有機農業とは?(その1)

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石油もオーガニック?

(T)まず有機物って何かということを調べてきました。おもにWikipediaやけど。

(F)うん。

(T)有機物って何やと思う?

(F)無機物じゃないもの。

(T)……正解(笑)やけど、どっちかっていうと、無機物が有機物じゃないってことやな。

(F)そんなん一緒やん。

(T)というのは、有機物は英語で言うとorganicやけど、無機物はinorganic。つまりオーガニックじゃないっていう意味やから。

(F)ふーん。

(T)で、organicはorganっていう言葉が入ってて、つまり生物に関係するもの。

(F)organって生物ってことなん?

(T)内蔵とか体の器官のことかな。

(F)(国語辞典で調べる)organは、オルガン。内蔵。器官。機関。へーおもしろいな。2つの「きかん」は両方ともorganなんや。蒸気機関とか政府機関とかも。

(T)へー。

(F)あ、そうか。オーガナイズのorganか。

(T)organicも載ってる?

(F)有機体の。有機の。化学肥料を用いないで有機肥料で育てた。組織的。本質的。根本的。

(T)なるほど。ということでざっくり言うと、物質のなかで生物に関係するもの、生物由来なものを有機物っていって、そうじゃないものを無機物っていうそうです。いわゆる鉱物、石とか砂とか金属とかそういうものが無機物。

(F)じゃあ石油は有機ってこと?

(T)そういうことやな。

(F)木が化石になったら、有機から無機になるってこと?

(T)そうやな……たぶん…

(F)南米で見た木の化石とかも?

(T)うーん、それは新しい疑問やな。

(F)(国語辞典を引く)化石は太古の動植物の全体もしくは一部分の跡が、水成岩などの岩石中に残ったもの。

(T)やっぱりこう石にスタンプ的に押されて、その跡が残るんかな。でも木の化石はどうなってるんやろなあ。わからん。また調べとこう。

(木の化石は「珪化木(けいかぼく)と呼ばれ、木の細胞組織の中にケイ酸を含んだ地下水が入り込むことによって、樹木が原型を変えずに二酸化ケイ素(シリカ)という物質に変化すること」だそうです。つまり、木の化石は無機化合物ってことで正解)

有機化合物とは?

(F)で、じゃあ石油が有機ってことになると、石油からできた肥料は有機なわけ?

(T)そこでや。昔の人、たとえば18世紀頃のイェンス・ベルセリウスさんという人は、さっき言ったみたいに「物質を生物から得られるものと、鉱物から得られるものに分けて、それぞれ有機化合物、無機化合物と定義しました」。

(F)うん。

(T)でもそのあと1828年に、フリードリヒ・ヴェーラーさんというドイツの人が無機物の実験をしてるときに、尿素がなぜかできてんて。

(F)ふーん。

(T)尿素というのは生物由来なものやと思ってたのに、実験室で作れてしまって、あれ?ってことになって、さっきの分け方は正確じゃないんちゃうかということがわかった。

(F)うん。

(T)で、現在では、有機化合物とは何かっていうと、炭素を含む化合物

(F)ふーん。

(T)それが有機ということらしい。有機化合物は「一般的に無機化合物に比べて、多様な構造や性質を持つ」ということやから、生物の体になったりする。

(F)炭素あんの? 体に? 二酸化炭素の炭素?

(T)まあ二酸化炭素の中にも炭素は入ってるけど…

(F)じゃ二酸化炭素が体に入ってるってこと?

(T)うーん。炭素と他の物質のとの組み合わせでいろんな物質ができて、それの物質で体ができてるということやな。炭素っていうものが体の中をぐるぐる回ってるというわけではなくて、炭素からできた部品で体はできてる感じかな。

(F)ふーん。まあじゃあそれが有機かってことは、一見しただけではわからへんってことやな。

(T)うん。炭素が含まれてるかどうかっていうことでしかないから。

(F)じゃあ「これ有機野菜やねん」っていうのは……

(T)野菜の物質じたいは有機化合物やん。いくら農薬かけて化学肥料使っても、野菜じたいは有機物やから。だからある意味では全部有機。で有機野菜っていうのはさっきの辞書にもあったけど、有機肥料を使った野菜ということ。

化学肥料の始まり

(T)じゃあ有機肥料って何?っていうことや。

(F)うん。

(T)これを知るのに重要なのが、ハーバー・ボッシュ法というやつ。昔の肥料は基本的にその辺で得られるもの、家畜のふんとかそういうものを使ってたんやけど、とくにヨーロッパなんかはだんだん人口増えてきて、もっと肥料入れなあかんのちゃうという話になってきて。必要な肥料というのはほとんどは窒素やから、まずはチリ硝石というのを南米から運んできた。

(F)チリ硝石? それは窒素が多いの? チリで取れたん?(国語辞典を引く)硝石は硝酸カリウム。窒素化合物。窒素化合物は有機化合物?

(T)ではないな。炭素が入ってないから無機化合物や。

(F)なんでわかる?

(T)硝酸というのはたしか……

(F)あ、NO3か。炭素(C)が入ってないからか。

(あとで調べたところでは、チリ硝石=硝酸ナトリウムNaNO3。やはりチリにたくさんあったからこの名前になったみたい。なお硝石=硝酸カリウムKNO3、硝酸=HNO3ということです)

(T)そういうこと。で、そのNが窒素やん。窒素が入ってる石を持ってきて畑に撒いてた。でも南米からいちいち運んでくるものたいへんやしってなって、ドイツのハーバーさんとボッシュさんがなんとかしようとして、アンモニアを合成する方法を発見した。それで空気中の窒素と水素からアンモニアを作ることができるようになりました。アンモニアはNH3。これがどんどんできるようになった。

(F)より純度が高い窒素ってこと?

(T)純度というよりは、それまでは石削ってはるばる持ってこなあかんわけやん。でもこれやったらボコボコできるから簡単ってことやな。で、化学肥料が作られるようになった。

(F)ふーん。今から100年前。

(T)そう。ボッシュって会社あるっけ?今も。

(F)ある。あのBOSCH?

(と思ったけど、あとで調べたら、よく知られている自動車機器メーカーのBOSCHとは無関係でした)

(T)で、「現在でも肥料を目的としたアンモニアの生成はハーバー・ボッシュ法によって行われており、世界中の食糧生産を支えている」と。

(F)ハーバー・ボッシュ法っていう法律がよくわからんけど……え、あ!方法の法ってことか。

(T)そう。

(F)法律かと思った。

(T)ちゃうちゃう。技術。

(F)そうか、ふーん、現在でもそれを使ってるんや。100年たっても変わってない。

(T)この発見が化学肥料の始まりやねん。

(F)その窒素っていまどうやって売ってるんやろ?

(T)うーん、化学肥料ってどういうふうに売られてるんやろな。

(F)あんまりちゃんと見たことないわ。硫化アンモニウムとか、そういうの書いてる袋のやつか。ホームセンターにあるな、そういうやつ。

(T)アンモニアは気体か液体かやから、それを使いやすい形にして売ってるんやろな。

(F)うん。

(T)それが便利やからってことでどんどん使ってしまって、「いま世界で肥料として撒かれている窒素量は1億トン。人間の体の窒素の3分の2がハーバー・ボッシュ法由来である」。まあ平均してってことやけど。

(F)体の窒素の3分の2……

(T)世界の人がみんな同じやとしたら、食べてるもんの栄養の3分の2ぐらいはハーバー・ボッシュ法で作られてるっていうイメージかな。

(F)でも、うちは10分の1くらいやな。スーパーで買ったやつはそうかもしれんけど、うちの畑のやつには入ってないから。

(T)あとは買ってる米の肥料をどうしてるかやけど。有機肥料じゃなくて化学肥料やったら、ハーバー・ボッシュ法の窒素やな。で、その窒素を作るために「年間5000兆キロジュール、大型の原発150基分という大量のエネルギーを消費している」らしい。

(F)電気ってこと?

(T)ハーバー・ボッシュ法を行うには高温高圧の環境がいるみたいやから、そのエネルギーを全部原発でまかなったらこんだけ必要ってことなんやろな。火力発電やとしたら石油換算になるやろし。

(F)とにかく5000兆キロジュールということか。5000兆キロジュールを使ってできた窒素を人間が食べて、で、人間が生み出すエネルギーはなんぼなんやろ?

(T)基本は1対1なんちゃう? エネルギーを食べた分だけ……いや、熱と仕事に分かれるんかな……よくわからん。

(F)まあ、ここまでオッケー。

(T)そういう歴史がありました、ということです。おれがまとめたのはここまで。

(F)え?終わり?

(つづきます)

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