アトピー手記
当時 32歳 女性
当時 32歳 女性
拝啓
師走も半ばを過ぎ、歳末の雰囲気広まる今日この頃ですが、いかがお過ごしですか。私は今を去ること二十年ほど前、2000年代の始め頃、そちらでお世話になっておりましたアトピー患者の一人です。
私の症状はわりとある日突然治ってしまい、そちらへの通院もふっつりと途切れてそれっきりになっていたのですが、何故か二十年も過ぎた今日になって突然、そういえば治療を始めるときお約束したレポートを書かないままにしていたなぁと急に思い出し、これも縁というものかと、思い立って筆を取りました。
が、いかんせん二十年も昔のことでかなり記憶も曖昧なので、とにかく思い出せるだけのことを書いていこうと思います。
当時、私は介護関係の仕事で生計を立てつつ、一人暮らしをしていました。ちょうど30代に入ったばかりで日々の慌ただしさをやり過ごす中でどんどん年を取ってしまうことに焦っていたように思います。18歳くらいの頃に体に現れ始めたアトピーの症状はどんな治療を受けても、一時的に良くなってはまたリバウンドするという繰り返しで、正直心も体もクタクタでした。それで「現代医学でダメなら漢方はどうだろう」と考え、ネットで「アトピー、漢方、高槻」と検索したのが、そちらとのご縁の始まりだったと記憶しています。
実は漢方薬による治療を受けるのは、初めてではありませんでした。さらに昔の中学生の頃、私は母親以外には打ち明けられない場所のかゆみに悩んでいて、その際近所にある漢方薬局で塗り薬を処方してもらったことがあったのです。その塗り薬は、何が原料だったのかわかりませんが(今と違ってインフォードコンセプトが重要とされていなかったので)、松本漢方クリニックでのちに処方して頂いたものと同じ真っ赤な色をしていて、スパっとではありませんが確実に私を苛立たしい痒みから解放してくれました。なのでもともと漢方による治療には信頼があったので、そちらにかかることに戸惑いはありませんでした。というか正直、かゆみが強くて「そんなこと言っていられない!」というのが本音でしたが。
漢方が一日二日の治療でスッパリ治るものではないことは、最初から覚悟があったのですが、そちらにお世話になったのは一時的に寛解して中断していた時期を除いてトータル1年くらいでしたでしょうか。「症状は良くなったり悪くなったりの繰り返しで山と谷が続く」と説明されてはいたのですが、私の場合は悪い状態がずーっと続いて、ある日気が付くと、「あれひっかき傷が治ってる?そういえばかゆみも少なくなってる!」で、いきなり治癒してしまいました。それ以来もう20年になります。
私は何度か転職したり一人暮らしを断念して実家に戻ったりと色々ありましたが、その間、軽い皮膚疾患を患ったことはあっても、もうアトピーのあの辛いかゆみに悩まされることはありませんでした。三十路をいくつか越えていたあの時、「これ以上かゆみに悩まされるだけの人生を送って年を取りたくない!」と決断したのは正解でした。保険の効かない治療に踏み切るのには、かなり度胸がいったのですが…。
まぁそんなわけで、私も年を明けて春になれば50歳、今日のことですから女ひとりの人生には色々困難がありますが、とりあえずアトピーの魔の手から逃れることはできました。感謝しております。ありがとうございました。
敬具