パンのこと Tunis

パンをめぐる旅 」を読んでから、アラブの平たい丸いパンが食べたくて仕方なかった。それで今年の旅行先がチュニジアになったのかもしれない。だから、飛行機でチュニスに着いてすぐ、お昼ご飯を手に入れて電車に乗ってスースに 移動というとき、目に留まったのは、店の前に置かれたカゴに無造作に入れられたバゲットだった。目抜き通りのカゴにバゲット。排気ガスが付着するまもなく売れていくからこそできるこの配置!といいように解釈した。 さっき両替したばっかりのまだ不慣れな頭で、バゲットサンドの値段を換算する。2.5チュニジアディナールということは、140円くらい。まぁまぁするな、ま、いいか。私はメルゲーズという羊肉とパプリカのソーセージ入り、夫はケバブサンドを選んだ。メルゲーズは、生の状態から注文に応じて鉄板で焼いてくれるので、時間がかかる。電車の時間の心配と、生焼けでおなか壊すかもしれないというダブルの心配の種となり、注文してからちょっと失敗したなと思った。

わら半紙に包まれたそれには、フライドポテトも一緒に山盛り挟まれており、すごいボリュームだった。値段だけのことはある。アゴが外れそうになりながらもおいしくいただいた。砂埃でかすんだ窓から、はじめてみるチュニジアの景色を眺めながら、バゲットサンドをほぉばった時、「あぁ、幸せ」と今年もつくづく感じたのだった。