コペンハーゲン日記

ストックホルムから飛行機で、デンマークの首都コペンハーゲンに向かう。飛行機に乗ると、いつもすぐ眠くなってしまうのはなぜだろうか。気圧が関係しているのかもしれない。1時間くらいで到着。

コペンハーゲンでは宿探しに苦労する。ガイドブックに載っている宿でも、夏場しかやっていないところが多く、荷物を背負ったまま2~3時間歩き回って、ようやく見つけた。

チェックインして案内されたドミトリーに入ると、男女相部屋でびびる。でもこれがヨーロピアンスタイルなのだろうと解釈し、当然のことだ、という顔で慣れてる感を演出しておいた。内装はカフェのようなオシャレな雰囲気の宿だったけど、光量を落とした間接照明が暗すぎて、夜は手元の物が見づらく難儀した。

コペンハーゲンは、歴史のありそうな風情のある街並みと、洗練されたデザインが組み合わさっている。でも、道にごみが散乱していたりして、ちょっと汚い。ヘルシンキ→ストックホルム→コペンハーゲンと南に下ってくるにしたがって、街の落書きも増えているように思う。 夜になって、宿を探しているときに道を尋ねた飲み屋に行ってみようかと思ったが、思い切れずやめておいた。その店にはデンマークのビールであるカールスバーグの看板があり、この国に来たからには飲むべきかもしれないと思ったのだけど、そもそもビールがそれほど好きなわけでもないのだった。1人で飲み屋に入る気恥ずかしさを上回るほど、ビールを飲みたいと思わなかったということだ。 * * *

レンタサイクル屋で自転車を借りる。デンマークは自転車王国。歩行者の延長ではなく、自動車と同列の交通手段として認められている。道路にはちゃんと自転車レーンが1車線設けられていて、専用の信号もある。

自転車の人はみんなかなりスピードを出しているので、こちらもふらふら景色を見ながら走っていられない。流れに乗るのが大変だ。もちろん逆走してはいけないし、曲がるときや止まるときは、手で合図をするのが基本。そうしないと本気で危ない。小学校のとき、自転車での合図の仕方を習った覚えがあるけど、その必要性がやっとわかった。

しばらく快調に走っていたが、突如タイヤがロックされ、危うく転倒しそうになる。何が起こったのかよくわからないまま、再度スタートして、また快調にスピードに乗りかけたところで、また急ブレーキをかけたようにタイヤがロックされて、こけそうになった。 どうやらペダルを逆回転させると、後輪にブレーキがかかるようになっているようだ。調子に乗ってくると癖でペダルを逆回ししてしまい、それでブレーキがかかったのだ。最初は戸惑ったけど、慣れるとけっこう便利な仕組み。 秋も深まり、日が短い。店や施設も閉まるのが早く、街を自転車でうろうろしているだけで1日が終わった。慣れない自転車で尻が痛い。でもこういう国なら自転車の旅もいいかもしれないなと思う。

夜、宿で同じドミトリーにいたペルー人と少し話す。彼は「熊出没注意」と書かれた黄色いTシャツを着ていた。日本に行ったことがあるのだという。

彼の英語は聞き取りやすい。今スイスで働いていて、来年彼も世界旅行をするそうだ。海外にも自分と同じようなことをする人がいて、なんだか心強く感じた。

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スウェーデンで買ったおしゃれなボディソープをどこかでなくし、同じくスウェーデンで買ったおしゃれなマグカップも割ってしまった。せっかく買ったおしゃれグッズを早々に失い、やっぱり自分はおしゃれ人間にはなれないのかと思う。

作家アンデルセンの墓をなんとなく散歩したあと、労働博物館というところに行ってみる。外国で博物館に行っても、英語の解説を読むのは面倒だ。なので展示の方法に注目することが多い。

この博物館は1930年代からの庶民の生活が再現されていて、見ているだけでおもしろかった。実際の人間が住めるくらいのサイズの部屋に、等身大の蝋人形の生活者がいて、まさにお宅訪問という感じである。思わず「お邪魔します」と言ってしまいそう。「4人の子供をかかえた失業者の部屋」というリアルな部屋もあって、胸に迫るものがあった。 アイスランド行きの飛行機に乗るために、電車で空港に向かう。車両は近代的なデザイン。車両の先頭には大きなゴムタイヤのようなものが付いている。衝突時のクッションのためだろうか。乗り心地もいいのだけど、進行方向と逆に進むのだけが難点。日本のように座席がターンするようになっていない。 次はいよいよアイスランドだ、と思っていたら、博物館のコインロッカーに入れたデポジットの10クローネを取り忘れたことに気がついて、ちょっと落ち込んだのだった。 (コペンハーゲン日記 終わり)