ユースとハマム(女)

それまでの街ではどこもシャワーが快適で、ハマムは気持ちとしてオプションであった。しかし、ここチュニスのユースホステルのシャワーは本当にひどい。まず、蛇口の赤と青が逆。それに加えて、お湯が申し訳程度にしか温かくない。だから、赤と青の印が逆なのはたまにあるから、これはもしかするとと思うことはできても、青からちょろちょろと若干ぬるい水が出るだけではなかなかこれがここで言うホットシャワーなのかどうか確信がもてない。

これは神様かアッラーが、ハマムへ行きなさいと啓示しているに違いない。とちょっと寒くて震えながら思った。

ところでこのユースホステル、古いメディナの建物を流用していて、パッと見はかなり素敵だけども、問題がある。壁が天井まで無い。上3分の1か4分の1かはスースーしている。だから、鍵が閉まっていても入ってこようと思ったら、入られる部屋。こういう部屋のとき、ハマムに行こうとすると、貴重品の置き場に困る、ということで、2人が別々の時間にハマムに入り、その間片方が2人分の貴重品を預かる作戦に出た。

まずは、私がハマムに入ることになり、ハマムへ2人で歩いていると、途中の細い路地で車が渋滞していて、それをなんとか交通整理しているおじさんに出会った。どこ行きたいの?と聞かれたので目指す女性ハマムの名を言うと、一緒に行こう、と何だか親しげに歩き出した。

ハマムの前で、夫に、40分後くらいにここでまた会おうと約束して、夫はなぜかおじさんに肩を組まれるようにして、露地の向うに消えていった。

入り口の通路を抜けると番台におばさんがいて、お金を払い、服を全部脱いで袋に入れて、おばさんの横のスペースに置くように指示された。そこからまたちょっと通路を歩いて、洗いおばさんに託された。でも、わたしはセルフコースであり、垢すりとかマッサージは頼まなかったから、小さな部屋に案内されて、バケツを2つと柄杓を貸してくれた。あとは見よう見まねで、隣の部屋のお湯溜まりから、バケツ2つにお湯を汲んできて、自分の場所に座ってひたすら体を洗う。熱いお湯がふんだんにあって、とっても気持ちがいい。垢すりタオルを持っていないことに気づいたまわりの人が、貸してあげようか?と何度も声をかけてくれる。こんなことなら、買ってくればよかったな。街中でどこでも売っていたのに。

約束の40分を大幅にオーバーして1時間くらいかかって、外に出ると、夫が座って待っていた。さっきのおじさんにコーヒー代をせびられたのだ、とカツアゲされた中学生みたいな顔でいう。こういうハプニングがあるからこそ、旅行っておもしろいんちゃうん。と他人事のように笑えた。