ポースケ(その2)

あ、でもナガセもいいな

(T)「ポトスライムの舟」の主人公も出てくる。

(F)ナガセやな。

(T)「ポトスライムの舟」には、ナガセがそのカフェでバイトしてて、観葉植物を植えてるっていう話が出てきてた。そこが「ポースケ」とつながってる。

(F)あ、でもナガセもいいな。ナガセの立場。「ポースケ」に出てくるナガセの立場はちょっといいなと思った。

(T)ほー。

(F)なんでかっていったら、掃除と、皿洗いと、観葉植物の世話だけで、賄いご飯が食べれるから(笑)

(T)週に何回か、仕事帰りにバイトしてるねんな。

(F)ああ疲れた、ただいま、みたいな感じで行ける気の知れた友達の店があったら、そらええよなー。

(T)そうやな。

(F)前、ナガセの家に、店主のヨシカが居候しとってんな。

(T)カフェにする店を探してるとき。

(F)そのよしみもあって、優遇されてるっちゅうか。

(T)うん。

(F)ツムキクはナガセに近いと私は踏んでんねん。

(T)たしかにそうかも。「ポトスライムの舟」は自分の経験を生かして書いてるっぽかった。

(F)そう。

(T)でも今度はそのナガセが主人公から外れたからか、最後にちょっといいとこ持っていっとった。

(F)……?演奏のこと?

(T)そう。カフェのイベントで、キーボード持ってきて歌を歌う。

(F)あれちょっと唐突じゃなかった?

(T)いや、ナガセもそこまで来たんや、っていう感じがしたけど。

(F)ポトスのときから比べたら、だいぶ雰囲気、変わったよな。

(T)そう、変わってきたんや。

ナガセと入れ墨

(F)前の本では、ナガセが腕に……なんやったっけ?「今が働き盛り」やった?

(T)そう(笑)。そんな言葉を腕に入れ墨で入れようか、と思うねんな。

(F)それないやろーって思ったけど、それもツムキクが自分でちらっとでも思ったことなんかな。

(T)どうやろか。

(F)そうやって入れ墨を彫れば、忘れない、常に自分が鼓舞されるやろ、って自分も思ったんかなあ。普通はそんなこと考えつきもせえへんけど。

(T)せえへんな。

(F)外国人が「世界」とか入れ墨してたりするほうが、まだわかる。

(T)でも、あれ外国人は自分で鼓舞されへんやろ。読めへんから。

(F)うん。でもデザインとしてかわいいっていうか。

(T)まあ、そのほうが飽きないんかもしれんけど。

(F)普通は自分が一生愛する人の名前とか入れるかな。

(T)そう思うと、ルーニーのステレオフォニックスやった? アルバムの名前を入れてるって。あれ、そのうちファンじゃなくなったらどうするんやろな?

(F)本人的には一生好きっていうものもあるやろ。

(T)まあ、その言葉自体が気に入ったらそうかもな。高校野球の子が帽子の裏に「根性」て書くみたいな。

(F)いや、帽子はわかるけどさ、腕とかに入れるのは……なんか割とそういうところが……

(T)男っぽい?

(F)いや、暗いっていうかさ、そこまで自分を追いつめて働かなあかんっていうのが、なんやろな。

(T)結構どの話も仕事で苦しむとか、そういう話が多いかもな。そこがなかったら成り立たへんくらい。

(F)そういう本人の経験があったからこそ話が書けるんかな。もう今は会社辞めはったんやろ?

(T)っていうウワサやけどな。

(F)てことは、これからナガセの演奏的な側面が増えていくんかな。

(T)そうかもしれん。でも、おもしろかったんは、ナガセが演奏する前になんて言ったか覚えてる?

(F)「聞かなくていい」みたいな?

(T)そう。「すいません、すいません」みたいな。

(F)私、ああいうのなんかイヤやねん。

(T)「聞かなくていいです」とか。

(F)そんなん言うんやったら、最初っからやらんかったらええのにって。でもヨシカはそういう感じの態度やったな。

(T)「ならやらなきゃいいのに、なんでやるの」とか言ってた。ツムキクは両方の感覚がわかってはるんやろな。

(F)そういうことやな。

ハンガリアンウォーター作ってみたい

(F)あとは、あの夕食会のメニューはいただけへん。

(T)(笑)

(F)なんで死刑囚に最後に食べさせる食事なんていうのを選んだんやろか?って。

(T)それ、なんでかは書いてなかったな。

(F)その理由をヨシカが説明しようとしたけど、やっぱりやめた、みたいなことが書いてあっただけで。

(T)そこは言ってほしかった?

(F)うん。ツムキクの中ではわかってるんかもしれんけど、本を読んでる人にとっては、ちょっとあれ?っていう感じがする。

(T)なんであのメニューやったんか、関連がわからんもんな。

(F)とき子さんのドラマ好きと関係あるんかな?

(T)いやあ、それ関係ないんちゃう。

(F)ステーキとか目玉焼きとか、飲み物はオレンジジュースか牛乳って…

(T)でも、それに釣られてなんとかさんがやってきた。

(F)伊東田さんやろ。あの伊東田さんもちょっと唐突かなあ。

(T)無理矢理、恋愛に持ち込む感じ?

(F)そやな。あ、でも、ハンガリアンウォーターはちょっと作ってみたい。作り方はもう調べた。

(T)検索したってこと?

(F)そう。自分でも作れそうや。

舞台が近いっていうのもあるよな

(T)あと気になって、でも調べてないのは「走り大黒」。あれ何やろ?

(F)あー、私も調べてない。ソヨノが「走り大黒」のデザインでパッチワークをするんやった?

(T)「走り大黒」作ってってリクエストされたんやったか。奈良に行くと見れるんかな。

(F)エナも仏像詳し過ぎくらい詳しいよな。

(T)小学生のエナ。それは「ポトス」の方に書いてあった話かな。

(F)そう。どの大仏が好き?とか聞かれたら、何とかの何とかと、何とかの何とか、ってすぐに出てきて。

(T)ふーん。

(F)ナガセのおかんと、しょっちゅう見に行ってたみたいやったやん。

(T)奈良の子はそういうのが当たり前なんかな。でも、そういう断片がおもしろいな。

(F)うん、細かいところが。いろんなものが出てくるから、飽きひんっていうか、へー、これもちょっと今度調べてみよ、みたいなことがいっぱいある。

(T)そうやな。

(F)そこらへんのキーワードっていうか、選び方がおもしろいくて、うちらにも合ってる感じ。

(T)日々思うようなことが書き込まれてるし。

(F)舞台が近いっていうのもあるよな、学研都市線も出てきた。

(T)難波から生駒通って奈良とか。

(F)その切符がいくらや、とかな。

(T)ああ、いくらかかってしもた、って電車の交通費計算するのは、それも「ポトスライム」のほうやったけど。

携帯充電のナゾ

(T)誰やったか、仕事忙しい子おったやん?

(F)うん。

(T)忙しくて食生活も乱れとって、スマホでポチっとしたらお弁当届けてくれるサービスはないんやろか、って。やっぱそういう需要があるんやなと思った。

(F)うーん。でも、ほか弁とかもあるよな。

(T)まあそやな。

(F)あの話は、スマホの電池がなかったという話ちゃうかった?

(T)そうやった。

(F)充電しながら電話したりメールしたりもできるんやけど、なんかそれはしたら良くないっていう話があって。

(T)ふふふ。

(F)「なんかそれはよくないような、そんな気がする」みたいな(笑)。わかるわーと思って。

(T)わかる。

(F)私もそうやもん。あれは噂なんかほんまなんか、携帯電話会社ははっきりして欲しいよな。きっとツムキクもそう思っとったんや。

(T)そやな。

(F)でも本1冊書くと、あ、この人こんなふうに思ってるんや、っていうことが、全部赤裸々にわかってしまうような。

(T)自分の日常が。

(F)もしかしたら違うんかもしらんけど、こういうふうに思ってはるんや、って勝手に思われてしまうっていうのはあるよな。

(T)とくにツムキクの小説はそうかもな。

(F)この人独特なんかな。ふつうの小説ではそこまで感じひんよな。

(T)そこまで細かく書いてないんかもしれん。もっとこう展開がどんどんあって、人が死んだりとか。

(F)ドラマチックというか。ツムキクのは全然ちゃうもんな。逆やもん、日常っていうか。

(T)たいした事件起こらへんもんな。だから、ちょっとしたことでも、登場人物の心が動いてるっていうか。実際に起こったらそれなりにたいへんなんやろけど。

(F)竹井さんとかな。

(T)寝てしまう人やろ。

(F)眼鏡割れとったもんな。あんな病気あるんかな、電車乗れへんくなるとか。

(T)夜中に起きて見る、テレビの世界のニュースが落ち着くって。

(F)夜に起きてテレビ見るんはツムキクやしな。

恋愛について

(F)なんかなあ、男の人が……

(T)え?

(F)もひとつな男の人か、幸せなカップルか2種類しかでてこええへんなと思って。

(T)ほー。

(F)パターンというかさ、それ以外にないなと思って。

(T)それ以外に、どんなんあるの?

(F)もっとこう、いろんな関係があるわけやん。でも悪い男ととてもいい男と、その2種類しかでて来なくて、普通ってのがないなと思って。

(T)伊東田さんとか、普通ちゃうん?

(F)伊東田さんなんか、全然表面しか書かれてないやん。

(T)幸せなカップルってあったっけ。

(F)冬美先生のところは、うまくいってるやん。

(T)ああ、小説家みたいな男の人やろ。でも、ちょっと変わってる人っぽかったで。

(F)でも平和やん。あれはツムキクにとって、こうあればええなって感じかなと思って。

(T)ああ。

(F)ぼんちゃんのとこもそんな感じやん。

(T)うん。

(F)で、ユキエが前付き合ってた人はだめな人やん。

(T)見た目はいいけど。

(F)ちゃらい感じで。そういう2種類やなと思って。

(T)男はもっと他にもいるでーってことを、おれがここで声を大にして言わなあかんのかな?

(F)どういうこと?

(T)男の代表として。女の種類はすでにいろいろ出てきてるわけやから。

(F)いや、ツムキクの実体験に基づいてるんかな、と思って。

(T)小説で恋愛がどっかんどっかん起こる人は、やっぱり実際でもどっかんどっかん起こってると。

(F)まあ、そこも想像でどんどん作ることもできるけど、そこまで恋愛には興味がないんかなと思う。

(T)惚れやすい人は、どんどん妄想で恋愛を作っていくかもしれへんけど。

(F)どっちかっていったら、上司でトラウマとか、お父さんとかでトラウマとか、あんまり男の人自体をよく思ってない。

(T)いい思い出がない。

(F)そうそう。そういう感じかなと思って。

(T)不信なんかな、ちょっと。

他人を上から、こと細かに見てるみたいに思える

(F)っていう、そんな勝手なことを読者に言われてしまうんや、本を書くと。

(T)まあ、それは本人の経験がどうやっていうよりも、そこまで考えさせられる広さがあるということじゃないかな。

(F)そやな、それはなかなかすごい。読むとその後いろいろしゃべりたくなる感じ。

(T)そんなに激しいこと書いてないからこそ、自分らのまわりに置き換えられる。あり得そうっていうか。

(F)自分らは、ありそうな話を求めてるってことやろか。

(T)うーん。ありそうやけど、自分ではそこまで日常について詳しく考えたり、客観的に見たりすることはできへんわけやん。時間が流れていくから。そこを細かく書き記すことによって、見えるようにしてくれてるっていうか、味わえるっていうか。

(F)とくに私なんかは、他人がどんな日常を送ってるとかけっこう興味があるけど、現実ではなかなか他人のことを知りえなくて残念やなあと思ってて。でも、この本やと、いくら作り物とはいえ、読んでる間は他人を上からこと細かに見てるみたいに思える。それぞれの人物の考えてることまでわかるし。

(T)あの人こんなこと思ってんねやー。

(F)っていうのがおもしろい。

(T)それぞれの人が、どういうふうに物事を見てるとか思ってるとか、詳しすぎるくらいに書いてあるから。観察力ていうんかな、すごいよな。

(F)そこに気づくか、とか、そこを見るか、っていうのがおもしろい。自分もそういうこと思うわーって思ったり。

(T)着眼点がいいよなー。

ポトスライム分けてもらうことが目標です

(F)ドリッパーわからんかったんやろ?

(T)わからんかった。会社でドリッパー買うかどうかみたいな話で、買えますよ、備品で、みたいなこと言ってて。

(F)この流れでわからへんかった?

(T)そらコーヒーに関する何かやと思ったけど、最初は機械かなと思ってん。勝手にコーヒーが出るような。でもどうやらそれじゃない。でもプラスチックのあれ買うのにそんなに騒ぐかなって。

(F)…とか、そういうことを全部話していったら時間かかるよな。

(T)「ポトスライムの舟」より文字も多いし、ページも多いし、だいぶ中身が濃い。

(F)で、私の今後の目標としては、ツムキクからポトスライムを分けてもらうことや。絶対いっぱい作ってるはず。

(T)まだ作ってるんかな…

(F)減らへんと思う。

(T)枯らしてなかったら…

(F)枯れへんと思う。

(T)ブームが終わってなかったら…

(F)終わってないと思う。ということで、よろしくお願いします!

(終わり)