2003.05 Web Application のすすめ

わーくすてーしょんのあるくらし (68)

2003-05 大橋克洋

< 2003.04 SONY の PDA CLIE 三昧 | 2003.06 MacOS X 10.3 (Panther) 発表さる >

今月から東京都医師会(www.tokyo.med.or.jp)の理事を仰せつかり ました。入って感激したことは、この数少ない理事の全員が本当に 会員のため都民のために、本音で都内の医療の向上をめざして精力 的に動いていることです。会議や理事執務室でも、ユーモアを飛ば しながらばりばり仕事を進めます。理事者同士とても和やかで仲が 良く、ベスト・チームという感じです。

月曜から金曜までほとんど毎日東京都医師会へ行く必要があるの で、午後は休診とせざるを得ません。ここが自分としては一番痛い ところです。経済的に成り立つかどうかが心配なところで、お陰で 就任当初は深刻な家庭争議にまでなりました。 そんなことで、果たしてこのエッセイのネタがあるのかも心配で したが、ネタは結構どこにでもありそうです。

○ いつでもどこでもスケジュール表を読み書きしたい

都医師会の事務室には LAN が引かれており、理事者はそこにノー トブックを接続できます。支給品の Windows ノートブックがあるの ですが、当然のことながら私は自前の PowerBook G4 12インチを持 って歩いています。

都医師会の仕事はハードですので、スケジュールは時々刻々と更 新されます。本来なら MacOS X のスケジュール管理ソフト iCal を 使えば、どこからでもインターネット越しに自分のスケジュールを いろいろなマシーンで同期させられます。私も以前 iCal をしばら く使っていたのですが、同期エラーなのか折角ため込んだデータが すべて真っ白になるというアクシデントがあって以来、iCal をやめ てしまいました。再び従来から使ってきた手作りのスケジューラを 使っています。

しかし、これはあくまでも通常のファイルとして保存するもので、 インターネット越しにデータを共有するようにはできていません。 丁度 WebObjects も大分手の内に入ってきたので、WebObjectsで Web Application としてのスケジューラを作ってみました。簡単な パスワードでインターネット上のどこからでも使えます。これでど こからでも自分のスケジュールを共有して読み書きできるようにな りました。便利です。 しかしいずれは iCal をインターネットで共有する方がPDA との 同期という面からも良いのだろうと思っています。

○ ついでに住所録やファイルもネット共有

これに勢いを得て、住所録も出先から読み書きできるようにしま した。こちらは元々 DB に入っているものを自作アプリで読み書き していたので、インタフェースを WebObjects にすげかえるだけで 簡単に移行できました。

医師会で作成する色々なメモや書類は持参の PowerBook で行って いるのですが、これらの書類も自宅のファイルサーバと同期できた 方が便利です。ということでファイルサーバもWebObjects で作って みましたが、こちらはまだ完全なものになっていません。

○ 東京都医師会の IT 化された理事会システム

都医の理事会室には各自一本ずつ Ethernet ケーブルが配置され ています。理事会になると各自に支給されたノートブックを持参し ネットワークに接続します。 理事会資料には紙の資料も多少はありますが、ほとんどは電子的 にファイルサーバへ蓄積されており、これをノートの画面で見なが ら議事を進めます。勿論パソコンに触ったこともない理事者の方も おられたと思いますが、現在何の支障もなくシステムは運用されて います。 ただ私が非常に不便に思ったのは、このシステムが Windows 上の 専用アプリでしか動かないことです。これがもし Web Application として実現されていれば、OS や機種に依存しませんので、私の持 ち歩く PowerBook でも使えるのにと。

幸いなことに、私の担当は医療情報システムとなりました。遠か らぬうちに、これらを Web からパスワードだけでアクセスできる方 式にしたいと思っています。そうなれば理事会の前に自宅から資料 を見ておくこともできますし、各地区医師会からも要望の多い「資 料を早く送って欲しい。資料は電子的な形で欲しい」という要望へ の対応もできます。ファイルサーバに電子保存された資料は原則永 久保存し、何年前のものでもキーワードで検索できる書庫にしたい と思っています。

もうひとつ不便なのは、理事会になると執務室から会議室へ各自 大きなノートブックとともに電源アダプターやマウスを持ち歩くこ とです。ケーブルがごちゃごちゃしてとても扱いが面倒、何とかな らないかとの声はあります。無線LANにすべきでしょうが、ノート一 台ずつLAN カードも買い足さねばなりません。このあたりが合意を 得られるどうか。

○ SeaGaia meeting 2003

今年の SeaGaia meeting は、恒例の宮崎のリゾート地 SeaGaiaで 5月9日(金)、10日(土)の2日間開催されました。これに先立つ8日 (木) MML(Medical Markup Language)のプログラマーズキャンプが開 催されました。後述するように SeaGaia の経営が縮小されたので、 今年は宮崎医大キャンパスが会場です。ここで行われるのは実に初 回の電子カルテ研究会以来8年ぶり、とても懐かしく思いました。さ すがにキャンパス内は無線LANが設備されていて、持参の PowerBoo k に電源を入れてみると DHCP サーバが生きており、そのままイン ターネットに繋がってしまったのは感激でした。

ここ何年もつぶれるつぶれると言われていた SeaGaia も経営母体 が変わりながら細々と続いてきました。しかし、とうとう今年はい つも昼食をとる屋台長屋(?)もなくなってしまいました。従って昼飯 は前もって予約しておいた折り詰め弁当です。 幸い会場のホテルや宿舎のコテージ(いわゆる西洋離れ)は健在 でしたが、テニスコートやオーシャン・ドームなども店じまいでし た。来年の開催が危ぶまれます。こんなに広々として美しい緑に囲 まれ立派な施設のそろったリゾート地が、こんな状況になるとは。 どうにかならないものでしょうか(現状ではわれわれにとって、こ の贅沢な空間を貸しきり状態のようなもので嬉しいのですが)。

「空港から近くて便利」「広々として美しい緑のリゾート地」「 人が少ない」「立派な会場がある」「宿舎は夜中まで語り明かして も周囲から苦情の出ない西洋離れ」「価格も高くない」「繁華街か ら隔離されている」など、全国を探してもこれだけ「電子カルテ合 宿」に向く場所はないと思うので、ここがなくなると本当に困りま す。恒例の懇親会もオーシャン・ドームがなくなってしまったので 、宮崎市内のレストランを借りきって行いました。8年ほど電子カル テ研究会で宮崎へ来ていますが、宮崎市内に入ったのは私は初めて です。

私も Apple の PowerBook G4 12インチを持参したのですが、今回 はこの機種を持参した人がとても多かったです。Mac を持ってきた 人の殆どがこの機種ではないかというほどでした。重量がもうちょ っと軽くなれば、さらに言うことはありませんが、このように旅行 へ持参するにも 12 インチは適当な機種と言えます。

さて肝心の meeting ですが、今年のテーマは「地域医療連携型の 電子カルテ」でした。最近 SeaGaia の ML で戦わされてきたデイス カッションをテーマに思う存分バトルさせようという企画でしたが 、会場では ML 上ほどの激しい論争はなかったように感じました。

○ 何度も書きますが、PDAに電話機能が是非欲しい!!

前回、「PDA に電話機能を組み込むことは容易と思いますが、日 本では他のメーカーからもそのような製品がでてこないところを見 ると、何か法的な規制でもあるのでしょうか」と書きました。携帯 電話の PDA 化は少しずつ進んでいますが、あの画面サイズでは限界 があります。

仮に法的な規制があるのなら、「CLIE は PDA ではない。携帯電 話だ」という方向性はとれないのでしょうか。つまり CLIE サイズ の携帯電話を作ってしまい、中身に CLIE の機能をそっくりそのま ま載せるという逆転の発想はどうなのでしょう。 携帯電話がデジカメ顔負けになってくる昨今、このような方向か ら攻めるやり方もあるのではないかなと、フト考えました。

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