サファリ(その1)

サファリ出発まで

スリランカでは、国立公園でのサファリツアーに参加したいと思っていた。旅行書によると、野生動物が東アフリカ並みに見られるということだ。

まず基点となる町ティッサマハーラーマ(ティッサ)という町へバスで向かう。ティッサの町に近づいたころ、若い男が数人、バスに乗り込んできた。なんとなく私たちの席の横に立ち、英語で話しかけてくる。うーん、なんか怪しい。と、思ったらやっぱり話は「ホテルは決まってるか?」「うちならたったの1000Rsで泊まれる。レイクサイドにあって次のバス停で降りたらすぐだ」

「ノーサンキュー、私たちはティッサの町まで行ってから考えるから結構です」と断っても、スリランカには珍しくしつこくしつこく話しかけてきて、うんざりしてしまった。やっとのことバスターミナルまで着いてバスを降りたら、また別の男が話しかけてきて、「ホテルは決まっているか」ってまた同じことを言う。

「うちのホテルには今日中国人何人とドイツ人が何人泊まっていて、サファリツアーの人数が揃っているんだ。だからうちへ来い。怪しいものじゃない。ホテルはうちの父親が経営している……」って、なぜそんなに矢継ぎ早に話すんだろうか。その態度自体気に入らないので断り続けて、目をつけていたホテル目指して歩き出す。しつこく付いて来るので地図を広げることもできず、大体こっちだろうと言う方角に早足で歩き続けた。

ジープの多さにびっくり。動物も逃げるだろう

ちょっと離れたところにあるホテルだったので、こっちでいいかなぁ、とやや不安になりながら歩いていると、またさっきの男が今度はジープでやってきて私たちの横で停まり、上からドイツ人の若い女性がシュタッと降り立った。「ハイ。あなたたちサファリに行きたくないの?」と何のメリットがあるのか、客であるはずの彼女までが私たちをツアーに参加させようと勧誘してくる。何かやな感じ。「ジープもあるし、安いし、ホワイノット?」的なことを言われたが、条件的に不満があるわけではなく、「何かいや」なのである。

ホテル決めてるからいいです、と断ると、男は、この先には○○ホテルしかないよ、と私たちが行こうとしているのとは違うホテル名を言い放ち、すごいスピードでジープをUターンさせて町へ戻っていった。私たちの目指すホテルはこっちじゃなかったのかなぁー。自信がなくなってきて近くの人に聞いたら、「もうすぐそこだよ」。果たしてあっけなくすぐ先に看板があり、その宿はちゃんとあった。

悪を振り払い、ようやっとたどり着いた宿の主人は、「君たちは正しい場所にやってきた」と言った。そうだといいのだが、このサイババに似た主人は、なんか眠そうな態度で私たちを扱う。なんとなく信用できないような、本当にがんばってあの客引きを振り払ってまで来るべき場所だったのかわからなくような人物であったが、彼に言わせれば「あの若造たちはまるでマフィアだ、サファリのクオリティもめちゃ低い」とのこと。ここの宿は値段はほとんどまけてくれない代わりに、サファリツアーには自信があるようなことを言うので、まあもう他に選択肢もなく、お願いすることにした。翌朝5時出発ということで、早めに就寝。主人の態度はともかく、部屋は快適であった。(つづく)

部屋はいいんだが、宿の主人が問題。