フツーの街のナイスな宿

拠点として泊する必要のある町がミリだった。特にみどころがあるわけでもない。ムル国立公園に行くには、この町の空港から飛ぶのが最短ルートであるために観光客が訪れる。こういうなんてことない町の方が面白そうと思う反面、観光客向けのいい宿が少ないことも事実。そんな中、この宿は、日本からメールで宿泊できるかどうかを訊ねた時から他と違っていた。

まず、他の宿は予約するのにクレジットカード情報を渡さなければいけない。が、この宿はメールのみで予約が可能。返信メールには、Mrs. Lee(オーナー)による詳しいホテルへのアクセス地図が添付されている。他の町の評判のいいホテルなども紹介してくれる。それらの返事が早いどころかチャットの勢いで返ってくる、などなど。残念なことに私たちが宿泊する日はオーナーは留守にしているらしく、代わりの人がいるから、とのことだった。

着いてみたら、想像通りの感じのいい宿で、外を見下ろせるカフェスペースのあるキッチンや、フリーのお茶とコーヒー、インターネット。部屋はきれいで、ハンガーやドライヤーまで揃っていた。留守にしているオーナーはパッチワークが趣味のようで、芸術品のようなキルトが宿のあちこちに飾られている。これまた、どんな素敵なオーナーなのかと想像が膨らむのだった。

とくに感心したのが、さりげなく置かれている朝食の案内の文面。朝食は7時から、という情報のあとに、「もしそれより宿を早く出発するときは、冷蔵庫から果物とパンを出して食べていいです」と書かれている。この一文がなかったら、朝早く食べる人は泥棒してるような気分でこっそり食べることになるか、もしくは食べるのをあきらめるかのどちらかだろう。

オーナーの代わりに受け付けてくれたおばさんもいい人で、あごから一本生えている毛が印象に残っている。あれ、たまに生やしている中国系の人がいるけど、縁起物なのだろうか。

そのおばさんに、夕食にオススメのレストランを聞くと、あるレストランを教えてくれた。予算はいくらくらい?と聞いたら、だいたい2500円くらいのことを言われて、それを「チープチープ!」って言うのはちょっと理解しがたかったけど、観光客はその位のものを食べると思ったのだろうか。それとも地元の人もそれくらい普通に食べているんだろうか。

納得したような顔をしてお礼を言って、実際はしがないインド料理屋でランチのおかずの残りを入れたと思われるベジカレーを食べて、二人で500円くらいで済ませたのだった。