犠牲祭のこと その2

早朝からガツンと濃いエスプレッソを飲んだ後、結構なペースで町を歩いていたものだから、トイレに行きたくなってきた。しかし、今日は犠牲祭。どこもかしこも閉まっている。開いていたってトイレを探すのは難しい。マクドナルドとかコンビニといったものがこの国にはないのだ。しかし、この気配は去ることはなくどちらかといえば、加速していく方向にあるのはわかっていたので、とにかく、トイレが見つけられるという前提のもと、まずはトイレットペーパーを1巻手に入れなくてはいけない。雑貨屋さんは運良く開いていた(しかし客が多くてだいぶ待たされた)ので、トイレットペーパーは無事に手に入った。目の前には美しい教会。日曜とあって、礼拝が行われている様子だった。もう無我夢中でかけこみ、目が合った人にめいっぱい丁寧に笑顔で

「トイレを使ってもいいですか(フランス語)?」と聞くと

「もちろんです、どうぞどうぞ(フランス語)」と指差してくれた。

男女別のトイレは空港以来かもしれない。というかチュニジアで使った中でだんとつ1位のきれいさ。そしてトイレットペーパーが山と積んであったのだった。この驚きの3点を、すぐ外にいる夫に逐一報告しながら用を足した。

「トイレットペーパーふんだんにあるわ、買わんかったらよかったよなぁあ~、もったいな」とさらに言った後、夫に話しかける女性の声が聞こえた。

「あ、日本の方ですか?今日本語みたいなのが聞こえたから…(日本語)」

ガーン…

となりのトイレに入っていたのは、なんと日本人女性だったのだ。まさか言葉がわかる人が周りにいるとは思わず、夫にしか聞こえないと思って、思ったことをそのままべらべらとしゃべっていた自分が、めちゃめちゃ恥ずかしく、これからは、聞かれて恥ずかしいことはたとえ外国とはいえ、しゃべっちゃいけないな、と反省したのであった。ちなみに、夫によるとこの女性は、フランス語の語学留学をされているプロテスタントの方で、日曜礼拝に参加されていたそうで、私がトイレから出たときにはもういらっしゃらなかった。ほんとにあわせる顔がなかったのであった。