夜の語り部(その1)

今日の本は『夜の語り部』

(F)今日の本は、ラフィク・シャミの『夜の語り部

』です。

(T)はい。

(F)おやつは溶岩クッキー。

(T)溶岩クッキーとは?

(F)ココアとゆずマーマレードのクッキーでございます。

(T)見た目が黒くて溶岩みたいやと。

(F)ちょっと失敗みたいやけど、味はいい。

ビブリオバトルに行ってきました

(T)ということで、この本『夜の語り部』をなんで読んだかって言うと、

(F)初めてのビブリオバトルがうちの市であって。

(T)そう。地元の図書館でやってたから、それに行ってきた。

(F)参戦。

(T)いや参戦はしてない。参戦はしゃべる人やろ。

(F)じゃ観戦者やな。

(T)ビブリオバトルとは何かというと……

(F)そんなん。

(T)調べたらわかるって? では、みなさん検索してください。

(F)いや、じゃビブリオバトルってなんですか?

(T)ま、本の紹介やな。

(F)え? それだけ?

(T)本の紹介合戦。

(F)うん。

(T)参戦者の人は持ち時間5分の中で、自分がおすすめしたい本をみんなに紹介する。

(F)はい。

(T)参戦者は何人かいて、すべての人の発表を聞いた後に、どの本が一番がおもしろそうだった、読みたくなったか、っていうのを投票して決める。

(F)そうやな。それと今回行ったビブリオバトルはテーマがあったよな。「大人も楽しめる子どもの本」。

(T)そう。

(F)だから、だからわりと児童文学の名作っていうか。

(T)ケストナーとか。

(F)ミヒャエル・エンデ。

(T)なぜかドイツ人が多いな。

(F)そやなあ。A・A・ミルンはイギリス人やった?

(T)誰やっけそれ?

(F)クマのプーさん書いた人。

(T)ああ。ピーターラビットの作者もイギリス人かな。

『夜の語り部』はシリアの話です

(F)そんななか。

(T)この本の著者もドイツに住んでるみたい。

(F)そう。

(T)ドイツ語で書いてるんじゃないかな。

(F)うん。ドイツに移住しはってんな。もともとはシリア人。

(T)そうやな。ラフィクシャミっていうその人が書いた『夜の語り部』という本を今日は紹介するんやけど、この本がそのビブリオバトルで優勝した本やったんや。

(F)チャンプ本って言ってな。でもその言い方ちょっと恥ずかしくない?

(T)ふふ。

(F)なるべく使わないようにしていきたい。

(T)この本に手挙げて投票したやろ?

(F)挙げた。

(T)おれも挙げた。おれらの2票が決めたかな。

(F)でも、思ったよりみんな挙げてた。まあ結果、一番やったわけやから当たり前やけど、あれが一番人気ってことに驚いたな。

(T)おれダントツやと思ってたけど。

(F)えー、ほんまー?

(T)説明がうまかった。

(F)ああ、この本を紹介した人は、じつは図書館員やってんな。

(T)出場者足りんかったんかな。

(F)Tが出えへんかったから。

(T)もし出るんやったらケストナーの本を紹介しよかなと思っとったけど、別の人が紹介しとった。

(F)私もクマのプーさん紹介しよかなと思ってたけど、これも紹介されてたな。

旧市街の人たちが何をしゃべっているか

(T)それで読んだらおもしろかってんな。で、今回紹介しようと思った。

(F)うちら2人はイスラム系に弱いっていうか、イスラム系好きよな。

(T)2人って、まとめたな。

(F)そんなことない? じゃ私は、にしよっか? 私はイスラムの生活が書かれているような話が好きなの。

(T)いや、おれも好きやけど…。で、ふつうの旅行本と違うのは、イスラムの人がこの本を書いてること。

(F)うん。

(T)舞台はシリアのダマスカスの旧市街。だから旧市街の人らがどういうことしゃべってるかとか、中にいる人の視点で書いてあるから興味深い。

(F)そんなん今まであんまり知らんかったもんな。

(T)旅行行ったら、みんなあーあーって何言ってるんやろって思ってた。

(F)あーあーってなに?

(T)かけ声。

(F)男ばっかりが肩組んで、何しとんねんと思ってたけどなあ。暇やなあって。

(T)アラブの人って語りが好きな感じするな。

(F)そうやな。

(T)吟遊詩人みたいな人がいたりするし。でも、いったいどんな話をしてて、それはおもしろんか。長い話をずっと聞いて、退屈なんじゃないのか。

(F)どやった? おもしろかった?

(T)この本?

(F)そう。それぞれの話。

(T)うーん。

(F)わりとこう、なんやろ? 眉唾もんっていうか。

(T)実話じゃないねんな。

(F)昔の王様がどうやとか、そういう話が多い。

(T)中には実話みたいなものあったか。

(F)まあ時代を選ばず、ずっと話せそうな話ではあった。

語り部サリムが声を失う

(T)この本の舞台は1950年くらいやったかな。

(F)ほんまにこのラフィクシャミが…

(T)子どものころに聞いた話を書いてるんやろな。

(F)この本の設定がさ、ラフィクシャミが少年のときに、おじさんたちが集まって夜な夜な語りの会みたいなのをやってるところに、うまいこと小間使い的な仕事をしながらもぐりこんで。普通やったら、子どもは帰れ、寝なさいって言われるところを、お前はここにいていいっていう権利を得た。それで、おじさんたちが話したことを全部文字に書き起こしたのがこの本。みたいなことやな。

(T)そうやな。ストーリーっていうか、おんしゃ?

(F)おんしゃ? 御者(ぎょしゃ)やろ。おんしゃって何?

(T)うー、おんしゃって読んでしまってたわ。それは会社か。で、もともと御者やったサリムという人がいて、その人は話がうまいねんな。

(F)うん。

(T)その人の話をみんな聞きに来とったけれども、ある日、そのサリムおじさん…

(F)いや、おじいさん

(T)が、妖精に何かされて、しゃべれなくなってしまう。

(F)もうさんざんしゃべったから、あなたの声はもう終わりよ、みたいに。

(T)で、どうしようと思ったときに、クセのありそうなおっちゃんら仲間たちが集まって、しょうがないからおれらがひとつずつ話をしようと。

(F)違う。

(T)え?

(F)妖精が七つの何かをしたらその声がまた戻るかもしれないけど、それがいついつまでにできなかったら、もう二度と無理よって言ったんや。

(T)そやったか。

(F)やねんけど、サリムがそのことを人に言えたかどうかやな。そのときに。

(T)あと何回かはしゃべれるっていう条件やった?

(F)あと何ワードはしゃべっていい、とかやった。

(T)その何ワードで言ったんやったかな。

(F)忘れた。

(T)まあ、どっちでもええか。

アラブにもいろんな宗教の人がいる

(T)そんなことで、仲間たちが、一晩で一人ずつしゃべることになった。

(F)普段はみんな聞き役やったのに、今回はそれぞれスポットライトを浴びてしゃべることになって。でも、意外とみんな仲良くないっていうか、お互いけなし合うっていうか。話の腰を折ったり。

(T)そやったな。

(F)でも、雰囲気はすごい出てるよな、さすが本場。

(T)マクハやった?

(F)あそこはマクハじゃない。

(T)普通の家に集まるんやったか。

(F)そういう文化があるっていうのがなあ。お酒を飲む代わりというか。

(T)お茶を飲んでた。

(F)コーヒーも飲んでたな、ほんで、なぜかビールも途中で飲んでた。

(T)あれ、ええんかな。

(F)無理矢理やな。

(T)サリムのためにビール飲まなあかん、みたいなこと言って。

(F)飲んだらきっとしゃべりだすんちゃう、って。基本イスラム教やんな?

(T)どうやろ。イスラム教じゃない人もおったな。アメリカに行った人おったやん?

(F)うん。

(T)アメリカで、おれもイスラム教なんだってアメリカ人が言ってきて、アラブ人やったらイスラム教だろって言われて。でも、いやおれはキリスト教なんだって返したと。

(F)あったな。

(T)そう言っても信じてもらえへんかった。いや、アラブといえばイスラムやろって。

(F)そうとも限らんねんな。

(T)アラブの中にもいろんな宗教の人、いろんな宗派の人がいるって、そんなこと当然じゃないか、って書いてあった。

(F)当然じゃないかって?

(T)そのアメリカに移住してた人は、自分の話の番のときに、自分がアメリカに移住してたときの話をしたやん。聞いてる人がその合いの手で「いろんな宗派もいるのが当たり前なのに、なんでわからへんねや」みたいなことを言ってたんや。

(F)意外とよその人にはわからへんな。