お隣さんのこと

申込制の粗大ごみ置き場に、お隣さんの名前入りでテレビボードと壁掛け時計など数点が出してあった。さすがにもらうことはできないが、けっこうきれいなもの捨てるんだなぁ~。まさか引越しだったりして、と思ったらそのまさかだった。

私が畑へ行っている間に奥さんがあいさつに来たらしく、今週末引越すのだという。夫からの情報は極めて少なく怪しげだったし、ブツももらってしまったので、改めて挨拶をしに行った。

それによると、旦那さんの転職の都合で新大阪により近いところに住みたい。とのことで予定外に2年での移転ということ。

実はここには書いていなかったが、数年前から階上で夜中にすごい物音や悲鳴や家具が動かされる音が続き、お隣さんと共同して(どちらの上の住人なのかはわからなかったしお互い自分の部屋の上が怪しいと思っていたので)ピンポン押して確かめに行ったり(結局わからなかった)、警察に通報したりしていたので同志的なところがあり、今回の引越しもそれが関係しているかもしれない(うちも引越しを考えはじめた最初はそれがきっかけだった)と思ったがそうではないようだ。しかし、最近はその騒音もあまり気にならない程度になってきましたね、というとお隣はそうでもないらしく、めっちゃうるさいけど、もう出るしいいか、と我慢していたのだそうだ。

そして、引っ越し先は、お隣さんは3階建ての3階。これでお互い上からの騒音に悩まされることはないですね、と労わりあったのだった。

「それと、ここ、虫が多くないですか?」

彼女は、そういって洗濯物に付いたカメムシが怖くて取れなくて困ったので、こんどのところは緑が少なくて虫がすくなそうでホッととしていると言った。

(いろいろ、ごめんなさい)心の中であやまったが、声では「そうなんですねぇ、わたしは平気なんで気づかなかった」と答えていた。

お隣さんはベランダの仕切り板の向こう側で、コバエ防止(と言われているもの、眉唾)をいくつかぶらさげ、香り強めの洗濯物を毎日かかさずたくさん干していた。植木どころか葉っぱ一枚チリ一つベランダにはなかった。それが隙間から見えてはいたが、うちの落葉樹たちには、種別問わず各種生物がやってきて生殖をしたり食事をしたり排泄をしたり、わたしたちはそれらをどちらかといえば歓迎していた。溝を通して風や雨水、ときにはとぎ汁入りの潅水でもってたくさんの虫や葉やいろんなものが下流であるお隣さんへと流れていった。迷惑なのはうちだったのではないだろうか。カメムシは飼ってないけど。

ダンボールコンポストとかおススメしなくてよかった。

アディオス、隣人。また逢う日まで。つぎは無機質なマンションでありますようにブエナ・ステルテ。

鍵渡し日まで、あと20日

引っ越しとは