1988.12 その後のワークステーション

わーくすてーしょんのあるくらし (24)

1988-12 大橋克洋

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○ 9600bpsモデム

ようやく9600bpsのモデムも10万円強で手に入るようになったので、 モデムを9600に換えた。US Robotics社のHSTモデムで、3 00から9600bpsまでをカバーするやつである。次第に高速の定義も変 わりつつあるので、もはや9600bps位では高速モデムとはいえないのか も知れないが、まあ一般のパソコン通信などを考えれば早い方だろう。

私のところはネットワークで、遠くは茨城県など数カ所に一日何回もオート ダイアルアップしているので、10万なにがしかをかけても、数カ月で元をとっ てしまうはずである。

われわれがやっているuucpのネットワークであるjuiceは、前にも 書いたように、JUNETの下につながっているが、juiceの中で一番遠 方のサイトは米国バークレイにある。バークレイといえば、UNIXのBSD 版を作ったところだが、juiceの仲間の小松君が、バークレイ校に留学し、 そこにjuiceのノードを開設したのである。

○ 米国のマシーンにログイン

juiceのミーテイングでこのロボテイクス社のモデムを初めてみせても らった時、それじゃ彼の所につないでみようということになり、国際電話でリ モート・ログインをしてみた。

丁度彼は留守のようだったが、メールを残しとおこうということで、viを 起動してメールを書いた。これが、はるか離れた米国のマシーン上でエデイテ イングをしているかと思うと感激の一瞬だったが、さすがに誰もが電話代が気 になったようで、手短かに書いてすぐ回線を切ってしまった。まさに、コンピュー タを使っていて出合う感激のひとこまである。9600bpsでviを起動す ると、米国と日本の距離の差からくるデイレイはあるが、まあまあの感じで使 える。

3、4年前になるが、日曜日に遠方の無人のマシーンにBBSを載せようと、 リモート・ログインしてエデイターを起動し、Cでアプリケーションを書いた ことがある。当時は300bpsのモデムがHSTと同じ位の値段で、約3、 4時間つないでviを使った。今考えると、良くやるよ、ということで、それ に比べれば9600で米国につないでエデイットする方がはるかに楽チンであ る(電話代を考えないでの話だが)。

○ いつも苦労するモデムセットアップ

今まではアイワの2400bpsのやつを使っていた。普通UNIXにつな げてuucpでオートダイアルアップをしようとすると一筋縄ではいかず苦労 をすることが殆どだが、アイワのモデムは、なかなかよくできていて、新しい モデムのパッケージを開いて、うまくuucpで送受信が成功するのに15分 位しかかからなかった。

国産機器と違い、米国製のHSTには大分ばらつきがあることを聞いていた が、オートダイアルアップはうまく行きuucpが接続されても、ファイル転 送途中でプッツンしてしまう。

モデムのセッテイングをあれや、これやいじってみてもうまく行かない。結 局、お手上げをしていたら、ネットの仲間が夜中に電話回線でリモートログイ ンして、ねむい目をこすりながらチェックしてくれ、原因がわかった。何のこ とはないシステムはuucpでファイル転送しながら、そのログをSYSLO Gというファイルに書くのだが、そのファイルのパーミッションがうまくなかっ たのが原因だった。

uucpで必要なファイルは、多くの場合uucp自身がオーナーとなって いるが、SYSLOGのオーナーがrootになっていたため、そこへ書き込 みができなくて、ファイル転送中にシステムが落ちてしまうものだった。UN IXではよく有る失敗だが、判ってしまえば何ということもないことでも、結 構このように一晩中、あるいは何日も悩むことになる。

○ みるみる使いはたすストレージ

先月号で長年の宿願だったハードデイスクを一挙に300M増設したものの、 これもすぐに足りなくなるだろうと書いたが、わずか数週間でその心配が現実 になりそうだ。

以前、Xウインドーのソースを手に入れたが、デイスクが足りず、テープに 入ったままになっていた。これをデイスク増設とともに待ってましたとばかり 載せることにしたが、しかしまあ、でかいことでかいこと、ソースだけであっ という間に新しいデイスクの20%位を占めてしまった。

ヘッダーファイルの一部が足りなくて、結局まだXはインストールできてい ないのだが、これをコンパイルすると100M位は喰いそうだ。それに加え、 昨日はGNUの新しいソースも手に入り、これも載せたので、早くも300M ハードデイスクの使用率は50%を越える勢いである。Xにせよ、GNUにせ よ最近のUNIXのソフトウエアはいずれも巨大なものになりつつあるが、今 後さらにこの傾向が加速されることは間違いない。 NeXTの光磁気デイスクなども、すぐにもっと巨大な容量のものにすげか えられることになるに違いない。

○ ファイルのバックアップ

ということで、今後もネットワークで共有という形で外部記憶容量は巨大化 していくのだろうと思うが、そうなると大変になってくるのが、その管理であ る。

まずバックアップの問題で、従来までは1/4インチカートリッジ・テープ を使用してきたが、こうなると一発でテープに落すことは勿論無理で、何本か に分けなければならない。ところが、そうなるとつい面倒でこまめにバックアッ プをとらず、不意のデイスククラッシュで泣きをみることになる。

なんとか、楽をしてバックアップやインストールが半自動的にいかないもの かと、シェルスクリプトのアイデアをいろいろ考えているところである。まあ、 バックアップとのからみも無いではないが、次に考えなければならないのが、 広い記憶エリアの中にどのようなファイルをどのように配置して管理するかと いう問題がある。

○ ネットワークファイルシステム

NFSというやつは大変便利で、例えばオンライン・マニュアルなどは各マ シーンに持たせることは無駄なので、どこかのマシーンのデイスクの中に置き、 他のマシーンはイーサネットを介してそのデイスクをリモートマウントすれば よい。そうすると、あたかも自分のデイスクにアクセスするようにマニュアル を見ることができる。NFSを意識する必要は全くない。

NFSで他のマシーンのファイルを自分のところにマウントするなどという と、UNIXのことだから結構面倒なことをやるのではないかと思うのだが、 実際はマウントコマンド一発で終わる。ファイルをコピーしたり、ムーブする のと何ら変わらない。

ところでこのように便利なものも、始めのうちは新しいデイレクトリーを作 る必要が発生した時点で、深く考えず適当にNFSだとかシンボリックリンク だとかで繋いでいくことになる。

つまりはスパゲッテイのかたまりとなり、いざ再インストールしようとなる と、アレ?あのデイレクトリーはどこにあったっけてなことになる。UNIX を個人で使っていることのデメリットともいえようか。デイレクトリーの配置 など、このようなところにこそ、ベテランの味がでてくるというものであろう。 機会があれば、そのような人のデイレクトリー構造がどうなっているかのぞか せてもらって勉強したいところである。

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