リュックサックマーケットとは、摩耶山の山頂で、毎月1回(冬期は除く)開催されているフリーマーケットだ。山頂までのアクセスは、基本的にはロープウエイか徒歩で、そうやって自力でたどり着いた人だけが市に参加できる。そんなコンセプトがおもしろいと思って、行ってみることにした。
行くからには自分たちも何か売りたい。畑近くで採取した野草を乾燥させたものや、古本や古着をリュックに詰めて出かけた。朝早いし、荷も重いし、ロープウェイでピューっと行ったらいいやんかと思ったけれど、徒歩での登山を主張する人がいる。たしかに天気もいいし、緑もきれいな季節で、気温もちょうどよく、なにより1人1000円(往復)のロープウェイ代が浮くということで、山登り開始。
登山道は古い街道とのことで、人が通った歴史を感じられるのがおもしろい。茶屋があったり、涌き水が飲めたり、古い道しるべがあったり、行者堂があったり。道の神のようなものも祀られていた気がする。ネパールのトレッキング道もこんな感じだろうか。こっちは1〜2時間の山登りで息が切れているけど、ネパールの人は1週間とかそんな単位で山道を歩いて移動する。まあ、荷を背負って市に向かうという行為は同じなので、ネパール気分で歩いた。
きつい階段を何段も登ったあとに、広場があった。そこは焼失した寺(城?)の跡であり、京阪神の湾岸沿いが一望できる。満足。景色もいいし、足腰も鍛えられた気がするし、なにより1人1000円節約できた。およそ1時間半の登山。摩耶山は標高700メートルくらいだけど、ほぼ海抜0メートルのところから歩いて登って行くので侮れない。
昔の人はなんでこんな高いところにわざわざ寺だか城だかを建てたのだろうか。きっと世の中全体を見渡すためには、物理的に高いところから見る必要があったからだろう。下界を見下ろしていると、ついそんなわかったようなことを思ってしまう。
マーケットは、山ガールがいたり、スペアリブを豪快に焼くおじさんがいたり、隅でこっそりたこ焼きを売る業者がいたり、ヒッピー風若者、キノコマニアの女性、など、雑多な感じがおもしろかった。体に良さそうな物もあれば、悪そうなものもある。微妙なアクセスの悪さが、おもしろい雰囲気を作り出しているのだろう。企画した人はナイスアイデアで、実行した人はえらい。
しかし自分自身はこのところ物欲がない。思うにこれはモテたいという気持ちと関係しているんではなかろうか。近ごろはモテたいという気持ちが薄れて、物欲をリードできなくなっているんじゃないか。
なんてことを考えながら、店を見て回っていると、靴下を売っている人がいた。おしゃれで丈夫そうな靴下だったので買う。靴下職人?のお兄さんが個人で作っているそうだ。
靴下と言えば、手持ちのものはすぐかかとの部分がすり切れて穴が開くので困っていた。ちょっと破れただけで買い替えるのはもったいないので、繕って再利用するものの、いくら繕ってもまた破れてくる。どうにかならないものか、靴下業界の術中にはまっているんじゃないか、といぶかっていたところだった。ぜひこれを試してみたいと思う。
靴下の柄はさんざん迷ったあげく、ピンクとグリーンのストライプが入った派手めなものを選んだ。これがモテたい願望に関係しているのかどうかは知らない。
わが店は、電車賃がまかなえるくらいは売れた。
野草入浴剤とコーヒー/紅茶染め袋セットも2つ売れてよかった。
野草を広げると、アンデスのカヤワヤ(伝統医術師)になった気分
要するに商売というのは、コミュニケーションのことである。とか思って、最初に古本を買ってくれた女の子に思い切って話しかけようとしたが、彼女が手に取った本は、みうらじゅんの「D.T.
」と「正しい保健体育
」。ついひるんでしまった。自分で出品しといてなんなんだけど。
午後になると霧が出てきた。16時に撤収して、霧の中を下山する。大きな杉の木もあり、行ったことないけど屋久島みたいな雰囲気。石垣が霧の中シルエットとして浮かび上がった。おお、MAYA文明発見!ってダジャレです。(T)
次回6月も参加予定です。次は何を売ろうか検討中。