2006.01 技術が進歩しても変わらない現実

わーくすてーしょんのあるくらし (155)

2006-1 大橋克洋

昨年末「ALWAYS 三丁目の夕日」という 1958年頃を再現した映画を見ました。 その時代を通過して来た人間にはとても懐かしいものです。

ラジオが TV へ、氷室つき冷蔵庫が電気冷蔵庫へ、 タライと洗濯板が電気洗濯機へと、置き換わる様子を映し出していました。 静かな日本間で、柱時計だけが「コッツ、コッツ、、」と時を刻む音に、 「そうだよなあ、あんな感じだったよなあ、、」とか 妙に昔を憶いだしました。 音とか、匂いとか、変なところで記憶と密着していますね。

終戦後しばらく、畳にちゃぶ台と茶箪笥、ラジオの生活で 大きな不自由もなく生活できていました。 現在の生活より時間がゆっくり流れ「生きている」という実感がありました。人間も素朴でした。 技術革新って、何なんでしょうね、、、と、 2006年初頭にあたって考えています。

○ 技術が進歩しても変わらない現実

19年前の第1回「わーくすてーしょんのあるくらし」を振り返ってみました。 技術革新は猛烈に進みました。実生活はどうなんでしょうか。

「オーディオにおけるマルチ・ベンダーの世界のように、 コンピュータの世界も異なるメーカー同士の互換性を確立すべき」と切望しています。 これは余り改善されていません。今だに私が声高く叫んでいるところです。 「FAX はいずれ e-mail などと置き換わり不要になる」と予想しています。 これはまだ部分的にしか置き換わっていません。 いずれは移行するのでしょうけどね(少なくとも私のところでは FAX はコンピュータで受信し、 私宛メールに添付され届くようになっています)。

「ソフト屋さんの頭は一般的にかなりハード」というのも、現在も変わりません。 「コンピュータにはもっと遊び心がほしい」「楽しく、簡単に!」などというのも、 今だに追求を続けています。 コンピュータ基本部分については、 当時想像もできないような、巨大なメモリー、HD 容量、 CPU処理速度、通信速度、ネットワーク回線、高度なソフトウエア、 そしてそれらを、 当時は想像できないような低価格で手に入れられます。

しかしわれわれの生活や仕事が、当時想像もできないほど楽になったのでしょうか。 そのような実感は全くありません。これこそが人間の欲深さなのでしょう。 「シンプル・ライフ」を追求していますが、一旦手にしたものを手放すのは、 なかなか難しいです(つまりは欲張りということなんでしょう)。 今後100年を経ても、 ある面で われわれの生活は現在と何も変わっていないのでしょうね。

○ MacWorld Expo 2006

恒例の MacWorld が今月9日から13日までサン・フランシスコ Moscone Center で行われています。 今回の目玉のひとつは iWeb という初登場のソフトウエアや、 一連の i にはじまるネーミングのソフトウエアのアップデートですね。 iWeb は格好よい web site を簡単に作れるというものです。 あらかじめ用意されたテンプレートから 好みのデザインを選んで行くという、 最近のアップル一連のソフトウエアに共通する手法を使っています。

もうひとつの目玉がハードウエアで、 Intel CPU を積んだ iMac と MacBookPro でした。 「Intel 搭載ノートの登場時期が予想より早かった」という嬉しい想定外を除けば、 本当の意味でのサプライズは今回ありませんでした。 MacBookPro にはちょっと食欲をそそられますね。

しかし、手持ちの PowerBook 12inch が元気よく働いてくれているので、 私が MacBook を購入するのは、少なくともまだ半年以上先でしょう。 重量が 2kg を割っていたり、価格が 20万円を割っていたり、 バッテリー持続時間が10時間近くなっていたりすれば、 衝動買いの可能性もないではなかったですが、、、 それにしても、iMac といい MacBook といい、 コスト・フォー・パフォーマンスは大したものです。

MacBook というネーミングはちょっと意外というか、 Jobs にしては面白みのないネーミングだなという感じですが、、、 廉価版マシーンが i で始まり、パワフルなマシーンが Power で始まるというルールに Mac で始まるルールを加えたということは、 今後現れるタワー型マシーンは単なる「Mac」というネーミング ?

Jobs のプレゼンの最後に Jobs と Wozniak の二人の 若い頃の写真を背景に「April 1, 1976」と「April 1, 2006」と 2つの写真が対比されていました。 丁度30年目を迎える節目、今年の4月に何かサプライズが ?

○ Apple の対応に感激

この MacWorld 開幕の2日前、 ビデオの編集がしたくて iMovie や iDVD の入っている iLife '05 を on line の AppleStore で注文しました。 後から考えれば MacWorld での発表の様子を確認してからにすればよかったのですが、 MacWorld のことがまったく頭になかったのと、どうしても編集ソフトが早く欲しかったのです。

、、、で、MacWorld での Jobs の基調講演を聞くと、 ガーン、iLife がバージョンアップということではないですか。しかし 「まあ、1万円もしないソフトだし、旧バージョンでも仕方ないか、、」 と諦めていました。

しかし注文して数日経てもモノが届きません。 5日ほど経ってからでしょうか AppleStore からメールが届きました。 「2006年1月11日、アップルは本日、数々の賞に輝くデジタルライフスタイル統合アプリ ケーションの過去最大のアップグレードとなる iLife '06 を発表しました。 これに伴い、現在お客様よりご注文をいただいております製品を変更し、 最新版にてお届けをさせていただきます」とのメールです。偉い、Apple !!

○ 注意力欠如障害 Attention Deficit Disorder:ADD

CNET ニュースは IT 関連の面白いニュースが満載で、 毎日のように愛読しているニュース・サイトです。 「マルチタスクで人間の知力が低下する? -- 情報化時代のアイロニー」 というタイトルが目にとまりました。 若い頃からそそっかしいところのある私ですが、 年齢のためか最近それが助長されているような気がしていたので、 興味をひかれ読んでみました。

過去10年以上にわたり、 この問題について研究を続けてきた米国の精神科医 Dr.Edward Hallowell による研究結果です。 コンピュータ、電話をはじめとする様々な情報機器から絶え間なく、 しかも容赦なく情報が流れ込んでくる中で、 それを並行処理しようとストレスに耐えて努力することが原因で、 人間の知力が弱まったり、注意力欠如特質(Attention Deficit Trait: ADT) になってしまうというものです。

ADT は ADD の一種だが 現代生活の結果生ずる後天的なもの。 あまりに多くの情報を受け入れたり処理することに忙殺されるため、 気が散ったり、イライラしたり、衝動的になったり、落ち着きを失うことが増える。 それが継続すると仕事の成果も上がらなくなる。 お手玉で、自分が扱える数より1つ余計に玉をさばこうというようなもの。

グローバルな競争の影響を受ける企業などが ADT の影響を受けやすい。 沢山の患者を相手にし、山のようなデータに目を通し、 大量の書類作りに追われている医者もそのひとつだそうです。 うーむ、やはり 、、、 最近はそれに加え、例え不可抗力のミスであっても、 結果が悪ければ裁判で責められるというストレスが、 それに輪をかけています。

この状態にハマってしまうと、 忙しく絶え間なく仕事をこなしているように思っていても、 実際には「ハムスターのように同じところを走り続けているだけ。 創造的な仕事をしているわけでもなく、仕事の能率が上がっているわけではない」 ということになります。 これを回避する方法のひとつは、 1ヶ月のうち何日かは職場を離れて別の場所へ行き、 電話もメールもない連絡のとれない状態にして、 ただひたすら考えることだそうです。

やはり「仕事は楽しくしなければならない」 「仕事には遊びが必要」など、かねてからの私の持論を再認識した次第。 うーむ、最近は「遊び」が少なくなっているのかな? それなりに仕事や生活を楽しんではいるのですが。

○ 家が建ちました

昨年11月に建てはじめた家がとりあえず完成しました。 割り箸の柱、アイスクリーム棒の床、名刺の壁など を建材にした建築です。 やはり、新築の家は良いですね。

ADT を避けるため(?)、 正月休みは昼間からお銚子をつけてお節料理を食べ、 TV を眺めてぼーっと過ごしました。 お陰で折角スリムにしてきた体重があっという間に 2kg も増えてしまいました。休みが明けたらまた頑張らなきゃね。

縮尺1/100ですと、家の中を眺めるには、ちょっと小さいかなとも思いますが、 造作をアバウトにできるとか、梁を割箸建材一本で通せるとか、 そして設置場所をとらないという利点があります。

○ 今月の健康レポート

昨年暮れまで、外出にコートを着ないで済ませることができました。 年が明けてもいけそうな気がしたのですが、 会うひと皆に「大橋先生、コートなしですか?」と聞かれます。 余り「変な人」に見られるのもどうかということで、 1月からはコート着用で東京都医師会へ出勤するようにしました。 「やはり大橋先生もコート着るんですね」と、ようやく皆さんに安心してもらえたようです。

しかし今のところ、着ているコートは一番薄くて裏地を抜いたものです (意地を張っているように見られるのも嫌なので、 人の目に見えないところでやることにしました。 まあ、意地を張っているというのは事実でしょうけど、 自分としては自己鍛錬のつもり)。 これでも風をある程度シャットアウトしてくれ大分楽ですね。 今シーズン東京に初めて降った雪の夜だけは、厚めのコートを着ましたけど、、

日本全国例年にない豪雪の中で東京だけ降らなかった雪ですが

21日にようやく降りました。中原街道、平塚橋交差点。

大分身体ができてきたようです。 就寝時も厚手の毛布一枚に、上半身だけ夏掛けを重ねています。 ちなみに、寝室は暖房なしで、朝日を浴びられるようカーテンは開け放しです。 筋トレをするようになる前、冬の季節は就寝時に足が冷たくなっていました。 これはまったくなくなりました。 「歩く」ことによって下肢の血管が発達し、循環がかなり良くなったためでしょう。

頭も「筋トレ」が必要ということで、久しぶりにプログラミングをしてみました。 WebObjects で最終月経から分娩予定日を計算し 暦を表示する web application を作ってみました。 プログラミング環境 Xcode の使い方を一部忘れてしまい、最初ちょっと苦労しました。 しかし、この程度のこじんまりしたプログラミングは、 この年齢(3月で64歳)でもまったく問題ありませんね。 今後は「頭の筋トレ」も毎日の運動メニューに加えたいと思います。

コンピュータ仲間の鈴木君がせっかく作ってくれた 電子カルテサーバの試作版があるのですが、 まだ手をつけるところになっていません。 こいつを鈴木君と一緒に何とかしたいものです。

○ 今月のちょっと不健康レポート

1月最後の日曜は、下痢で一家全滅でした。 土曜の早朝から娘が嘔吐と下痢でダウン。 家内も気持ちが悪いと言っていたのですが、 私も午前の外来をやっている頃から、微かにムカムカ感があるような気がしてきました。

昼を過ぎてそれは本格的になり、 私は嘔吐こそしませんでしたが、完全に水状態の下痢。 午後からの会も、ムカムカ気持ちが悪くて懇親会は失礼して帰宅しました。 こういう時は絶食が一番ということで、水分のみ補給して早めに床に就いたのですが、 それからが大変。 朝までに5回もトイレ通いです。水道の蛇口をひねるような下痢。 その日はそんなに食べても飲んでもいないはずなのに、 これでもか、これでもかと良くでました。

おそらくノロウイルスあたりと思います。 その2、3日前、家族で夕食に生ガキを食べたので、 ちょっと潜伏期が長いような気はするのですが、恐らくそいつが犯人でしょう。 日曜いっぱい、一家全滅状態。家内と娘は嘔吐もひどかったようです。 私は正月に 2kg も体重が増えてしまっていたので丁度良いか、 と日曜は絶食ですごしました。月曜から会議が3つもあるので、 こりゃあフラフラかなと思っていたのですが、月曜の朝は意外にも快調です。 筋トレも脱力感なく絶好調。ただし体重は 1kg しか減りません。残念!!

うーむ、回教徒のように月に一度くらい断食の日があるのも、 健康に良いのかなと本気で考えてしまいました。 腸の中を一度完全に空っぽにするのも、健康上悪い事ではなさそうです。

○ 一流選手の動きにまなぶ

来月は、トリノで冬季オリンピック開幕です。 色々と楽しみですが、女子フィギィアスケートはどこまで行けるのでしょうか、、、 ところで、上手なフィギィア選手は滑る音からして違うそうです。 つまり、ガシガシというような音ではなく、きわめてスムースな音なのだそうです。 なーるほど、そうなんでしょうね。

これは「歩き」にも言えることだろうと思い当たりました。 地球の重力と喧嘩せず流れるように歩くのが、エネルギー効率も良いということですね。 ちょっと、やってみました。 最初はよいのですが、次第に重力との喧嘩がでてきてしまいます。 これはまだ身体が安定せず、左右や前後に微妙なブレがあるからです。

しかし滑るような歩きができるようになれば、かなり歩行速度も上がり、 更に疲労の少ない歩きになりそうです(慣れないうちは、 スムースに歩けるようバランスをとること自体に 無駄なエネルギーを使いそうですが)。 水平のベクトルへの重心移動、脱力してスムースな動きに 気持ちを持って行く歩きに、しばらく専念してみることとしましょう。

このようなことも、中国武術の極意と通ずるところが非常に大きいと思います。 つまり、いかに身体に無駄な力を入れず、自然に逆らわず、 速やかに動けるかということ、、

○ SONY がロボット事業から撤退

ソニーは1月26日、アイボや QRIO といった エンターテイメントロボット事業から撤退を発表しました。 昨年9月に15のビジネスカテゴリーについて事業の縮小、 もしくは売却を明らかにしていましたが、今回、 エンターテイメントロボット、車載機器、プラズマテレビ、ブラウン管テレビ、 などを含む9つのカテゴリー縮小を明らかにしたそうです。

HONDA とならんで SONY という会社は私の大好きな 日本企業でしたが、どちらも創業者がいなくなった後、 どんどん面白みがない会社になってしまいました。 CEO を米国から招いたことが、今回の大きな変化の原因なのでしょう。 確かに収支を正常に戻すには、 一時的にそのような大鉈を振り下ろす必要があるのでしょうが、 SONY ファンとしては何とも寂しい限りです。

従来の特徴をなくした SONY は、ただの面白くもない会社ですからね。 これで長年叫んできた「CLIE に携帯機能を、、」の希望も、 なくなってしまいました。

Apple 社へ復帰した Jobs も最初は大鉈を振るいましたが、 その後着々と新たな戦略を押し進め、現在の隆盛を築きました(もちろん 油断は禁物ですが)。SONY にもそのような奇跡が起こることを、 極めて少ない可能性(なぜって、SONY にはもう 盛田さんや井深さんはいませんから)ながら祈っています。

HONDA にせよ SONY にせよ、そして Apple にせよ隆盛の時は、 常にユーザをあっと言わせるサプライズや、 どきどきさせる期待感を持たせてきました。 やはり、こういう味を維持しなくてはね。

そういう意味で、 SONY の経営立て直しの大鉈の中にあっても、 ロボット事業くらいの夢は会社のアイデンティティーとして 残しておいて欲しかったものです。 今度の CEO の人柄が見えるような気がします。 これから当分の間、SONY はつまらない会社であり続けるのでしょう。 これも米国企業の謀略? 、、、ってのは、うがち過ぎかなあ、、

○ ビル解体(その後)

2004年12月からリポートしている近所のビル解体、その後です。 特にどうという意味のないリポートですが、はじめた以上最後までリポートしないと、 どうも気持ちが悪いので、、

更地になってから数ヶ月は手つかずの状態でした。 昨年8月頃から新しいビルの建設が始まったのですが、 解体リポートを始めた頃と同じ位の高さまで建ち上がってきました。

さらにもう一発、1月21日降雪時の風景です。 上の写真からほぼ1ヶ月、さらにもう2フロアー建ち上がっています。 解体前は地方銀行でしたが、どうやらマンションのようですね。 正面右に入居者募集のため赤い垂れ幕が下がるようになりました。

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戌年の今年:佳い年でありますように(わが家の愛犬 ゆい)