超マクロ展望 世界経済の真実
経済の本を手に取ってしまうのは、世の中を俯瞰して見たいという気持ちがあるからなのだろう。そしてそれを次に自分が進むための指針にしたい。自分の地図を作って、それを元に進路を決めていきたい。そんな気持ちがあるのだと思う。眺めるだけの地図ではなくて、実際に進むための地図だ。
この本で面白かったのは、規制により経済を発展させようという視点。普通は規制をなくして自由化したら経済が活発になると思いがちだけど、そうとも限らず、逆に、たとえば環境への影響を考えて何かを規制すると、それをクリアするための技術が育つ。そしてそれが国際的にも競争力を持つようになる。だから国は戦略的に規制を考えていかなければならない、という話。
確かに、文化などでも同じようなことが言えるかもしれない。たとえば戦争時に言論が弾圧されたら、それを回避するような、表立っては言えないけど暗にほのめかすような、そういう表現が育つ。こういうことから考えても、うまいルールを作れば、新しい力や方法が生まれる。スポーツもルールがあるからレベルアップしてきたのだろう。こういうことは昔から言われてきたのかもしれないけど、政治経済の世界にそれを当てはめるというのが、面白いと思った。
郊外少年マリクという本を読んだ。フランスの郊外には、おもに移民の人など所得の低い人が暮らしている団地(シテ)がある。そこで育った少年が青年になるまでの物語を描いた小説だ。著者はアルジェリア系の移民で、子ども時代から思春期の自らの経験を重ね合わせて書いているのだと思う。男の子が大人になるまでの話だ。シテで育った子どもは大人になって、ある者はサッカーのスター選手になり、ある者はビジネスで成功し、ある者はドラッグで命を落とす。波瀾万丈で振れ幅の大きい人生を歩む。そんな世界の一端を、主人公の目でのぞかせてくれる本だった。それに加えて、普遍的な「男の子」が描かれているのが、この小説が小説になっているポイントだろう。この世界で育って、小説家になった著者自身にも興味が湧いた。