キューバ8対7プエルトリコ 朝、Fと朝食を食べつつ緑道を散歩して、宝覚寺に巨大仏を見に行く。その後、Fは今日もデーゲームを観に球場へ、自分は宿でビデオ面接の準備をする。 指定されたアプリをスマートフォンにインストールして、動作を確認。こういうことはこの日程で台湾に来て、この宿に泊まらなければ準備できなかった気がする。スマートフォンもいいタイミングで手に入れていたし、平日の午後に柔軟に時間を空けられたのも旅行中だからだ。いい流れが来ているのかもしれない。 少し昼寝をしてから、買っておいた飯団(おにぎり)を昼食に食べる。たっぷりの具が餅米に包まれていて、ひとつだけで十分昼ご飯になるボリュームだ。 面接に向けて準備をしようと思っていると、会社の仕事のメールが急にばたばたと入ってくる。基本は出社している同僚に任せているけれど、慌ただしさが伝わってきて落ち着かない。しかし、変に対応してしまうとさらに落ち着かなくなるので、見なかったことにして、気分を切り替えて面接に集中すべく、宿を出て近くのファミリーマートに行く。 コーヒーを買って、店内のカフェでノートに考えるべきことを書き出してシミュレーション。ファミリーマートの店員の男性は英語で話かけてくれ、親切でいい人だった。帰りに別のファミリーマートでもう1杯コーヒーを買って宿に戻る。Fがいたらコンビニのコーヒーを、それも2杯も買うことにいい顔をしないはずだが、このタイミングでちょうどFがいないのも、いい流れが来ている証拠かもしれない。 ところで台湾ではファミリーマートとセブンイレブンが2大コンビニで、外見は日本のものとほぼ同じだ。ファミリーマートの店に入ったときに流れるチャイム音も日本と同じ。店内で無印用品のアイテムを売っているのも同じか、と思ったら、台湾で無印良品を売っているのはセブンイレブンで、そこだけは引っかけ問題のように日本と逆なのだった。 緊張してきたので「I can do it」とか英語でつぶやきながら、面接の時刻を待つ。これが終われば楽になれる。台湾を楽しめる。 時刻になったのでビデオをつなぐと、スタイリッシュな会社のミーティングルームに、何色か忘れたけどきれいな服を着た女性と、鮮やかな緑色の服を着たインド人の男性が座ってこちらを見ている映像がスマートフォンの画面に映し出された。その瞬間、画面の鮮明さに反比例するように、自分と画面の向こう側との果てしない距離を感じた気がした。 面接は40分くらいあり、自分を一言で表現すると何か、とか、厳しいフィードバックを受けたときにどう対応するか、とか、あなたはどういうベネフィットを我々にもたらしてくれるのか、とか、いろいろ質問された。自分なりに回答したつもりだが、うまく答えられたとは思えない。自分がそこまで本気でその会社のことを考えていないことが、あぶりだされてしまった感がある。いい流れ、とか思っていたのは、まったくの錯覚だった。 放心状態で、テレビをつけるとサヨナラ勝ちをして大喜びしているキューバチームの映像が映っていた。 球場から戻ってきたFと市内の百貨店の前で待ち合わせる。 「すごい試合やったみたいやな」 「まさか、やで」 キューバは9回に5点差を追いつかれたが、なんとか延長戦で勝ったのだった。 「面接はどうやったん?」 「打ちひしがれた気分や」 「そういう態度やからあかんねん。もっと強気にいかな」 素食(ベジタリアン)弁当を買って宿に戻って食べる。Fはビールも買った。テレビで台湾対カナダ戦を見ながら夕食。会社の仕事が炎上気味で同僚は深夜まで仕事をしているようだ。一部メールでフォローするが気分は落ち着かない。これも同僚が新しい仕事を経験する機会だ、と考えることにする。気持ちを切り替えて台湾を楽しまなければと思うのだが。