台湾旅行、両親カメラ日記(5日目前半)

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5日目(5月11日:前半)担当T

早起きして、FとF父とで朝食を食べに出かける。Fが下調べしてきていた阜杭豆漿という店まで、MRTに乗ってでかけた。

着いてみるとビルの2階にあるその店には、階段を降りて下の道路にまで行列が伸びていた。並ぶ。順番が近づいてくると、何を注文していいのかわからないことに気づいた。 他に日本人旅行者らしき人もいたけど、その人たちは漢字で食べたいものをメモしてきているようだ。だんだんレジに近づいてきて焦る。

Fが、列の前に並んでいた現地の人に「あそこで焼いているのは何?」と聞いて、その名前を紙に書いてもらった。すごい勢いで仕事をこなす店員さんと、長蛇の行列のプレッシャーのなか、Fは冷静に食べたいものを必要十分な範囲で取捨選択する。先に出てきた鹹豆漿の上に油条が乗っかっているのを目にすると、すかさず単品の油条はキャンセルしたりと、自分には真似のできない判断力だ。

なぜそんなことができるのか? 後日、訊ねると「見てるからよ」。いま目の前にあるものを、いつだって観察しているのだそうだ。「だから、毎日同じ道を通うとか飽きるわ。何か変わったことないかなって見てるねんけど、なかなかないから」。自分は毎日同じ景色だと、歩きながら他のことを考えられるからいいなあ、と思ったりしているので正反対である。

ということで、我々のテーブルに並んだのは、鹹豆漿、おにぎり、揚げパンのようなもの、豆乳。鹹豆漿は豆乳に酢を入れてモロモロにしたものだと聞かされており、それって失敗作なんじゃないかという印象を持っていた。間違ってレモンティーにミルクを入れてしまったときのような状態を想像していたのだ。しかし実際に食べてみると、トロッとしていておいしい。鹹豆漿はモロモロではなくトロトロです、ということを、世の中のモロモロぎらいの人に伝えたい。

食べていると、台湾人のおじさんが話しかけてきた。行列のとき、自分たちのすぐ前に並んでいたおじさんだ。「さっきも日本語が聞こえてきたから話しかけようかと思ったんだけどね」と流暢な日本語を話す。日本で暮らしていたことがあるそうだ。

「東京に比べて台北は住みやすいね」。どうしてですか?「老人に対して親切が徹底されているからですね」。そういえば我々の父母がMRTに乗ったときも、間髪入れずすぐに誰かが席を譲ってくれた。何度か電車に乗ったけど、席を譲られなかったことは一度もなかったんじゃないだろうか。

おじさんは「この店は宣伝が上手だね」などといろいろ話をしてくれ、「じゃ、奥さんが待ってるから」と去って行った。奥さんとはさっきFが注文のときに、メニューの名前を聞いたその人である。