雨に降られてでもよかったカレテラアウストラル

チリを南下していく。

風光明媚というカレテラアウストラルだったが、みごとに雨が降った。あっという間に深い水溜りや、期間限定の滝があちこちにお目見えした。今回の私の衣装の中で唯一の欠点となったオーバーパンツのすその短かさが災いして、すべての雨水は靴の中へとなだれ込んでくる。防水のブーツはたっぷんたっぷんである。

そして道は山間を縫って続く。体温が奪われていく。ただでさえ冷え性の私は、もう手の感覚がないし、見てないけど唇も紫色をしていることは確実。歯もがちがち言い出した。肩もカチカチで痛いし、もう限界!と大きな木の下で雨宿り。じっとしていても寒いので、反復横とび100回とかしてみたけど、靴がぐちゃぐちゃなので悲しくなる。雨は絶対止まないというような本降り。こんなことでは、今日の目的地まで200kmは無理だな、と地図を見てとにかく次の町まではがんばろう、とまた雨の中を走った。

町というか、小さな村に出た。インフォメーションセンターは日曜で休み。あぁ、ホテル探す手立てがなくなってしまった。と、一軒の赤い屋根の商店が目に留まった。入ってみると、若い男性がマテ中。わたしにもマテを勧めてくれる。二言三言話をしたあと、「うちで休憩していけば?」と行ってくれる。この人が神様に見えた。うちに入ると奥さんと幼い子供もいた。天気予報を調べてくれて、今日は雨が止まないみたいといって「うちに泊まっていけばいい」と言ってくれた。鱒のグリルや桃の煮たやつ、揚げたてドーナツを夕食に出してくれて至れり尽くせりで、今日あんなに凍えて泣きそうだったのがうそのようだった。ただ、この子供は結構悪ガキで、親のいないところで叱って泣かせてしまったけど、それは内緒の話。