「長年に渡るアトピー治療について」
42歳2017年5月28日
42歳2017年5月28日
私とアトピーとの付き合いは長く、5歳くらいの時から手の甲や肘の内側に赤く痒い湿疹が出ていた。母に連れられ、近所の町医者から大病院まで沢山の病院にかかった覚えがある。なんとか良くならないものかと、娘を思いやる母がその原因を聞いても「原因が分かるなら、こちらが教えてほしいくらいですよ。」と言った医者もいる。診療報酬を取っているにも関わらず、医者としての義務を放棄したかのようなその発言に、子供の時分だった私もさすがに閉口した。そんなことから、昔から医者嫌いである。医者なんか、信用しないと思っていた。
それから大学生になり、運動部に入り毎日グランドを走り回る生活をしていた4年間は比較的症状が落ち着いていたように思う。運動をすることで、ストレスを溜め込まず(学生にストレスなどないが)いつも前向きな心を持ち、心身ともに健康な状態だったのだろう。
その後、就職をして、結婚をして、生活環境ががらりと変わった後は大きく悪化することが度々あった。子供の頃は、湿疹が出る範囲もせいぜい両手の甲、肘や膝の裏だけだったものが、首筋、手の甲から腕全体、そして脇やお腹等、広範囲に症状が現れるようになった。一番怖かったのは、ステロイドを塗っても塗っても、治らなくなっていたことだった。もっと重い病で苦しんでいる人がいるというのに、皮膚が痒く、赤く、見た目にも悪いということだけで、絶望的な気分になる自分も情けなかった。こんな状態を抜け出したく、根本治療をしたいと思い、漢方薬局を訪ねたこともあった。当帰芍薬散を処方され、半年程度飲んでだいぶ良くなったが、完治には至らず20代~30代をやり過ごしていた。
そんな折、夫の友人から松本漢方クリニックについて聞いた。彼は潰瘍性大腸炎で苦しんでいたが、たった数ヵ月、松本先生処方の薬を飲んで完治したとのことだった。私は横浜在住だが、週末を利用して高槻まで行くことにした。土日も診療してくれるというのは、非常に有難いと思った。2013年秋頃のことだった。実は、松本漢方クリニックを訪れた時は、それほど症状はひどくない時で、看護師さんに最初に診てもらった際も「どこに出ているの?」と聞かれたくらいだった。このままの状態で完治出来たら良いな、とその晩から早速、指導された通りに漢方薬を煮出し、患部に黄色と赤色の薬を塗るという生活を始めた。しかし、甘い考えは通用しなかった。自分ではこれまで出来るだけステロイドは塗らないように気をつけていたつもりでも、長年に渡り、私の体内には確実にステロイド使用の歴史が刻まれていたようだ。
漢方薬を飲み始めて数ヵ月後から、ひどいリバウンドが始まった。両手甲部分に乾燥肌程度の湿疹しか出ていなかったが、その範囲が大きく広がっていった。首筋、両腕全体、脇からお腹にかけて、太もも内側。未だかつて経験したことのない広範囲の湿疹で、痒みと赤みがひどく、2ヵ月間はまともな睡眠が取れなかった。いま思い返しても、よく休職せずに乗り切ったと思う。とにかくここで腹を括り、完治しないと私の幸せはないと思い真面目に漢方薬を飲み続けた。ここで付け加えたいことは、松本先生の処方の中で特に素晴らしいと思ったのは、漢方風呂だ。週末だけの贅沢だったが、出たり入ったり、風呂の中で本を読んだりと5時間近く漢方風呂を楽しんで上がった時の、一瞬、湿疹が和らいだような感覚は非常に心地よかった。
さて、私の場合、一番リバウンドがきつかった期間は2ヵ月間で、ほぼ完治するまでにはおよそ半年を要した。その後、もう少し治療を続けるべきだったが、夫の転勤に伴い、アメリカに行くことになり中断してしまった。赴任先はからりとした晴天が続くとても良い気候の土地だったので、強い紫外線に気をつける以外、湿疹の悪化を気にすることはなかったのは幸いであった。
私の長年に渡るアトピー治療もこれで終わりかと思ったが、残念ながら再発してしまった。できることなら、上記で手記を終わりにしたかったが、まだ書かないといけない。今年3月に両手甲にひどく赤い湿疹と脇や腹にも軽く湿疹が現れ始めた。帰国して元の会社に再入社し、恵まれた環境で仕事が出来ていると思っていたが、ある仕事において強いストレスを感じたことがきっかけのようだ。5月に松本漢方クリニックに4年振りにかかり、2番、3番、4番、5番の薬を飲み始めた。この4年間はさすがにステロイドを一切使っていなかったので、飲み始めてまだ1ヵ月も経っていないが、明らかに良くなってきている。古い皮膚がかさかさとむけて、その次に痒みが出て、(思い切り)掻いて、新しい皮膚が生まれて、かさかさして・・・といった皮膚の再生サイクルがこの数週間でものすごいスピードで行われている。
もしかしたら、またリバウンドが起きるのかもしれないが、治療に対する恐怖心は一切ない。何故ならば、私の体は、1度、自分自身の免疫力によってアトピーを治した経験をしているからだ。治療を続けて、再発しない状態までもっていきたいが、私が真に鍛えるべきは「心」なのかもしれない。私が松本先生から受けた一番の学びは「寛容になる」ということだ。アトピーについては、漢方薬で体の免疫を高め、やがては外部からの攻撃に対して寛容状態にもっていくことで症状を治すということを理解した。その考えは心を鍛えることでも同様に解釈することができ、どんなストレス要因についても(しかも私のストレスなぞ、たかがイチ会社員としてのつまらないもの)広い心で受け入れれば良いのである。こうやって、心も体も強く成長させていきたい。今夜も心を鎮めて漢方薬を煮出し、明日への活力に繋げていこうと思う。