チロエ島で祭りを待つ

チリのチロエ島へ渡る。名前からして好みだ。なんか異国っぽい響きに惹かれた。ま、異国なんだけど。しかしキャンプ場はえらく混雑していた。聞いてみると、1年に1度の大きなお祭りが1週間後に控えているらしく、みなそれ待ちらしい。普段お祭りはそんなに得意なほうではない私だが、これだけの人が待ちのぞんでいるお祭り、さぞや素敵なんだろう、と俄然やる気(待つ気)になった。もうすでにいっぱいいっぱいの庭に、なんとか隙間を見つけてテントを張る。隣になる人とはなるべく張り終えるまで目を合わせないのが場所を確保するコツ。(でもほんとはハイ!とあかるくさわやかに挨拶してから張る方がいい。この場合はあまりに混んでいて、目が合ったら睨まれそうな気がするためそそくさと張る。)あちこちにりんごの木(注1)が植えてあるせいで、テントを張る角度や場所が限られる。とか言ってる場合じゃない。いっぱいなのだ。なんとか張り終えて一休みしてると、ブルガリア人というカップルに聞かれる。あなたはその”mont-bell”の宣伝マンなの?と。今回装備をモンベルで揃えていたのであった。なんかそう言われると急に恥ずかしくなってきてしまった、テントもバッグもズボンもモンベル。えぇ、はじめまして、私のことモンベルと呼んでね。とでも言えばよかったのだろうか。リッチーという大道芸人のスペイン人チャリダーと仲良くなり毎日映画祭の映画をみたり食事をしたりして時間を潰す。映画館でスペイン語の映画を英語に翻訳してささやいてくれるのだが、それはまるで恋人たちのようで、ちょっとどきどきして話の内容はぜんぜん覚えていない。さて、待ちに待ったお祭り。農業祭のようなもの?昔の道具を使った農作業とかを披露していた。ふいごで風を送りながら鍛冶屋さんがカンカンとなんか作ってたり、牛車が子供たちを乗せて会場を回ってたり、巨大丸太をどっちが早く切れるかマッチをやってたり、その中でも印象的だったのがこれ。

くりぬいた丸太にはりんごがいっぱい入っていてそれを両側から長い棒でたたいで潰す。それをつぎに絞り機にかけてりんごジュースを作るというもの。リユース瓶入りは、衛生面と値段の面で折り合いがつかなかったが、カップ一杯でも買えたので味見だけした。

ほかにもフォークロアのバンドの演奏などもあった。ほっぺたが赤い人が多くて、ほんのり霧に覆われている中でこのお祭り。なんかチロエってメルヘンの世界やなぁ、と思ったのだった。

注1)りんごの木には、たくさんのハサミムシがいることがこの度よーくわかった。テントから外に出るときは、必ず靴をさかさまにして振ってから!