「母の免疫」
(娘さん記述)82歳2016年7月4日
(娘さん記述)82歳2016年7月4日
はじめに
私の母は、昔から「この人は無敵ではないか」と思うくらい、なんでも自力で治す、自然治癒力の高い人でした。高度に例えるならば、大気圏を突抜けISS国際宇宙ステーションに届くくらいの高さを誇っていました。しかし、寄る年波と続く猛暑で、食欲は落ち、すっかり弱ってしまいました。数年前から足に湿疹が出るようになり、近所の皮膚科で結節性痒疹と診断され、軟膏とステロイド剤を処方されていました。全身に広がるような大きな炎症には至らずに過ごしていたのですが、ついに炎症は一気に全身へ広がってしまいました。夜に浮腫んでいても朝には引いていた足の浮腫みも、日に日に治まらなくなっていき、松本漢方クリニックに行く頃には足は浮腫みで1.5倍ぐらいになり、膝は曲げるのも一苦労、足の甲まで浮腫むあり様で、すこぶる高かった彼女の治癒力は水面ぎりぎり、殆ど沈みかけているよう状況でした。
ここは、最大のパワーを持って上昇しなくてはいけません。母は高齢であること、軽い認知症である事などを考え合わせると、遠回りはできません。最短でしかも確実な方法を選択しなければなりませんでした。そこで、白羽の矢を立てたのが松本漢方クリニックでした。
松本漢方クリニックを選んだ理由は、一言で言うならば、直観です。初めてHPを訪れた時の印象は、「この人、言いたい事が山ほどあるんやな」と言うものでした。HPの内容は、まだ全部目を通していませんが大変興味深いです。治すのは薬ではなく自分自身の力である事、ステロイドを断つ治療を始めるためにはかなりの覚悟を持って挑まなけらばならず、家族がいる場合は家族の協力が必須条件である事は、私自身かつて長年患っていたアトピーと決別すべくステロイド断ちをした経験から分かっていました。松本漢方クリニックのHPの上の方にあった「初診の方は必ず家族と来院下さい。」という文言を見て、「この先生は分かっている人だ。」と言うのが私の直観でした。
治療開始:2015年10月
松本漢方クリニックを訪れ一歩入ると、煎じ薬の匂いが漂っていて、漢方医院に来たんだと実感しました。で、診察室の奥から、なにやらえらく怒ってどやしている声が聞こえていました。余談ですが、診察を受けられた方は皆、大なり小なり思われているかもしれません。診察とはなんら関係のない、雑談で終始してしまう事も或る事に・・・。この先生大丈夫かと不安を抱かれることもあるかと思いますが、診察室に入った時から患者さんの様子、症状をちゃんと診て、それぞれの症状と状況に対応した適切な処方をしてくれます。と言う訳で、適切に処方された漢方薬、毎日のお灸、漢方風呂。これらの強い助っ人を携えた母の快進撃は、ここからスタートしました。
漢方薬の効果はすぐ現れました。まず、一週間が過ぎた頃から、パンパンになっていた足の浮腫みが引き始め、炎症を起こしては再生し剥がれ落ちる大きいフケのような皮膚片は、それこそ積もるんじゃないかと思う程のすごい勢いで、剥がれ落ちていきました。
1ヶ月が過ぎる頃には、ステロイド断ちでは有りがちな停滞期突入です。炎症→再生の繰り返し。足の浮腫みは概ね引いていたものの、足首が無く、アキレス腱はどこ?と言うような筒状態。痒みも依然強いようでした。
2ヶ月が過ぎる頃には、足の浮腫みはすっかり引き、筒状態だった足首にアキレス腱が戻ってきました。「おかえりアキレス腱」と心の中で呟いていました。停滞期からの脱出です。炎症→再生は、引き続き繰り返していましたが、再生の度合いが、日を追うごとにアップしていき、例えるならば、階段を一段ずつから二段ずつ、更には三段ずつと言った感じで、再生してくる皮膚の状態が、弾力のある良い状態に割と早い段階からなってきている事に、ステロイド断ち経験者の私としては内心驚いていました。しかし、母には「まだまだ、こんなモンじゃないで。油断してたらドッと炎症が襲ってくるからな。」と脅かしておりました。鬼のような娘です。
対策
浸出液対策として、まずチューブタイプの包帯を購入し、毎晩、薬を塗った後、両腕、両足に2重に着けました。2重につけたのは乾燥を軽減させるためです。私の場合、炎症が酷かった手などは、お風呂上りの乾燥が酷く、薬を塗る間も無く、居ても立っても居られない不快感を覚えましたが、お風呂を出た後に綿の手袋をはめてその上からキッチン用のゴム手袋をはめ蒸らしているような状態にした事で、とても楽になったという経験からの対策です。母の症状は全身に及んでいるので、更にパジャマの下に着るガーゼ地の上下の下着をつけてもらい浸出液対策しました。ところが、足首にちょっと浸出液が出てきたぐらいで、寝ている間には殆ど出てくる事はなく、また痛みや痒みで睡眠を妨げられる事は無かったようです。
松本漢方クリニックを訪れた方は、ヘルペスに関する考察について読まれたかと思います。アトピーとヘルペスの関係についての情報は初めて知る内容でした。ある患者さんの「浸出液と痛みで困っている」と言う訴えに対しヘルペス薬を処方したところ、不快な症状が軽減したと言う下りがありました、体質だったのかもしれませんが、母はヘルペス薬を服用しておりましたので、浸出液がダラダラと不快にならなかったのは、これの効果が出ていたと言う事でしょうか。
困った事
高齢者と言うのは、あまり環境の変化を好みません。認知症を発症していればなおさらです。母も、また然りでした。漢方薬については直観的に良いと判断したのか、初めて松本漢方クリニックを訪れた際にも嫌がる事なく出向いてくれましたし、煎じ薬も何の抵抗もなく飲んでくれています。毎日続けてきたお灸も、すんなりとスタンバイしてくれます。が、こと漢方風呂に関しては、一貫して拒否体制を貫いてくれました。あまり無理強いをすると、認知症の症状に何らかの影響が出まいかと心配もあり、妥協案として足湯を提案してみました。渋々、承諾してくれたものの、自ら進んで実行することは無く、やっと足湯してくれたと思いきや5分もしないうちに出てくる始末でした・・・。「こりゃダメだ」で、漢方風呂用の漢方薬を鍋で煮出して、それを毎晩薬を塗る前に全身に吹きかける作戦へ切り替えました。
2016年6月
半年以上経過した今、大きな炎症は引き、それと同時に痒みも概ねひいているようで、以前のように、四六時中搔いているような姿は見られなくなりました。沈みそうな程の低空飛行だった母の自然治癒力が、漢方やお灸と言った強力な助っ人を手に入れ再び上昇し始めたようです。その事は血液検査の数値に如実に現れていました。
数値の推移
松本漢方クリニックに訪れた時は、IgEの値は高いのは言わずもがなですが、腎臓の値も正常値より高値を示していました。TARCについては72620を叩き出していました。先生がそれまで見た値の最高値は5万だそうで、それをはるかに上回る数値でした。良くネットでうちの子はTARCが1万もあってとか5万もあってとか嘆いているママさん達がこの数値を見たら、「うちの子、大したこと無い」って思ってくれるだろうか。そして大きな炎症が引いた今、あんなに高かったTARCの値が426と正常値となりました。IgEの値は2141→1242、リンパ球の値は13→18.7と正常値範囲へとなってきました。
快方までの期間
松本漢方クリニックを訪れた頃の状態を考えると、高齢でもある母は快方に向かうまで、かなり時間がかかるだろうと考えていました。しかし、治療開始から半年足らずで大きな炎症が引き、数値的にも正常値内となったのは驚異的だとさえ思っています。理由は3つあると考えています。1つ目は、元来、大ざっぱな性格であるが故に、あんまり熱心に薬を塗ってこなかった事。娘の私がステロイドは良くないと何かにつけ口にしていたので、他の軟膏を中心に塗っていた事。2つ目は、漢方薬の力です。漢方薬については、ただ漠然と良さそうだなと言う印象を持っていましたが、人間の元来持っている力を引き出す力が、これ程強いとは驚きに等しいです。そして3つ目は、母の自然治癒力の高さです。やっぱりウチの母は無敵でした。
うれしい副産物
それは、語らいとスキンシップ時間を持てた事です。お灸の際には、「熱いですぞ。」とか抗議の声をあげ、挙句「助けてー。」とか言ってみたり、音だけ聞いていたら、この家では老人虐待が行われているのでは???と思われそうですが、「あなた、大袈裟やねん。」とやり返したりしました。お風呂の後の全身への薬を塗る際には、「あんたの手、温かいなあ。」と言うから、「そりゃ生きてますから。」とか、たわいも無い会話の数々ですが、時にはケンカしたりしながら楽しくも嬉しいひと時です。認知症へもプラスの方向に影響があると良いのになあとか希望的観測。
治療中の皆さまへ
治療真っ只中の方は、なかなか快方に向かってくれない事への苛立ち、のしかかる倦怠感、先の見えない不安で押しつぶされそうになるかもしれませんが、それは同じ場所をぐるぐる回るような無限では決してないのです。80歳過ぎのお婆さんでも狂ってしまった自分自身の軸を立て直す事ができるのですから、自分の力をもっと信じてください。