T)次は「高丘親王航海記
」です。
F)なんでこの本読んだんやっけ?
T)それは……宮田珠己さんが絶賛してたから。でも澁澤龍彦ファンにも絶賛されてるみたい。
彼の最高傑作だ、って。
F)澁澤龍彦のほかの本読んだことある?
T)ない。でも、澁澤龍彦のエッセンスがこの本の中に散りばめられているらしいよ。
それはファンの人にしかわからんのかも。
F)うちらが宮田珠己を読みこんでいるように…
T)うん。
F)これはトンデモ本やな
T)うん。って、いや、トンデモ本じゃないやろ。それは胡散臭い本のことやで。
F)そっか、失礼。
T)Amazonのレビューをチラッと見たら、みんな例の「ほぅら、天竺まで飛んでいけ~」について書いてたわ。
F)あぁ、あのお母さん怖いよな、「クスコ」。
T)クスコなぁ~!
F)薬の子と書いて薬子。薬子がポイントやな。
T)でもなんというか、旅行っぽいよな。
F)えっ、ドコが?「ほぅら天竺まで飛んでいけ~」?
T)違う、旅行しながら昔の憧れの人が思い出されて、そういうのとリンクして幻想の世界に行く…
F)それ、旅行っぽいの? そういう経験が実際にあったってこと??
T)え?あ、いや…入り乱れてんねん、いろいろ。
旅行ってのはその場所にあるものだけでなくて、それまでの過去のこともいろいろ投影されてくるというか…
F)思い出す時間があるっていう意味?そうなん??
T)うん、まあ…いろいろ思い出されるってことで。
F)でもちょっと思い出しすぎで、話がごっちゃになってる部分もあるよな。
T)そうかも。あとは、未知のものに会うおもしろさもあるよな。
今は当たり前と思ってるものでも、最初に出会った人は、こんなふうに思ったんかもしれんとか。
東南アジアが全然知られてない時代に旅行したら、ほんとにこういう感じやったかもしれん。
F)うん。
T)バクをはじめて見たりとか。
F)あのバクって夢を食べてたよな? あれ? バクって現実にいるんやっけ?
T)うん。いるはず。
F)岸本佐知子的じゃない? いつの間にか非現実的なことが混じっていくところとか。
T)そう。最初はてっきり本当の話しかと思った。まことしやかに話が進むやん。
日本の親王が中国に渡って、そこから旅に出て、船に乗ってたらジュゴンが出てきて、
いきなり人間のことばしゃべりだしたところで、あれ??って。
F)だって題名は「高丘親王航海記」やん? 昔の人の航海の記録なんかと思うよな?
T)そうよな。そういう体(てい)で始まるし。
F)まあ歴史好きな人やったら、あれ、そんな親王、歴史上にいたっけ?とか思うんかもしれんけどな。
F)そのへんのガクっと感がおもしろい。
T)さりげなくボケるとことかね。ジョン・マンデビルとか歴史上の人物も出でてきたり。時代ちゃうはずの人とか。
F)マルコポーロとかも出てきたよな。
T)まあ最後、親王は死んでしまうんやけど。これは旅で死ぬっていう話や。
F)この人にとってはそれでよかったんやろう。
T)うん。まさに天竺に行こうとしてたわけやからね。