チクチク産毛とり(Gabez)

夜行列車で早朝のガベスの街に着き、カフェでひと休みしたあと、宿に入った。

ところでチェックイン/アウト時刻がはっきりしてないような安宿の場合、朝から宿に入るとどういう扱いになるのか。それがいつも気になる。宿によっては1泊扱いになる。でも、それだと夜入って朝出る人と比べて、倍くらいの時間、部屋を専有しているわけだ。それはありなんだろうか。

そんなことを気にしながら、早朝から宿に入る。この宿のオー ナーは、「この時間からだと通常は1日半の料金だけど、日本人だから1泊分でいいよ。日本人は好きなんだ」とのことで、それはよかった。料金は1泊分でいい上に、料金設定的にもすっきりした。

荷を下ろしてシャワーを浴びたあと、さっそく街を散歩する。天気も良く、気温も上がってきた。ガベスは人の感じも良さそうで、町の雰囲気も悪くない。

スースのコピー屋の若者は「ガベスは気をつけろ」と言っていたので心配していたが、不穏な空気は感じない。逆に、昨日の晩、駅で出会った大学教授は「ガベスはいいところだ。スファックス? だめだめ、あそこはよくない」とか言っていて、なんだかよくない場所がたらい回しになっている感じだ。スファックスに行ったら、次はどこが「よくない町」だと言われているのだろう。

朝食に揚げパンを食べる。外で食べる朝食としては、これがポピュラーみたいだ。

市場に向かって歩いていると、通り沿いに並んでいる散髪屋の主人が何か声をかけてきた。「髪、切っていけよ」みたいなことを言っている。微笑みだけ返していったんそのまま通り過ぎたが、待てよ、ここで散髪するのも悪くないかもしれない。

(1)ネタになる(2)たぶんすごく安い(3)まだ旅行も前半なので、変な髪型にされてもリカバーできる。そんな打算が頭をよぎり、引き返して、髪を切ってもらうことにした。

「半分くらいの長さにしてくれ」と具体的にどう言ったのか忘れたけど、そう伝える。始まると、だいたい思ったように切ってくれているようだ。よかった。ちょっと前髪が一直線に揃いすぎな気もするけど、まあ、そのへんはあとで何とかなるだろう。

ところが、カミソリで襟足を剃り始めたところ、流血。そういえば、かつてモロッコでも旅行中に髪を切ってもらったことがあって、そのときも流血したことを思い出した。こっちのカミソリが肌に合っていないのかもしれない。

「イタタタ」今度は何かと思ったら、散髪屋、糸のようなものをホッペタまわりの肌に当てて、こするように動かしている。糸で産毛を絡めとるようにして脱毛する方法のようだ。これは画期的なのかなんなのか。とにかくチクチクして痛いぞ。と見上げると、散髪屋のおっさん、「どうだ」って顔して笑っとるがな。同行人はおもしろがって写真撮っとるがな。だからこれ痛いんだって。

そんなこんなで散髪終了。料金は3ディナール(200円弱)。チュニジアでは散髪屋をよく見かける。遅くまで営業している店が多い。日が暮れるとほとんどの店が閉まってしまうチュニジアで、カフェと散髪屋だけは夜でも開いていて、どちらもおじさん客のたまり場となっているようだった。