2003.02 WebObjects に本格挑戦

わーくすてーしょんのあるくらし (65)

2003-02 大橋克洋

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先月サンフランシスコで開かれた MacWorld Expo では色々なもの が発表されましたね。まず何といっても 12インチと17インチの Po werBook G4 でしょう。片方だけの発表であれば 17インチもかなり の興味を引くのですが、両方一緒となると、私としては12インチの 方にずっと目が魅かれます。

○ PowerBook G4 12インチ

これまでのチタンPowerBook も十分ハンデイーではあるのですが 、持ち歩くのにはさらに軽くコンパクトな方がよく、iBook も必要 かなあと思ってきました。しかし iBook を借りて外を持ち歩いてみ たところ、チタンより軽いものの厚みがあるため、むしろチタンの 方が指が疲れず持ちやすいように感じました。

12インチ PowerBook は iBook よりさらに少し小さく軽いとあっ ては言うことなしです。コンピュータ仲間が早速手に入れたそうで すが、CD から起動しないなどの初期不良により交換となったという 話しを聞きました。もう少し待った方が良いかなと2週間ほど悩んだ 結果、とうとうAppleStore で注文してしまいました。あれからさら に2週間が過ぎました。Web で出荷状況をチェックすると、生産準備 の状態のままです。Apple も最近になく待たせますね。12インチは 注文が殺到しているのかも。

○ Jobs の息のかかったプレゼンソフト KeyNote

もうひとつ興味を持っているのは、プレゼン・ソフト「KeyNote」 です。マイクロソフト嫌いの私としてパワーポイントは使いたくな いので、最近プレゼンはすべて HTML で作成し Web browser で行っ てきました。しかし、KeyNote は Jobs みずからベータテスターと なって作られたということで、期待を裏切らないものに違いないと 興味の湧くところです。しかし HTML によるプレゼンは、そのまま Web siteで公開でき、シンプルで他のシステムとの互換もとりやす いだろう、などの理由で離れがたく思っているところです。

ある人が面白いことを書いていました。ビル・ゲーツは、まずプ レゼンを自分で作るようなことはせず誰かに任せるだろう。しかし 、ステイーブ・ジョブスは自分でプレゼンを作るに違いない。これ を考えるだけで、どちらが面白いものかわかるということでした。

○ WebObjects に挑戦

電子カルテはOSやハードの違いを問わず使えるべきという考えで 、今年から電子カルテNOAの開発環境を Java へ切り替えたことを先 月書きました。で、Java の勉強がてらサンプルアプリを書き始めた のですが、現在の Windows では pure Java のアプリが問題なく動 くかどうかはハードごとに検証しなければならないので、そのよう な目的であれば現状では WebObjects を使う方が良いというアドバ イスを頂き、2月からさらに路線変更しました。

最近の WebObjects は Java を主たる言語としますので、今まで の勉強も基礎学習として丁度よかったという次第です。WebObjects は大分前にトライしてみたことはあるのですが、チュートリアルを かじった程度で止まっていました。もうあれから3,4年たっている のですっかり忘れてしまい、またゼロからの出発です。 しかし今度はしっかりした目的があるので、順調に学習が進みま した。とりあえず勉強がてら現在使っている住所録を Web アプリに してみました。これは OpenBase に溜めたデータを Cocoa アプリで 読み書きするものですが、1週間もかからず簡単にインプリメントで きました。

ほうー、こりゃあ、なかなか快適な開発環境です。特にデータベ ースを使うようなものでは、非常に快適にアプリが組めます。話し には聞いていましたが、これほど快適とは思いませんでした。

○ 従来のアプリを WebObjects で実現

それでは早速、電子カルテ NOA の WebObjects 化にとりかかるこ とにしましょう。手始めにインプリしやすそうな受付業務のアプリ を WebObjects 化することにしました。これもほとんどがデータベ ースの処理です。新患登録などの機能があったりするので、使いや すいよう作り込みを必要としましたが、約2週間ほどでほとんどの 機能をインプリできました。

とても嬉しいのは OPENSTEP や Cocoa で書いていた頃と比べ、ソ ースコードが極めてシンプルになることです。通常自分で書かねば ならない GUI や DB とのやりとりの多くを WO がやってくれるので 、ホイキタと渡すだけで済んでしまう部分が多いのです。初代 WIN E を実現した Emacs Lisp も似たようなところがあり楽でしたが、 それとはまた違った切り口での簡便さです。まさに Object 指向の 良さを生かしきったというところでしょうか。

今までのいろいろなプログラミング環境と比べた印象を一言でい うなら、「スニーカーのような軽いフットワークで快適にアプリが 組める」です。ただし、私の場合 NOA の framework として OPENS TEP や Cocoa の開発環境を長いこと使い、EOFを基盤として使い慣 れてきたので非常に短い時間で WebObjects に溶け込めたというこ とは言えると思います。

○ 日本医師会のレセコン ORCA を本格導入

日医の ORCA プロジェクトが公表されるとともに、私のところも 都内の実験3施設のひとつとして試験運用に参加させて頂いてきま した。試験運用は昨年春を持って終了しましたが、まだ実用にはも うひとつという感じでした。

しかし昨年もなかばを過ぎ、そろそろしっかりしてきたようなの で、今度は自前で本格導入に踏み切ることにしました。私の最終目 標は ORCA を電子カルテに接続し診療費計算エンジンとして使うこ とですが、まだその機能は実装されないので、ひとまず現状のまま の ORCA を実際に業務に使ってみようということです。

今回は一般ユーザと同じ状況を把握しようということで、サポー ト業者さんに ORCA システムをいれてもらい、受け付け事務が操作 を習得し運用するというパターンで始めることにしました。 マシーンが入ったのは昨年12月で、サポート業者さんもORCA ど ころかレセコンも初めてということで、まずは慣熟運転からです。 サポート業者さんに担当社員の練習場を提供するかわりに、サポー ト料金を勉強してもらうというギブ・アンド・テイクの出発です。 12,1月はシステムの設定や操作の勉強で終始したようですが、 2月から実際に私のところの事務員が使い方を習い実データの入力 に入りました。

うちの事務も2週間ほど苦労したようですが、マニュアルとマシ ーンを前に試行錯誤の結果試し打ちのレセプトは、ほぼ完璧に近い 形に仕上がりました。思ったより早い展開に、ちょっとびっくりで す。3月分からは正式にレセプトを出力する予定でいますが、何と かいけそうな感触です。

それに備え社保や国保の基金に、レセコンに切り替えるための申 請をしようと問い合わせてもらったのですが、何と東京の場合どち らも ORCA のことを知りませんでした。日医総研では周知徹底をは かるよう努力するとのことですが、全国でも ORCA で正式にレセプ トを提出している施設はまだ50施設程度ということです。かなり 遅れての参入と思っていた私の所も、そうなるとまだ早い方のよう ですね。特に都内ではまだ誰も正式運用してなさそうです。

○ ORCA はいま、買いか

システムとしてかなり完璧に近くなったと聞こえるかも知れませ んが、私としては色々まだまだと思うところが多いです。うちでは 今までレセコンを使ってきませんでしたが、このように順調なすべ り出しができた理由は、事務員が他のレセコン操作やレセプト請求 に慣れていたことと、彼女のコンピュータへのチャレンジ精神の賜 物と思っています。

私がもっとも気に入らないのは、入力のインタフェースです。画 面自体が旧態然としたオフコンそのものですし、入力の手順にして も私ならもっとずっと簡潔にできるのにと思うようなところが随所 にあります。しかし、これらはいずれ電子カルテに接続するように なればどうでも良いことですので、今は静観することにしています 。ORCA は従来のレセコンのレベルにはほぼ達したと言ってよいと思 います。

まだ細かいところやサポートなどの点で、従来のレセコンに負け るところもあるとは思いますが、従来のレセコンで満足していた施 設であれば、そろそろ ORCA を本格導入してもよいでしょう。ただ しばらくはサポート業者さん自身も勉強中のところが多いと思いま すので、そこは理解した上でということになります。そのかわりレ セコンに新規参入の業者さんは、一生懸命前向きに取り組んでくれ ます。

さらに快適なシステムを求めるのであれば、電子カルテと完全に 連携できるようになってから買うべきでしょう。そうなれば、電子 カルテ側でずっと使いやすいインタフェースを提供するでしょうか ら、好みのものを選ぶことができます。

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