これから3泊4日の日程でここフェニックスで過ごすことになる。
安いレンタカーのカウンターほど列が長いようだった。ここではよほどダウンタウンで過ごすのでない限り車がないと不便である。特に私たちのようなキャンプ地へ通おうとする者にとっては必須だときき、予約しておいた格安のレンタカー会社に並ぶ。1時間はかかっただろうか。まず名前よりも先に免許証を出せと言われるので、我らがグレーの画用紙でてきたような日本の国際免許証を出すと、カウンターの担当者が降参のように手を挙げ、別の係員がやってきた「俺が担当するぜ」そんな雰囲気の彼だった。トラブルが多いと聞いていたので一字一句聞き漏らさないように慎重に返答していたらだんだんと怒り出した。「本当に追加で保険に入らないのだな!だったらここにサインしやがれ!」的な感じ。私はネットで予約する際に、追加料金はかからないで済むように必要なものがすべて予約されているか重々確認していたので、「予約でちゃんと入っているから追加では何も申し込まない!」と食って掛かった。「じゃ、おまえらが事故を起こしたら車の代金を全額支払いで警察はお前らのクレジットカードを取り上げる。それでもいいんだな、ここにもサインしろ!」とひたすらサイン攻め。なんか脅してるよ、怖いねぇーと思いながらも初心を貫き無事に車をゲットした。今回は夫が運転すると言うので私は国際免許証を取ってこなかったから、ま、事故おこさんように安全運転よろしく、というしかなかった。
まず車で向かったのはもうイチローが出ているかも知れない、ピオリア。シアトルマリナーズの本拠地であり、空港から45分ほどのところにある。すでに試合は5回まで進んでいて、今日はイチローは出ていないそうだ。明日の芝生席のチケットを買って球場を外から下見してあとにする。は、いいけど車どこに停めたっけ??キーレスではなかったのでより記憶の精度が求められる。記憶をたどって広い駐車場をうろうろ…。
あった!!決めては駐車の仕方だった。ほとんどの車は鼻先をつっこんで、こちらに尻を向けているのに対しうちの車は日本スタイルで鼻先をこちらに向けて待っていてくれた。先ほど借りた車、何色だったかくらいしかまだ記憶がない状態で危ないところだった。それ以降も見つけやすいので日本スタイルで停めたりした。
airbnbで取った宿のわりと近くにWholefoodsスーパーマーケット、その隣にはTrader Joe’sがあるという恵まれた立地だった。この2つはどちらもオーガニック商品を多く取り揃えていて前者が高め、後者が庶民的といった位置づけである。まずはWholefoodsのデリバーで量り売りを買ってランチにし、夕飯の材料は主にTrader Joe’sで調達した。うちの畑でも採れだした紫ニンジンや黄色や赤のベビーニンジンが徳用パックで売られていて3日の滞在なので買ってみる。ほかにもやはりウチの畑みたいなベビーレタス&ハーブミックス、アボカド4個入り、エクアドルバナナ、全粒粉のパスタ(これらすべてオーガニック)、豆腐でできたハムやソーセージ、ローカル缶ビール(迷っていると、すごい親切でビールに熱い情熱をもつお兄ちゃんがオススメをたくさん教えてくれた)、ローカルのパンを購入して宿へ帰る。
私はAirbnbを利用するのは台湾、香港に続いて三度目なのだがいつもツイているというか、とても良い宿に当たる。システムがきっちりしているから口コミやらで前もってだいたいのことがわかるというのもあるだろうけど、想像以上に良いことが多い。今回のところもそうだった。料理をしたいのでキッチンが充実していることが私の条件のひとつなのだが、ここはすごかった。キッチンや冷蔵庫にあるものはすべて使ってよいし食べて良いよ、と言ってくれたのだ。それがパンからワインまで何でも揃っている、包丁は切れる、オーブンも使える、調味料もオーガニックなものが多くて興奮してしまった。さすがにワインやビールを開けるのは遠慮したが、ここでの料理の時間はほんとうに満足の行くものだった。オーナーである青年は、救急車に乗る仕事らしく、毎日23時頃帰ってきて、早朝に出かけていく、もしくは非番だと寝ている、という状態で家でほとんど顔を合わせることがない。要はフラットを貸し切りのような状態。リビングのばかでかいソファーに寝そべっているときに鍵が開く音がしたらちょっとびっくりしたりもしたけれど、好青年でいつもなにか必要なものはあるかい?と聞いてくれ、じゃぁ、疲れているからもう寝るね、自室に引き上げていく。冷蔵庫から水を取り出す以外、風呂もトイレもなにも使っていないようで、彼の自室にトイレが付いているようにも見えず、どうなっているのかは謎。洗濯機も使わせてもらい、夜に使っていいかと聞いたら、「ボクはHappy sleeperだから夜中でも全然構わないよ」とのこと。あまりに条件が良すぎて眠れない、なんてことはなく、フェニックス郊外の瀟洒なアパートでの1泊目の夜が過ぎていったのだった。