考え直しました。 行って見ると思った通りで、 抜けるような蒼い空に入道雲の熊本は充分暑く、 市内でタクシーを待つ時などはまさに「火の国」を実感しましたが、 気温は東京より2,3度低く湿度も高くなかったようです。

少し早めに着いたので宿泊の熊本キャッスルホテルに荷物を置き、 昼食をとりに市内に出ました。 とにかく暑いので涼しいビヤホールでもあると良いのですが、 商店街を大分歩き回っても適当な店がみつかりません。 ふと横道に入ってみると道の角に、 GRILL de GYAN という面白い名前の店があります。 スペインかポルトガル風の色合いの入り口のメニューに、 「西欧風おばんざい」という文字が目にとまりました。 先日来の京都で「おばんざい」にはまっているので、 これで決まりです。

明るい外から入った中は暗く、 テーブル席とカウンターがあります。 まだ正午直前だったためか、 テーブル席には2組位のお客しかいませんでしたが、 私一人なのでカウンターへ座りました。 まず生ビールで一息ついたのは当然として、 「西欧風おばんざい」というのは フランス料理的なものを懐石料理風に仕立てたもので、 なかなか美味しかったです。

食事も終わりのころ、 カウンターの向こうでお嬢さんが何か言っています。 最後に頼んでおいたコーヒーを「もう出して良いですか」 と聞いているのだと思って「お願いします」と答えました。 すると、ご飯のお代わりが出てくるではありませんか。 最近はダイエットを心がけており、 米は余り食べないようにしているのですが、折角ですのでお代わりしてしまいました。 後でマスターから「お代わりまでして頂いてありがとうございます」 と言われたのは、何か訳があったのでしょうか。

飛び込みで入った店だったのですが、 京都の「極楽トンボ」同様、今回も大当たり、大満足の店でした。 久しぶりにご飯を2杯もお代わりしてしまい、 夕食はおかずをつまむ位で済んでしまいましたが。

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