お宅訪問(Douz)

ドゥーズの町を散歩していると、建築途中の家から出てきたおじさんと目が合った。「中を見るか?」と言うので、見せてもらうことにした。家は工事中のように見えたけど1階部分はもう完成していて、すでにそこに住んでいるという。2階、3階部分が作りかけのようだ。こういうふうに、住みながら少しずつ増築していくという建て方を、とくにレンガ造りの家が建てられている地域では、よく見かける。まず1階を作り、お金が貯まったら上の階を作り足すのだと、他の国で聞いたことがある。

絨毯が敷かれた居間には大きなテレビが置かれていた。おじさんは奥さんをどこからか呼んできて、クスクスと紅茶をごちそうしてくれた。ここで食べたクスクスは米粒より一回り大きいくらいの大粒で、その上に肉じゃがのような具が乗せられていた。ケロアンのお宅でごちそうになったクスクスはもっと小粒だったから、またタイプが違う。食べきれないくらいの大盛りだった。食後にヨーグルトのような発酵乳も出してくれた。乳製品は控えているけど、ここは断りきれずに飲んだ。ヤギか羊の乳だろうか。奥さんは35歳で、モロッコの出身だそうだ。結婚してここに来たという。会計士をやっているそうだ。おじさんは43歳(もっと上に見えるけど)で、学校の理事?のような仕事をしている。2人のあいだに娘が1人いる。おじさんは、ホテルまで車で送ってあげようといい、そのついでに町外れの砂漠を少し走ってみせてくれた。最近買ったというトヨタのランドクルーザーが自慢のようだ。町からちょっと出ただけのところにきれいな砂丘(デューン)があることに驚く。家族でここにきてピクニックしたりするんだそうだ。道すがら、黒こげになった車が何台か放置されていた。暴動で焼かれたパトカーだという。暴動は今年の1月のことで、そのとき4人の死者が出た。それがジャスミン革命の引き金ひとつになったそうだ。「明日も昼ご飯を食べに来なさい」と言われ、別れる。翌日、ラクダツアーから戻り、曜日市を見学すると、昼になった。昼ご飯をごちそうになりに行くかどうか迷う。計画では、今日このあとトズールという街まで移動し、そこから夜行に乗ってチュニスに戻ることにしていた。いまこの時間からお宅を訪ねたら、なかなか帰してはくれないだろうから、計画を変更しなければならない。少なくともトズール行きはスキップすることになるだろう。おじさんは「砂漠で遊ぼう」的なことも言っていた。それはそれで興味深いけれど、トズールの街も見てみたい。

迷ったあげく、やっぱりこのお誘いは断ろうと、それを伝えにお宅に行く。おじさんは不在で、奥さんが出てきた。事情を伝えると「わかったわ。でもごはんだけでも食べていってよ」というので、そうすることにした。大盛りのマカロニ、ブリック(三角形の春巻き的な揚げ物)、パン、ハリサ、サラダメシュイーヤがテーブルに並ぶ。

おじさんは近くのガレージでランドクルーザーの修理に立ち会っていた。昼食に呼びにいくと、なんか機嫌が悪そう。家に戻り食事となったが、無言が続いたりしてちょっと気が詰まる。それはそうとして、料理はおいしい。一心不乱に大盛りのマカロニを平らげると、奥さんがお代わりを追加してくれて、さすがにもう食べられません。食後は、エイヤちゃんという娘と、フランス語の教科書を一緒に読んだりする。14:30ごろにおいとま。トズールに行くトランスポートは午前中で終わりだ、と彼らは言ったが、ほんとうだろうか。宿に戻って聞くと、まだあるよという。急いで荷物をピックアップしてステーションへ向かった。