「働きたくない」とエネルギー問題がつながる?
「エネルギーと私たちの社会ーデンマークに学ぶ成熟社会」
ヨアン・S・ノルゴー、ベンテ・L・クリステンセン (2002年)
デンマーク在住の環境学者によって書かれた、エネルギーと社会のありかたについて述べられた本。1980年代にデンマークで出版された内容をもとに、2001年時点でのコメントを付記して、日本語版として1冊の本にまとめられている。出版当時デンマークではベストセラーとなり、その後のエネルギー政策に大きな影響を与えたそうだ。
誰にでもわかる言葉で書かれ、ユーモアのあるイラストも多く添えられていて読みやすい。未来を「高エネルギー社会」を選んだ場合と「低エネルギー社会」を選んだ場合の2つに分けて、それぞれどういうことが起こるか、データを用いて丁寧に考察されている。2011年になった今でもその内容は古びることはなく、むしろ新鮮に聞こえるのは、いかに自分たちが同じ問題を抱え続け、その問題に踏み込むことから逃げ続けているかという証拠だろう。
「エネルギーの問題は、いずれ成長社会か充足社会かという本質的選択に突き当たる」と本書は言う。ぼくは低エネルギー社会(=充足社会)を支持したいと思う。それは地球のためというよりも、自分のためだ。高エネルギー社会(=成長社会)では、モノを買えば買うほどさらに買わなければならなくて、それはつまり、働けば働くほどさらに働かなければならない社会だいうこと。怠け者なぼくは、そんなに働かされるのはつらい。働いても働いても自分の時間が増えず、逆に自分の時間がどんどん失われていくのはつらい。だから低エネルギー社会で、ほどほどに暮らして行きたいと思うのだ。(T)
(2011.05.24)